にっき

日記です。

・先週は友人の披露宴のため帰郷していました。クソ暑くて死にそうになりやがんの。まあ寒いのよりはずっとマシですけど。古い友人らに会えたのが収穫。

・いやー、観てきたよ『シン・ゴジラ』。面白いね。エヴァ観たことないんだけど、庵野監督の才能、というか制作者としての力量がダイレクトに伝わってくるほどの覚悟が見て取れた。いい意味でゴジラ映画っぽくなく、それでいてかつてないほどゴジラ映画でもある。

・怪獣映画にありがちな「謎の足跡」とか「信じてもらえない目撃者」とか一切なく、最初から最後まで「日本対ゴジラ」を首尾一貫させて、物語もテーマも演出も、ぶれずに描いているのが偉いよね。制作者のやりたいことがあって、きちんとそれを実現できている。邦画の制作体制に関して、しばしば「外部からの口出し」が問題になるけど、今作についてはそれを感じなかった。もとからなかったか、封じこめたか、はねのけたか、容喙させない体制で作ったか。どちらにしても、久しぶりに邦画で面白いと思ったわ。

・第一形態の生理的気持ち悪さ。放射熱線(アトミックブレスではなく)、放射線熱線背びれ、放射熱線しっぽなど、今までにないビジュアルもすごかった。

・あと無人在来線爆弾とかいう狂った発想。それを許可したJRも大概だな。

・『アバター 伝説の少年アン』を観終ったので、続編『Legend of Korra』を観ている。アバター・アンの時代から70年後の世界が舞台で、20世紀初頭レベルにまで産業も機械文明も進んでる。そんな中で新たなアバターとして目覚めた17歳の少女、コラを主人公として、彼女の成長と、反ベンダーを唱える”平等主義者”との戦いを描く……というのが大きなあらすじ。

・作画も丁寧でよく動き、格闘シーンは前作以上に洗練されている。めまぐるしく移り変わるコラちゃんの表情も楽しい。まだ半分も観てないけど、楽しみながら観ていこうと思いますです。

・ただ、日本語吹き替えないのがなー。英語字幕付きで、なおかつ『アバター~』の前提知識があるからこそストーリーを終えている感じ。英語に堪能でないとしっかり楽しむのは難しいのだなあ。

・Fables vol.6の翻訳は8月後半くらいから始めたい。文字量が多くて読むのに難儀しているんですよ。しかもなんか古い(っぽい)言い回しが多いので、ストレートに読めない。新キャラも多いし。でもブルーボーイが活躍するので頑張って読む。

・来週は夏休み。ブログも休むはず。たぶん。

・せっかくAmazonプライムに面白そうな映画もあるので、もっといろいろ観たいし、ブログでの作品紹介のペースも上げたいんだけど、時間が足りない。あと、もともとが無精なので、できるペースでやっていくしかない。

・夏休みはどこか行こうかな。

コミケは行く予定。駆り出される。あつそー。Fallout 4の薄い本とか買えたらいいなと思うけど、もうあの人ごみを抜ける気力・体力がないのではとも思う。

ポケモン太陽とシスコムーン、ツレが珍しく買うっていうから俺も買うつもりなんだけど、ポケモンやるの初代GB以来なんだよ。しかもその初代でさえ途中までしかやっていないし。果たしてついていけるのか心配。

・固体値ってナニ?

以上です。今年も残り5か月切ったか。

アバター 伝説の少年アン

ひさしぶりに作品紹介。海外アニメチャンネルのニコロデオンから生まれた『アバター 伝説の少年アン』です。ようやく観終わった。いやー、面白かった。

 

 

【あらすじ】

水の国、土の国、火の国、気の国の4つの国が、それぞれ独自の文化を発展させながら調和している世界。各国には、それぞれ水、土、火、気(風)を操ることのできる「ベンダー」と呼ばれる能力者がいた。そして4つの技すべてを操る者は、特別に「アバター」と称された。アバターは1つの時代に1人しか存在せず、その技と知恵をもって各国間の調和を保っていた。

あるとき火の国の王が各国への侵略を始める。大きな戦乱が起き、もともと少数だった気の国はすべての民が殺されてしまう。しかしアバターは姿をあらわさず、忽然と姿を消してしまった。

侵略から100年後、火の国はいまだ世界の覇権を狙い続けていた。そんな中、水の国の一部族として暮らすサカとカタラの兄妹は、南極の海で氷漬けにされていた少年・アンを見つける。彼こそが、火の国に滅ぼされたと思われていた気の国の最後の生き残りであり、新たなアバターだった。アンは火の国の侵略を止めるべく、カタラ・サカとともに成長の旅路を歩みだすことになる……。

 

【ここがグッド】

●多彩なキャラクター

本作は実にさまざまなキャラが登場する群像劇でもありますが、それぞれキャラが立っていて、単純に面白い。主役のアンはわずか12歳の救世主。遊びたい盛りで、世間知らずな彼だけども、100年間氷漬けにされており、目覚めたときにはすでに自国は滅亡している……という悲壮感も背負っている。そんな中でもなお、世界に秩序をもたらすべく奮闘していく。

アンを支える仲間たちも、それぞれ個性的。心優しいしっかり者の水のベンダーだけども、少し頑固さで意固地なカタラ。機転は利くけど、お調子者で考えなしのサカ。並外れた才能を持つ土のベンダーでありながら、わがままで協調性に欠けるトフ。それぞれが主役級に活躍するエピソードが設けられていて、彼らがおりなす友情と信頼関係、ラブも見どころ。

敵キャラも当然、キャラが立っている。ズーコ王子は火の国の後継者でありながら、国王から顔に大きな火傷を負わされ、しかも追放されたという複雑な過去の持ち主。名誉挽回のためにアンを捕らえようとする彼と、その彼を支える老将軍アイローの関係は、もうひとつの主人公と言ってもいいほど。

そのほかズーコの妹であるアズーラや、彼女の付き人であるタイ・リー&メイといった美少女系キャラもいるし、火の国に対抗するゲリラ、師匠のおっさんたちなどのサブキャラもわきを固めてます。

使い捨てキャラは少なく、前半の1エピソードで登場したキャラが、後半のエピソードでヘルプ役として再登場したり、キャラの成長に重要な示唆を与えたりと、味方キャラから悪者キャラまで配役に無駄がない。人と人との出会い・別れを、全52エピソードを通じて満喫できる構成になってます。

