読めよぉー。(´;ω;`)

あとプレイしたり、観たりしろよ。アメコミ翻訳はじめました。

不安の立像

かの漫画の神様、手塚治虫は仰られた。「諸星さんの絵だけは描けない」。

あの高橋葉介もこう述べている。

「私は好きな漫画家さんの絵を一度は真似て描いてみるのだが、

諸星大二郎の絵だけは、真似てみようとも思わない。こんな絵描けるわけがない」。

と、ゆーわけで。続いています。ホラー特集。今回は諸星大二郎『不安の立像』。

諸星大二郎はナウ・アンド・フォーエバーに大好きな漫画家のひとりで、

語れと言われたら丸1日は語れます。たぶん。

いや、俺は別に諸星大二郎研究家でもないし、

氏の作品のことをすべて理解しているとも思わないです。

それでも氏の名字を“もろぼし”と呼ぶ人がいれば、

仮にそれがやんごとなき御方であっても「もろほし、ですよ」と

訂正させるくらいに好きです。

とりあえず、何がそんなに好きなんだろうと考えてみます。

まず、上に述べたようなオリジナルすぎるビジュアルが好きです。

独特の、どの時代・どの地域性にも当てはまらないような、

それでいてどの時代でもどの国でも通用しそうな絵柄。

人間の原始に訴えかける線なんだと思う。

似た絵柄が古代中国の壺に描かれていたと言われても、俺は信じる。

もちろん、デビュー時と現在とでは、かなり印象が違うんだけども、

それでもどの絵にも“諸星”らしさ、“諸星”性とでもいうべきものがある。

あれはスゴイ。いや、本当に。

んでもってビジュアル面以上に諸星作品に抗いがたい魅力を感じるのは、

やっぱり描かれた物語の内容に対してだよねえ。

諸星作品の物語には共通して描かれるのは、

異界や異形、異端といった“異物”だ。というのはよく語られるところ。

見知らぬ土地、子供らの秘密の遊び、伝説や宇宙をつかさどる神まで、

私たちが住まう日常から切り離された(とされる)ものたち。

こういった“異物”を当たり前のように捉え・描くのが諸星作品だと。

それはもう、実際に見てきたんじゃないかと思うくらいに、自然に。

つってもしかし、諸星作品が奇をてらっただけの

クロウト受けするキワモノ漫画なのかというと、それはない。絶対にない。

なぜ言い切れるかというと、

諸星作品は異物の存在を通じて“真実”を語っているからなんですよ。

話が意味不明になってきたなと思っていますね。

俺もそう思う。ゴメン。でも書かずにはおれんのだ。

えー、真実っつーても、いろいろありますよ、うん。

暗黒神話』では古代の伝奇を通じて、

人間のはかなさと宇宙の根源的存在の巨大さを示したし、

短編『城』や『商社の赤い花』では企業と労働者を描くことで、

会社と社員がいかに分かち難いかを残酷なまでに突きつけた。

規模の大小・現実的か空想的かなど関係なく、世界の本当の姿ってのは

毎日の雑事という薄皮一枚の下でじっと潜んでいるんでしょう。

諸星作品は、異物を通じてそういった“本当の姿”を暴き、語る。

そして読み手はそうして知った正体に、

「そうか、そうだったのか…!」と思わずうめいてしまう。

その真実が、リアル社会で正しいか否かは関係ない。

だけども、その真実の描き方・明かし方がとてもとても巧妙で、

思わずガーンとノックアウトされてしまう。

このへんが諸星大二郎という漫画家の最大の魅力かと。

で、今回の作品『不安の立像』。やっとか。

短編集のタイトルにもなっている表題作でして、

めちゃくちゃ完成度が高いです。

ストーリーは単純至極。

世の中に疲れたサラリーマンが、通勤途中の線路上で何度も見かける

不気味な黒い影の正体を探るというもの。

黒い影は誰にでも見えるし、「そういえばいるな」と認識もしているが、

「どうでもいい」と、その存在をほぼ無視している。

だけど主人公はその正体を知りたがる。

なんでみんな無視しているんだ? 気にならないのか?

そして主人公は黒い影のあとをつける。

彼が知った影の正体とは……別に驚愕するほどのものでもない。

言葉だけなら誰もが聞いたことのある存在です。

だけどもそこから導かれた「知ってはならない真実」と、

それが日常のごく近くに潜んでいることを、恐るべき説得力をもって描く。

ほんの少し世間に疑問を抱けば、一寸先は闇、どころじゃない、暗黒なのだ。

ちょっとこのセンスは他では味わえない。

特に最後の6ページ、ト書きを中心に展開されるコマ運びは圧巻。

ホラー漫画のひとつの完成形だと思います。

短編ホラーなので作品の面白さを説明するのは難しいですが、

ホラー好きなら絶対に読むべき作品。

現世がいかにもろく崩れやすいものか、存分に味わわせてくれます。

そして、それこそが恐怖の真髄なんですよ。

今回は作品紹介っつーか

俺の諸星好きをアピッただけのような気もしますが、

まあ好きなんだからしょうがない。漫画評論家じゃないしね。

この表題作以外にも、諸星ホラーの傑作がバランスよく収録されてるので、

買って損はしないです。ホント。持ってけ10つ星。読め! よぉー。