レコスケくん

出版・マスコミ系の業界人って、カネがあまるとオーディオ機器に凝りだすよねー。

という与太話はさておき。

えー、いわゆる「趣味もの」といわれる部類の漫画がありますな。

漫画のメインストーリー以上に(あるいはそれと同レベルで)、

特定の趣味に関するトリビアや“あるあるネタ”の描写に重きをおいた漫画。

カクテルなら『BARレモン・ハート』、鉄道だと『鉄子の旅』、

そばだと『そばもん』などがそうですな。

レコスケくん』は、レコード収集の趣味を題材にした漫画です。

デジタルデータで音楽を聴くのが当たり前になった現代では理解されにくいですが、

アナログ盤レコードを収集するのが趣味という人は一定数いて、

ちゃんと『レコード・コレクターズ』という月刊誌も出ている。

レコスケくん』はこの『レコード・コレクターズ』で掲載されてた作品で、

主役のレコスケくんを始めとするレコード収集マニアたちの日常が、

本秀康による独特のとぼけたテンポで描かれます。

ぶっちゃけていうと俺はレコードコレクターではないので、

読んでて“あるある”感はないですし、本作で描かれているネタが正しいのかどうか、

あるいはそれがレコ収集家にとってどれくらい笑えるネタなのかもわからん。

でも、それでもなんか面白いんだよね。

ネタそのものじゃなくて、レコードコレクターたちの生態が。

「電車の中でライナー読んでる女はヤバイ」とか、

「お金足りなかった人が、レアなレコードを腹立ち紛れに裏返しにして棚に戻す」とか、

「会話内容をいつの間にか好きなアーティストの話題に変えちゃう人」とか。

「ついに来たわ、『無人島に持っていくレコード』質問され日が!」とか、

「各国のリイシュー盤で同じ曲を何回も聴いて彼女にひかれる」とか。

「知らねーよ、ンな細けえことはよw」とツッコミながらも、

「あー、でも趣味にハマる人ってこんな感じだよなー」と笑っちゃう。

こーゆーのは結局のところ内輪ネタだから、

わからない人には、いっそのこと描写が細ければ細かいほど笑えるんだよね。

「細かすぎて伝わらないモノマネ」と同じこと。

“知らないけど、こうなんだろうな”と思わせられる力量があれば、

その世界について素人でもなんか面白さが伝わるもんなんだよ。たぶん。

背景にあるのは、音楽やレコード文化、レコ収集に対する愛情なんだろうなあ。

やっぱ自分の趣味について何時間でも熱心に語れる人って、

見ていて(うっとうしいときもあるけど)ほほえましいでしょう。

“好きなものに対して熱心な人”は、何か知らないけど、良いんだよ。

「この趣味を好きでいるあなたが好き」っていう感覚。

レコスケくん』には、それがあります。

音楽好き、レコードコレクター以外でも、何か1つの趣味に熱中している人なら、

本作のメンタリティーはわかるはず。おススメ。