 

●バトルシーンの質の高さ

水、土、火、気の技の振り付けは、それぞれ異なる中国拳法の動きがモチーフ。なので、バトルシーンではカンフー映画ばりのダイナミックなアクションを楽しめること請け合い。当然、ただ殴る・蹴るだけじゃなくて、火の技・気の技を使って加速する、水の技・土の技で防御するなど「おお、こんな使い方をするのか」と驚きながら観られるのがグッド。単純な体術戦闘でも、関節を極めたり・壁走りで背後を取ったりと戦闘のレベルが高いです。城内、船上、飛行船の屋根、洞窟内などでの戦闘シーンも多く、ちゃんとそれぞれの舞台を活かして、立体感と納得感のあるアクションを見せるのが職人芸的で素晴らしい。

目まぐるしく動きながらも、どういう状況かわかりやすく、殺陣の見せ方がいちいち秀逸。気になる人は、Youtubeとかで「Avatar the last air bender fight」とでも検索してみてください。ネタバレになるかもなので動画は貼りませんが、海外アニメ=カートゥーンと思っている人ほど良い意味でショックを受けるはず。

 

●登場人物たちの成長

ストーリーとしては単純な英雄譚なんだけども、ゴールに至るまでのキャラクターたちの成長する姿に感心する。

前述のとおり、アンは12歳の少年。本来、無邪気な性格の彼にとって、アバターという役割はまさに降ってわいたような話。前半のエピソードでは、そこかしこで悪ふざけしたり、遊びに出かけたりしている。しかしそれでも、苦しんでいる人々の姿を目にし、自分を信頼してくれる仲間たちの声を受けて、挫折も困難も経験しながら、一歩一歩成長していく。最後の最後まで悩み、自分らしいベストを模索する姿が、等身大のヒーローという感じで共感を覚える。

もちろん成長するのはカタラやサカ、トフといったキャラも同じ。「頑固で堅物」「特別な才能がない」「周囲に合わせることができない」……。そんな誰にでもある悩みを自覚し、直面しながらも、周囲の助けも得ながらそれを乗り越えていく。『アバター 伝説の少年アン』が幅広い世代に受けたのは、やはりここらへんがうまく描けていたからだと思う。

成長という意味では、ズーコの描かれ方が最高だった。敵であるアンを追いかけながら、自らの宿命を見つめ直し、叔父の言葉に導かれ、最後には自分の意思で真の王道を歩み出す。その変わりように、どことなく漫画版ナウシカクシャナ王女を思い出してしまった。

 

という感じで、キャラクターもアクションシーンも、物語も楽しめるのが『アバター 伝説の少年アン』です。マイナス点は、ラストがほんの少し駆け足気味でアッサリ風味だったことと、いくつかのシーンにご都合主義があったことかしらん。まあ気にするほどでもないし、それを補って余りあるプラスの点があるので。

つーわけでぜひ皆さんに観てほしいんですが、なんと日本語吹替えで観賞するには、Amazonビデオを利用するしかないんですよ。日本語字幕版もない。これが一番のマイナスポイントかも。Amazonプライム会員なら無料で楽しめますが、そうでないなら視聴料金を支払うか、思い切ってAmazonプライム会員になるか…。英語に自信のある人なら、海外版のDVD・BDを買うのもありです。

まーともかくオススメであるのは変わりないので、一度観てくださんせ。僕は続編の『Legend of Korra』へと移行します。 

 

Amazonプライムをお試しするのであれば、コチラからどうぞ。

 海外版DVDボックスはこちら。

AVATAR: THE LAST AIRBENDER - THE COMPLETE SERIES

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Fables vol.5 "The Mean Seasons" (あらすじ翻訳4)

※『Fables』は、おとぎ話を題材にしたアメコミです。悪の勢力によって、おとぎ話の世界「ホームランド」から追放されたさまざまなキャラクターたちが、現実世界で素性を隠しながら生活しています。キャラクターたちは自らをフェイブルズと称しています。

 

チャプター4「春が来て……」

【シーン1】

ファームの一角で、何やら人だかりができている。その中心には、動物型のフェイブルズが倒れている。

ビースト「5人目の被害者だ。知ってる限り、5人目ってことだが」

一方、上空では、スノウの六つ子らが鳥たちとともに、楽しげに空を駆け巡っている。それを別のところから眺めるスノウと北風。

北風「あんな風に空を飛ばせるべきではない」

スノウ「どうして止められます? あの子たちは飛び回るのが好きなんです」

北風「孫たちは普通の子供ではないだろう」

スノウ「わかっています、北風さん」

北風「私たちは家族だ、スノウ。さん付けで呼ばなくともよい。お望みなら私のことをお義父さんと呼んでもかまわないのだぞ」

スノウ「それは適切ではないでしょう。私はあなたの息子さんと結婚していない」

北風は、話題を六つ子たちの教育方針に戻す。彼が言うには、六つ子らのような特別な子供には、特別な教育が必要だ。六つ子らは、歩かずに空中を飛び、いまだしゃべることもせず、また6人中3人は非人間族の見た目をしている。スノウはそれはわかっているものの、生まれつきの性質をどう教育すればいいのかと答える。

北風「無論、変身魔法を教えるのだ。遅くなればなるほど、習得できなくなるぞ。ビグビーはオオカミに変身することしかできん。母親と過ごしすぎたからな。孫たちも、せめて人間とオオカミの形態に変身するようになってほしいが……」

スノウ「それは……考えてもみませんでした」

北風「それと、なぜ孫たちはいまだにしゃべらないのだろうな」

スノウ「一週間後には誕生日です」

北風「うむ。時が過ぎるのは早い。あの子たちが話せるようになればいいが」

2人は話しながらファームの広場へやってくる。人だかりをみて、スノウはキツネのレイナードにたずねる。

スノウ「レイナード、何があったの?」

レイナードは今朝早くに、広場でメリーさんの羊の死体が見つかったのだと答える。スノウと北風が現場へ向かうと、すでにビーストとスウィンハート医師が検分をおこなっていた。

スウィンハート「ほかの4人と一緒だ。窒息死しているようだが、なんの痕跡も見られない。メリー、今は子羊を家へ連れていってくれ。検死しても得られる情報はなにもないだろうから」

メリーと呼ばれた女性は、子羊の遺体を腕に抱え、さめざめと泣きはらしている。

スウィンハート「いったい誰がやったのか、見当もつかん」

ビースト「殺人であるのは間違いないんだろう?」

北風「ゼファーのしわざだな」

ビースト「なんだって?」

北風「犯人はゼファー(西風)だ。生きている風だよ。私や私の従者たちと違って、固体化することはできんがね」

北風によれば、ゼファーは風の精霊の一種で、目に見えず、生き物の肺に吸入された空気を好むという。未熟なゼファーが肺に入り込み、その空気を奪われると、哀れな儀礼者は呼吸困難で死んでしまうこともある。

プリンス「そんな生き物、聞いたことがないぞ」

北風「ゼファーはわれわれの種族の中でも希少種だ。そして特にタチが悪い。産まれる前に殺せるなら、この手で殺しているほどにな。しかし、こちら側の世界でも生きていけるとは驚きだよ」

ビースト「あなたが来るまで、そんな生き物はやってこなかったぞ」

スウィンハート「最初の犠牲者は、彼が来る前に亡くなっている」

ローズ「本当はもっと早くにこちらへ到着していた可能性もあるわ」

プリンス「あるいは他の可能性もあるぞ。木製人形たちの襲撃から1年以上がたつが、再び魔王軍が攻撃を仕掛けてきたのかもしれない。姿の見えない暗殺者を送り込んできたのかも……」

北風「ありえないことじゃない」

プリンスは、魔王軍襲撃の可能性について検討するとともに、ホームランド奪還に向けた草案を練るためにタウンへと帰っていった。北風は、捜査のために残ったビーストに協力するという。

 

【シーン2】

そのころ、タウンのウッドランドビルの受付。副市長のビューティーが、床の汚れに憤慨している。受付にはビーストとの面会にやってきたカイがいるが、ビューティーに夫は不在だと告げられる。

 

【シーン3】

再びファーム。スノウは六つ子たちを連れて、ゼファーを捜索中の北風のもとへやってきた。スノウは北風に対し、先ほど話した変身能力を子供たちにトレーニングしてやってほしいと頼む。

北風「喜んで教えよう。ゼファーの探索を終えたらすぐにでも……」

スノウ「いえ、ぜひ今すぐ教えてやってほしいんです。時間がたてばたつほど、トレーニングの効果が薄れて、変身能力を身に着けられなくなるとおっしゃいましたよね。今がまさに訓練のときなんです」

北風はスノウの言葉にとまどうが、結局は変身のトレーニングを引き受ける。その言葉を聞き、スノウは六つ子らを北風に預けた。

「よかった。じゃあみんな、おじいちゃんと一緒にいるのよ?」

スノウは北風に耳打ちする。

スノウ「実は、あなたに預けたほうが安全だと思ったんです。見えない殺人鬼がうろついているんでしょう」

北風「なるほど。よい判断だ、スノウ」

一方そのころ、ビーストはローズのもとを訪れていた

ビースト「実際、北風氏とその精霊たちに手伝ってもらうほか、やれることはないんだよ。それで話っていうのは?」

ローズ「どうしてフライをクビにしたの?」

ビースト「クビに? いや、俺はフライキャッチャーを自由にしたんだ。ビグビーが細かい罪状で彼を延々と奉仕活動に従事させていたからさ」

しかしローズは、それは間違った判断だという。ビグビーがフライをビル清掃担当として従事させていたのは、彼を目の届く範囲に置くためだった。フライ自身も彼の仕事が好きであり、もし仕事を失えば、単なる気まぐれでトラブルを起こすだけでなく、妻子を探すためにホームランドへ戻ろうとするかもしれない。

ローズ「タウンに戻って、もう一度フライを逮捕するのね」

ビースト「わかったよ。この件が片付いたら……」

ローズ「すぐによ! どうせゼファー相手にできることはないんだから」

 

【シーン4】

タウンの小さなバーで、エドマン・ダンテスとツグミ髭が酒を交わしている。ダンテスはビグビーやスノウ、ブルーボーイ、ジャックらが街を去ったことを嘆き、ツグミ髭はフェイブルタウンが没落へと向かっているのではないかと懸念する。

 

【シーン5】

ファームを後にしてタウンへ向かうプリンス。スポーツカーを走らせながら、携帯電話でビューティーと通話している。

プリンス「有能な人材が必要だ、秘密を守れる人材が。そこでだ、ビーストのオフィスで海外居住者のファイルを見つけろ。そこに警備主任が有する3人のスパイの名があるはずだ。全員、フェイブルタウンの外で暮らしている。そいつらを呼び戻せ。今は私が市長なんだから、私のスパイでもある。連絡方法? 知らん。ファイルに書いてあるだろう。手段は問わない。多少、卑怯な手を使ってもな」

 

【シーン6】

夕闇の中、スノウは明かりもつけずに自室で一人、涙を流している。

子供の声「ママ?」

スノウ「来たのね。ずっと私を探していたんでしょう。一人で、ご飯の食べ方も知らずに。知らなかったの。ずっと六つ子だと思ってた。本当にごめんなさい。あなたのことに気づきもしなかった」

子供の声「でもママに会えたよ」

スノウ「わかってる。でもここにいちゃダメ。ほかのみんなに殺されてしまう。今から言うことを聞いて。もう二度と誰かの体内に入り込んで、その空気を奪ったりしてはいけない。それが動物でも」

子供の声「でも外の空気はおいしくない」

スノウ「それでも約束して。もう誰かの体の中に入り込んではダメ」

子供の声「守ったらここにいてもいい?」

スノウ「いいえ。あなたは遠くへ行かなきゃいけない。ここからずっと遠くへ。行ってお父さんを見つけるの。何があったか話しなさい。ビグビーならどうすればいいか知っているはず。あなたを傷つけさせることもないわ。できるわね?」

そう言ってスノウは部屋の窓を開ける。

子供の声「もちろんだよ、ママ」

スノウ「約束して、お父さんに会えたら、ずっと一緒にいなさい」

子供の声「ごめんなさい、ママ。ぼく、悪い子だった」

スノウ「行きなさい、早く! 誰かに見つかる前に……」

ゼファーとして生まれた7人目の子供を見送り、スノウは一人泣き続けた。

 

【シーン7】

それから幾日かが過ぎた。スノウと六つ子らが暮らす家で、子供たちの1歳の誕生日パーティーがおこなわれている。

スノウ「ハッピーバースデイ、みんな」

ローズ「ケーキは7つ分?」

スノウ「ええ。新しい『家族の伝統』なの。この子たちが大きくなったら、いつかわけを説明してあげるわ。さあ、プレゼントを開けましょう!」

("The Mean Seasons"、終わり)  

Fables Vol. 5: The Mean Seasons (Fables (Graphic Novels))

Fables Vol. 5: The Mean Seasons (Fables (Graphic Novels))

 

「誰それに投票するのが正しい!」という発想は危険である

選挙の前後にかけて「○○に投票するのが正しい判断」「~~に投票するのは馬鹿」みたいな言説があちこちで聞かれるけど、これが危険な発想の端緒である、ということについて書く。

 

結論から言うと、「○○に投票するのが正しい」「~~に投票した人は間違ってる」みたいなもの言いは、「正しい政治家さえ選べば政治はうまくいく」「この国がうまくいかないのは正しい政治家が選ばれなかったから」みたいな思考を導きがちで、それは結局、自分の暮らす社会の行く末を【誰かに丸投げする】ことにほかならない。だから危険。邪悪、と言ってもいい。

 

「正しい政治家さえ選べばうまくいく」、などという発想は最悪の思考停止でしかなくて、つまるところ「当たりさえすれば人生の勝ち組になれる」と考えているギャンブラーとほとんど同じだ。そこには、自分の投票行動に対して自覚的に客観し、結果を顧みて最善を尽くすという覚悟がない。

 

そしてまた、投票行動に正解・不正解を求めだすと、いつまでたっても到来しない救世主を待ち望むしかなくなる。これなんかまだ害がないほうで、下手すると「何者でもない単なる政治家を救世主と勘違いして、崇め奉り、全権を委任する」可能性だってある。ただ自分の意見と合致しているという理由だけで、だ。

 

正しい政治家なんていないわけ。どこにも。【政治家】と【よりベターな政治家】しかいない。そして、なればこそ私たちは歩みを止めてはならない。

 

どのような政治家のどのような治世であっても(あなたの望んだ政治家であっても)、くさらずに・粛々と・手の届く範囲を「昨日よりまともに」していくしかない。「~~に投票しないのは情弱」だとか言うのではなく。

 

シュトヘル』のユルールも言っている。

「いかなる王の世にあるか、の偶然のみが人の幸、不幸を決めるなんて。これこそが、無念じゃないか」 

あなたが「この選挙で日本オワタ」と思えば、政治家はまさに選挙結果をすべての大義名分にして振る舞うだろうし、あなたが「どんな選挙結果であっても、自分にやれること・自分のやるべきことはある」と考えれば、政治家にとっても選挙結果は単なる選挙結果という指標でしかなくなる。

 

もっかい言う。投票に正解はない。正解を求めれば求めるだけ、あなたは自分の運命を誰か他人にゆだねることになる。

Fables vol.5 "The Mean Seasons" (あらすじ翻訳3)

※『Fables』は、おとぎ話を題材にしたアメコミです。悪の勢力によって、おとぎ話の世界「ホームランドから追放されたさまざまなキャラクターたちが、現実世界で素性を隠しながら生活しています。キャラクターたちは自らをフェイブルズと称しています。

 

チャプター3「厳冬」

【シーン1】

ホームランド。風雪にさらされる城の一角に、白髪・白ひげをたくわえた筋骨隆々の初老の男性が立っている。そこへ小さい子鬼のような妖精がやってきた。

妖精「マスター! 姿見の泉をのぞいていたら、あなたの息子を見つけたんです! いやいや、正確には息子っていうか……」

 

【シーン2】

現世、ウッドランドビル前には十数名のフェイブルズたちが集まり、新市長のプリンスに抗議デモをおこなっている。それを抑える新しい警備主任のビースト。

ビースト「ダメだダメだ、解散して帰るんだ!」

群衆「プリンス市長は約束を守れ! 無料で変身魔法をかけてくれるって公約は、いったいどうなったんだ!」

ビースト「タウンの法律に反しているぞ。こんなに集まっていては、現世人たちに見つけられてしまうだろう」

群衆「市長が俺たちに会おうとしないからだ。面会のアポは全部断られている」

ビースト「それは調整役のブルーボーイがいないからだ。まだ新しい面会調整の方法を考えているところだから混乱続きだけども、じきにうまくいくようになる。この軋轢は一過性のものだと思ってもらいたい」

群衆はまだ納得しない。ファームが再び武装化して反乱をおこしたらどうするのかと、ビーストに問い詰める。ビーストは、近日中に個人もしくはグループでの市長面会の機会をもうけることを約束し、抗議を強引に解散させた。

群衆「がっかりさせないでくれよ、執行官」

ビースト「ああ、わかっている」

群衆を解散させたビーストは、執行官と呼ばれたことに気をよくしながらビルの中へと入っていく。ロビーには魔女のフラウ・トーテンキンダーがいた。

フラウ「あんたの呪いについての研究が、成果を上げつつあるよ。もうしばらくすれば、あんたは自分の意思に応じて、人間形態と野獣形態とに変身できるようになるはずだ。あんたの嫁さんの気分に関係なくね」

ビーストは、それが自分の仕事に役立つだろうと、フラウに感謝を述べる。

一方そのころ、ビジネスオフィスでは副市長になったビューティーがデスクで大量の書類を前に、頭を抱えていた。

ビューティー「ああもう、ああもう! この部屋もこの仕事も大っ嫌い。スノウはどうやってこれだけの仕事を効率的に回してたのよ!」

バフキン「そうだなぁ…フェイブルタウンが設立されるよりも前から、スノウはもともと為政者の家に生まれていたしなあ。トップの立場での振る舞いを何世紀も知っていたのかもしれないねぇ」

バフキンの口ぶりにビューティーは怒りを爆発させ、彼を追い払う。そこへさきほどのビーストがやってきた。ビーストはデスクで書類仕事をするプリンスに、ブルーボーイ失踪の件を報告する。明確にわかっていることは、彼がヴォーパル・ソードと姿隠しのマント、それとピノキオの体を持ち去ったということだけだ。

おそらくそれらのマジックアイテムを使ってホームランドへと向かい、ゼペットじいさんを見つけ、ピノキオを直してもらうとともに、本物の赤ずきんを助けるつもりなのだろう。ビーストはそう考えている。プリンスはデスクから立ち上がり、気分転換のためにフェンシングの練習スペースへと移動する。

プリンス「そういったたぐいのマジックアイテムを習熟するために、専用のトレーニング・プログラムが用意されているんだろ。だから我々も強力なアイテムを使いこなすことができる。そういえば先週、その書類をデスクで見かけた気がする」

ビースト「ええ、間違いなく先週、市長のデスクの上にありました」

プリンス「そうだった。姿隠しのマントを使いこなす練習についての書類だった。いや、まさかもしかして……ブルーが提出した書類だったのか?」

そのまさかだった。ブルーボーイはそうやって強力なマジックアイテムを持ち出し、ホームランドへと旅立ったのだった。

ビースト「恐縮ですが、もう1つ別の問題も報告しなければなりません」

聞けば、プリンスの屋敷(=かつての青髭の屋敷)で泥棒が発生したようだと言う。以前まで36の部屋が財宝で満たされていたが、 現在は35部屋しかないのだ。盗まれた総額は、およそ24億ドルないし60億ドル。

プリンス「億? 万の間違いじゃないのか!?」

ビースト「青髭はそれくらい金持ちだったんです。今のところ疑いがあるのはジャックです。彼はこの秋に街を出ている……」

プリンス「それならビグビーもスノウも、ブルーボーイも、その他何十名も街を出ていっただろう!」

ビースト「ええ。でもビグビーは、まずジャックを疑えと……」

 

【シーン3】

何日かが過ぎたある晩。ウッドランドビルの居住区画の一室。1人の老人が、暗い部屋に向かって声を荒げている。

老人「誰だ! そこにいるのはわかってるんだぞ、いたずらガキども!」

そのとき、老人がにわかに苦しみ始める。彼はのどを抑えて助けを求めるが、声にならない。そのまま床に倒れこんでしまった。

 

【シーン4】

タウンだけでなく、ファームにも雪が降り積もっている。スカンクとアライグマを中心に、議論が交わされていた。

アライグマ「トラックでタウンへ押しかけて、市長に変身魔法をかけてもらうように要求するべきだ!」

スカンク「それはよくない。市長はいずれやってくる。ハンサムな王子さまは、いつも最後にはやってくることになってるんだ」

アライグマ「なんでそんなこと言えるんだ?」

スカンク「絵本で読んだからな」

ローズは彼らの議論を尻目に、たまった郵便物を仕分けているスノウに話しかける。スノウによればフラウ・トーテンキンダーから奇妙な手紙が届いたという。手紙には、スノウの出産を祝う言葉がつづられていたが、「子供が7人だからといって、ラッキーナンバーだとは受け取らないように」と警告が記されていた。

ローズ「7人?」

スノウ「子供たちは6人でしょ。なんでこんな間違いをしたのかしら?」

ローズ「年寄りの偏屈バアさんのことだからね。そんなの放っておいて、子供たちを遊ばせている間、部屋でココアでも飲もうよ」

そう言ってローズは六つ子たちを括り付けているヒモの結びを解く。六つ子らは、鳥のフェイブルらに見守られながら、空へ浮かび上がっていく。

 

【シーン5】

同時刻、ウッドランドビル。シーン3で倒れた老人は、ミス・マフェットの夫、スパイダーだった。彼の遺体を、ビーストとスウィンハート医師が検分している。

スウィンハート「遺体を見つけたのは?」

ビースト「マフェットです。店を開けに行こうとしたところで見つけたそうです」

取り乱すマフェットを、フライキャッチャーが押さえている。スウィンハートは遺体を調べ、窒息死のようだが気管がつぶれておらず、首にも口にも鼻にも押さえつけたような跡がないことを指摘する。

スウィンハート「呼吸をふさぐような異物も見られない。検死するまでは何ともいえないな。正直なところ、どうやって死んだか見当もつかない」

 

【シーン6】

さらにそれから何日かが過ぎた。ビーストとフライキャッチャーが、オフィスで何やら話し合っている。

ビースト「スウィンハート先生の検死では、今のところ何もわからないそうだ。ただ、それとは別に、君にいいニュースがある。このビグビーのファイルを読んだ。フライ、君のことが記録されている」

フライキャッチャー「あれこれの悪事を犯したからね」

ビースト「どれも犯罪とも呼べない、小さなものだ。ビグビーは君を何年も奉仕活動に従事させていた。私の知る限り、ハエを食べたからという理由で、ビグビーは君を何十年も床掃除とビルメンテナンスの仕事をさせていた。これは卑劣なやり方だ。私はこうした方法はとらない。というわけで、この瞬間、君の奉仕活動で罪はすべてつぐなわれた。おめでとう、フライ。君は自由だぞ。行ってよし」

フライは戸惑いを隠せない。反論しようとするが、ビーストは彼に構わずに話を進める。この処置によってフライは新しい職に就くことも可能になり、今までのようにビル地下のボイラールームに住む必要もなくなるのだという。ビーストに背中を押される形でオフィスから出されたフライは、気落ちしたままボイラールームに向かう。

フライ「ホームレスになっちまった。どこへ行けばいいんだ…」

 

【シーン7】

一方そのころ、ファームでは動物たちが騒いでいる。スノウとローズも彼らに呼ばれ、建物の外へ出てくる。

動物たち「誰か来た!」「侵略だ!」

ローズ「クラーラ、赤ん坊たちをガードして!」

スノウ「今度は何なの!?」

集まった動物たちの視線の先には、1人の男性が立っていた。シーン1で出てきた、白髪・白ひげの偉丈夫である。

北風「お初にお目にかかる、逃亡者諸君。私の名前は北風。ビグビー・ウルフの父である。さて、孫たちに会いたいのだがね」(続く) 

Fables Vol. 5: The Mean Seasons (Fables (Graphic Novels))

Fables Vol. 5: The Mean Seasons (Fables (Graphic Novels))

 

 

Fables vol.5 "The Mean Seasons" (あらすじ翻訳2)

※『Fables』は、おとぎ話を題材にしたアメコミです。悪の勢力によって、おとぎ話の世界「ホームランドから追放されたさまざまなキャラクターたちが、現実世界で素性を隠しながら生活しています。キャラクターたちは自らをフェイブルズと称しています。

 

チャプター2「長く、厳しい秋」

【シーン1】

ウッドランドビルの地下の一室で、かつての戦いで捕らえた木製人形の一人が尋問されている。尋問をおこなうのはビグビーとシンデレラ、そして次のセキュリティ担当であるビースト。尋問にかけられている木製人形は、戦いが終わった時と同様に、頭部だけの姿である。

ビグビー「洗いざらい話してくれたら、ほかの仲間が待つ部屋へもどしてやる。叫ぶのも駄々をこねるのも、好きにしろ。だがお前の運命はお前次第だ。全部話してくれれば、独りぼっちもすぐに終わるさ」

木製人形「わかったよ。で、前回はどこまで話したっけ?」

シンデレラ「ゲートについてよ」

木製人形「ああ、ゲートな」

木製人形は、ホームランドでのことを語る。彼によれば、魔王は現世と通じるゲートを早急に閉鎖するよう命じたらしい。強力な魔力によって支配される自らの帝国が、銃火器や近代兵器、テクノロジーによって脅かされることを恐れているのだという。

 

【シーン2】

新たな副市長であるビューティーが、行政オフィスに入ってくる。部屋には、赤ん坊たちを寝かしつけたばかりのスノウがいた。六つ子たちは浮かび上がってしまわないように、ひもでベビーサークルにくくりつけられている。

スノウ「一度に2人しかお乳をやれないでしょう。残りの子たちは、餌を待ちきれないひな鳥みたいに騒ぐもんだから大変よ」

ビューティー「でも、あなたにとっていい影響があるみたいね。今のあなた、すごく元気そうに見えるんだもの。セックスのほうもいい感じ?」

スノウ「え…ええ……。そうね、再開すべきかも……。月末にはファームに移動しなきゃいけないし。その前に、あなたに教えておくべきこともあるの。バフキンとブルーボーイは解雇しちゃダメ。彼らの仕事ぶりはプライスレス。何がどこにあるか把握してるし、その日にやらなきゃいけないタスクも知ってる」

とはいえ、自分の仕事は責任をもって自分でやらなければいけない。新市長のプリンスは、コール老王よりも実践を好むタイプだろうから……。スノウはビューティーにそう伝える。

 

【シーン3】

ビルの屋上にあるペントハウスでは、コール老王が荷物をまとめていた。

コール老王「手伝ってくれて感謝する」

プリンス「就任式の前日までには引っ越してくれるとありがたいですね。ここで式のアフターパーティーをするので」

プリンスはホブズに、もっと大きく豪華なプールを建造するよう注文する。失意のまま、肩を落としてかつての自宅から出ていくコール老王。

 

【シーン4】

スウィンハート医師は、ブルーボーイの自宅に問診に来ていた。彼はブルーボーイの指を見て、完全に治ったこととかつてのようにトランペットを演奏できるだろうと伝える。そのとき、コール老王が部屋を訪ねてくる。老王は、次の部屋が見つかるまでブルーボーイの部屋に居候することにしたようだ。ブルーボーイは、望むだけ部屋を使ってくれて構わないと老王に告げる。

 

【シーン5】

木製人形への尋問は終わった。尋問で得た情報は厳重に保管するよう、ビグビーはシンデレラに命じる。その後、ビグビーとビーストはシンデレラと別行動に移る。

ビースト「で、なんでシンデレラがこの仕事を?」

ビグビー「彼女は諜報員の一人だ。警備主任を引き継ぐなら知っておけ」

警備主任の仕事は、フェイブルタウンの治安維持を請け負うことだけではなく、非公式な諜報員らの統括も兼ねている。そしてこの仕事を引き継ぐには、ボスである市長や副市長にさえも機密を保たなければいけない。ビグビーはビーストをビルの地下深くへと案内しながら、「フェイブルタウンの未来がどうなるかは、お前の能力にかかっている」とビーストに伝える。

 

【シーン6】

行政オフィスで寝ているバフキンのもとに、ブルーボーイがやってくる。

ブルーボーイ「新しいルームメイトがやって来たから、自分の部屋でトランペットの練習ができなくてね。ここを使いたいんだ。バックルームで眠っていいからさ」

バフキンは快諾し、枕をもって部屋から出ていく。その姿を見送りながら、ブルーボーイは彼に別れの言葉を告げた。

 

【シーン7】

ビル地下深くまでやってきたビグビーとビースト。扉を開けると、そこには一匹のガチョウがテレビを見ながら座っていた。

ビグビー「彼女がグドラン、金の卵を産むガチョウだ」

グドラン「どうもビグビー。こんにちは、ビーストさん」

ビースト「なんてこった。ホームランド侵攻のとき、魔王軍に殺されたんじゃ?」

グドラン「ビグビーと私の作り話なの、それ」

ビグビーがグドランが座っている麦わらの台の下を探ると、そこから金の卵が見つかる。これこそが、非公式の諜報活動を継続するための資金になるのだ。「この黄金を、足のつかない現金に変えてくれる男も紹介してやる。俺はしばらくしたらタウンから出ていくが、お前は面倒な仕事に首を突っ込んだってわけだ」。ビグビーは金の卵をビーストに投げながら、そう告げる。

 

【シーン8】

ビグビーからビーストへ、スノウからビューティーへ、それぞれ仕事の引き継ぎが終わった。ビグビーとスノウは、2人で公園の池のほとりを歩いている。

スノウ「私とあの子たちは明日、ファームへ行くのよ。あなたはどこへ行くの?」

ビグビー「わからん。だがここにはいられない」

スノウ「フェイブルタウンには、まだあなたが必要でしょう」

ビグビー「俺は数世紀のあいだ、この街に尽くしてきた。だが困ったことに、自分の子供たちが向かう場所は、俺がいてはいけない場所だ。自分の仕事はもう十分以上にやった。次はほかのやつが担当する番だ」

獣人にしか見えない六つ子を育てるには、ファームへ行くしかない。スノウはそう決めた。しかし「悪いオオカミ」であるビグビーは、動物型フェイブルズの住むファームへ行くことはタウンの法律で禁じられている。

スノウ「もう会えないの?」

ビグビー「そんなことはない。スノウ、俺は子供たちにできるだけ近寄らないつもりだ。だがいつまでそれを守れるかはわからない。遅かれ早かれ、いつか君と子供たちに会いに来るだろう。そのときが来たら、どんな力でも、どんな魔法でも、地球上のどんな生き物でも俺を止めることはできないだろう」

スノウ「私たちが創り上げてきたすべてを、捨てていくつもりなの?」

ビグビー「俺たちが創ったのはな、スノウ、あの子たちだけだ。その子供たちを、君はファームへ連れて行こうとしている」

スノウ「じゃあどうすればいいの?」

ビグビー「簡単なことだ。ファームへ行くのはやめて、俺と一緒に来い。この世界には、まだ誰にも見つかっていない森がある。そこであの子たちを育てればいい。フェイブルズにも現世人にも邪魔されずにな」

スノウはビグビーの胸に顔をうずめてしばしすすり泣いた。

スノウ「ああ…私にはできない、ビグビー。フェイブルタウンのみんなを裏切ることも、森で暮らすことも」

 ビグビー「そうだろう、スノウ。君がかつていじわるな王妃から受けた仕打ちを考えれば当然のことだ。君はまだお城のお姫様という幻想の中で嘆いている。俺の居場所は、犬小屋しかない」

ビグビーはそう言い残し、スノウに背を向けて立ち去った。

翌朝、スノウは荷物をまとめて、六つ子らとバンに乗り込んだ。運転手はフライキャッチャーだ。新市長プリンスやコール老王、ビースト、シンデレラ、ジャックらに見守られ、タウンを去っていった。ビグビーは、その様子を離れた場所から見つめていた。スノウと自らの子らの乗ったバンが遠ざかっていく中、彼はタクシーに乗り込み、どこへともなく走らせる。

 

【シーン9】

スノウとビグビーはタウンから去った。ビューティーが行政オフィスを、ビーストが警備主任を担当することになる。ビューティーは、オフィスがようやく自分一人のものになることを喜ぶが、そこへ新市長のプリンスもやって来た。すでに彼自身のデスクも行政オフィスに運び込まれている。

プリンス「これからはもっとダイレクトに市政にたずさわろうかと思ってね。で、ブルーボーイとあのお猿さんはどこだ? 最初の激励演説をやろうじゃないか」

ビューティー「知らない。そういえばしばらく見かけてないんだけど」

ビースト「早くも前途多難だな」

 

【シーン10】

その日の終わりごろ、スノウたちはファームへと到着した。ファームは歓迎ムード一色で、ローズ・レッドのほかキツネのレイナード、熊の夫婦、三匹の子豚らが出迎えてくれる。姪っ子・甥っ子らの顔を見るために、ローズがバンの後部ドアを開くと、2人の赤ん坊が浮遊能力でどんどんと空へ浮かび上がっていく。

スノウ「どうしよう!」

ローズ「心配しないで。あの子らを捕まえるのよ!」

数羽の鳥たちが浮かび上がった赤ん坊をキャッチした。スノウは喜びながら鳥たちに感謝の言葉を伝える。

 

【シーン11】

荷物を運び入れて、子供たちを寝かしつけたスノウ。ローズは彼女に、ビグビーとはどうなったかと質問する。

ローズ「ロマンティックな別れをした?」

スノウ「全然。昨日はケンカ別れしたし、今朝は話もしなかった。誰にも見つからない場所に行くと言っていた」

ローズ「よかった」

スノウ「どういうこと?」

ローズ「すねてるのよ、ビグビーは。あなたたちのことを気にかけてる証拠だわ。誰が見ても当たり前のことでしょうけど」

ローズはスノウをじっと見つめて言葉を続ける。

ロース「あなたたち2人は見えない鎖でつながっている。どれだけケンカしても、どれだけ離れていても関係ない。初めて会ったときからそうだったのよ」

スノウはそれでもビグビーが去ったことを嘆くが、きっと彼は戻ってくると、ローズはそうスノウに言い聞かせた。

 

【シーン12】

同日深夜、プリンスのペントハウス。女たちと寝ているプリンスのもとに、ホブズがやってくる。彼はプリンスを起こし、バフキンが行政オフィスのバックルームに隠れていたことと、ブルーボーイがいなくなったことを告げる。

プリンス「どうやって? ゲートは閉じているんだろ?」

ホブズ「どうやら何かを持ち去っていったようです。姿隠しのマント、ヴォーパル・ソード、それとピノキオの体。ほかにも盗まれたものがないかチェック中です」

 

【シーン13】

同じころ、スノウは誰かが呼ぶ声に目を覚ます。目を開くと、例によって首だけになったコリンがいた。また夢の中なのだ。

コリン「君が呼んだんだよ、スノウ。何か気になることがあるんだね」

スノウ「コリン、最悪のときは終わったのよね? これから事態はよくなる?」

コリン「ああ……スノウ。私にそう言うことができたら、どんなにいいだろう。そう言えたなら…」(続く) 

Fables Vol. 5: The Mean Seasons (Fables (Graphic Novels))

Fables Vol. 5: The Mean Seasons (Fables (Graphic Novels))

 

 

Fables vol.5 "The Mean Seasons" (あらすじ翻訳1)

※『Fables』は、おとぎ話を題材にしたアメコミです。悪の勢力によって、おとぎ話の世界「ホームランドから追放されたさまざまなキャラクターたちが、現実世界で素性を隠しながら生活しています。キャラクターたちは自らをフェイブルズと称しています。

 

チャプター1「残酷な夏」

【シーン1】

産気づいたスノウのもとに、駆け付けるビグビー。その顔に、普段の冷静な様子はうかがえない。手術室の前には、ブルーボーイ、コール老王、プリンス・チャーミングが待機している。

ビグビー「何か進展は?」

ブルーボーイ「何も。昨日から陣痛が続いているよ」

ビグビー「なら帰っていいぞ。投票してこい」

ブルー「今朝もう行ったよ」

新たな市長選について、現職のコール老王は、その結果がどうなるか、気が気ではない。一方、プリンスは落ち着き払ってふるまっている。

 

【シーン2】

フェイブルタウンではすでに投票が始まっていた。人々はウッドタウンビル内に設けられた投票所で列をなしている。どちらに投票するかと問うシンデレラに対し、フライキャッチャーは「スノウ・ホワイトって書いた」と答える。

 

【シーン3】

スノウの出産が近づいている。スノウに強くいきむよう、スウィンハート医師が呼びかけると、ついに1人の女の子が誕生した。

スウィンハート「見なさい、スノウ。健康で完全に普通の女の子だ」

スノウ「普通ですって? しっぽが見えないの?」

スウィンハート「しっぽじゃない。へその緒だ。いま切るよ」

スノウ「ああ、よかった。気絶しそうよ。この子を抱いてもいいかしら」

しかしスウィンハートはスノウの申し出を否定する。スノウの腹はふくれたままだ。どうやら三つ子かそれ以上のようだと言う。

 

【シーン4】

動物形態のフェイブルズが住まうファームでも、同じように投票がおこなわれていた。どうやら動物たちは前足をスタンプ代わりにして、どちらに投票するかの意思表示とするようだ。

 

【シーン5】

スノウの出産はまだ続いており、すでに数十時間が経過していた。

スウィンハート「これが本当に最後の子だ」

スノウ「さっきも最後って言ったじゃない! もう出てこないでって言って!」

スウィンハート「もうあと少しだ」

スノウ「もう勘弁してよ! なんでもあげるから!」

手術室の外では、ビグビーがじりじりしながら待っている。両手はオオカミのそれになっており、長時間続く出産に彼の気も立っているようだ。ビグビーは、スノウの体力が限界近くであると感じ取っている。

 

【シーン6】

 市長選は投票の集計に入った。ウッドランドビルの前で、コール老王とフライキャッチャー、プリンスとホブズがそれぞれ話している。

コール老王「フライ。結果が出た段階で、すぐに再集計させてくれ。私が言うより、君が要求したほうがいいだろう。それとこっそりプリンスの陣営をうかがって、私がいつまでペントハウスにいられるか、様子をうかがってきてくれ」

フライ「俺がやるんですか? 荷が重いですよ、それは」

一方、プリンスは余裕だ。

プリンス「結果が判明したら、すぐにダンスホールで祝賀会の手配をしてくれ。それと、コール老王になるべく早急にペントハウスから退去するよう言伝を。ああ、それとスノウに出産祝いのバラを60本届けてくれ」

ホブズ「大変よろしいかと」

ビルの敷地内では、トラスティー・ジョンがさめざめと涙を流している。フライが聞けば、先の木製人形たちの襲撃によって、長年手入れしていた庭園がメチャクチャになってしまったという。フライはそれを慰める。

 

【シーン7】

集計の結果、フェイブルタウンの新市長はプリンス・チャーミングに決まった。ビル内のダンスホールでは祝賀会が開かれ、プリンスは早くも美女たちとダンスを楽しんでいる。しかしジャックは沈んだ表情だ。カイが話しかける。

カイ「お前にとってはうれしい結果かな、ジャック? 新体制下のほうが、新しい悪だくみも成功しそうじゃないか」

ジャック「そう思うか? 俺が思うに、この街はひどい場所になるぜ。俺たちは長い間うまくやってきたが、これももう終わり。最後。終了だ」

浮かれて踊っているプリンスや、新しい警備主任を約束されたビーストらを尻目に、ジャックはそう答える。

カイ「かもな。だがローマ帝国だって、崩壊するまで500年かかった。まだしばらくはいい日もあるだろうさ」

ジャック「俺にとってはそうでもないだろうな。俺はもう行くよ」

 

【シーン8】

そのころ、ビグビーは、自分とスノウとの間に生まれた6人の子らを眺めていた。何人かは、狼男のようにグレーやこげ茶の体毛におおわれている。

ビグビー「この子たちを見てみろ、スノウ。六つ子だ。ほとんど人間そのもののだし、健康そのものだ」

スノウ「完璧に人間に見えるのは、1人だけね」

現世で暮らすには、完全に人間に見えなければいけない。明らかに獣人のように見える子らは、ファームで育て、暮らすしかない。スノウはそうビグビーに伝える。

 

【シーン9】

プリンス当選の祝賀会はまだ続いている。プリンスは、選挙公約に掲げた「動物型フェイブルたちの変身自由化」について、魔女たちに話しかける。

プリンス「変身魔法の価格について、一度みなさんと話し合う必要がありますね。呪文はいつごろから準備できますか?」

フラウ「できないね」

プリンス「なんですって?」

フラウ「馬鹿な王子様だね。私たち魔術師は、確かに市の要望に応えてきたけど、かなえてやれるくらいのレベルに要望をカットしてきたからだよ。もう私たちの魔力は限界ギリギリなんだ。これ以上、変身魔法を使うことはできない。現世人たちの大量生産品とは違うんだよ」

フラウはプリンスに対し、選挙公約を立てる前に相談しなかったことを指摘する。プリンスは青ざめた顔で会場を後にする。

 

【シーン10】

選挙に敗れたコール老王は、ペントハウスで一人頭を抱えている。

コール老王「私が何をしたって言うんだ?」

 

【シーン11】ウッドランドビルの地下の一室。壁にはりつけにされたバーバヤガーが、フラウに対して口汚い呪詛を投げかけている。フラウは聞く耳を持たない。

バーバヤガー「この手足が自由になったら、フェイブルタウンを破壊しつくしてやる。この現世の地球も丸ごと塩漬けにしてやる」

フラウ「なるほど、やればいいさ。だがその前に、話をさっきの議題に戻していいかね。魔王とはいったい誰だ?」

 

【シーン12】

フェイブルタウンでの戦いを探るジャーナリストのケビン・ソーン。彼は何かが起きていることを察知しているが、事件の核心をつかめずにいる。しかし独自調査のために、日記をつけることにした。

 

【シーン13】

ビグビーとスノウの六つ子を見るために、ブルーボーイやフライキャッチャー、コール老王、シンデレラ、ブライア・ローズ(眠れる森の美女)などがやって来た。新生児室のガラス越しに、赤ん坊らを眺めている。

ブライア「名前は決めたの?」

ビグビー「いくつか。だがスノウに却下された」

スノウ「あの赤毛の子は、ブロッサムって名前にしようかと思う。体毛がローズ・レッドみたいだし」

コール老王「コールってのはいい名前じゃないか?」

 フライ「アンブローズとか」

ブルーボーイ「アンブローズなんて名前聞いたことないよ」

フライ「俺の本名だよ」

突然、赤ん坊の一人が保育器の中で立ち上がろうとした。驚くスノウ、ビグビーらの前で、六つ子の体が少しずつ保育器から浮き上がっていく。そのまま赤ん坊らは完全に宙に浮いてしまった。(続く)

Fables Vol. 5: The Mean Seasons (Fables (Graphic Novels))

Fables Vol. 5: The Mean Seasons (Fables (Graphic Novels))