江戸むらさき特急

まだ民放で時代劇ってやってるの?

前振りおしまい。
いや、水戸黄門が終わったのは知ってる。終わったよね?

時代劇(および江戸時代)をネタにした4コマギャグ漫画です。また4コマか。

本当に上手いパロディとかモノマネってのは、
元ネタを知らなくても笑えるもんですが、本作もそういった類の作品です。
時代劇を観たことない(知識としてしかしらない)俺でも十分つーか普通に笑える。

ネタにしているのは、数々の名作時代劇だったり、あるいは時代劇の“お約束”。

例えば……
・「安心せい、みね打ちじゃ…」
 →「暗い夜道、辻斬りの不安でいっぱいでしたが、みね打ちなら安心です」。
・「そうは問屋がおろさねえ! ね、問屋さん?」。
・「この大黒屋にケチつけようってんだな…先生、お願いします!」→バシッ(殴られる)
 →「先生いつも言ってたね、他人に頼るなって」→「やっとわかってくれたか」。
・「ありがとうござえますだ、あなた様は世直し大明神!!」→「安心して暮らすがよい」
 →「え? ちゃんと直ってなかった?」
・「甘い汁を吸うのは私ども2人だけ…あっ、先生!!」、「隠れて吸えよ」、「先生!!」
・「俺が大黒屋ばかりひいきしている、そう言いたいのか!? 伊勢屋、遠州屋!」
・「うおおおお!」、「上様! また暴れていましたね! 暴れは1日1回まで!」
・「ふふふ…しょせんは幕府の犬…か…」、「わしなんか幕府のアルマジロだぞ!」
・「野武士は戦国時代まで生息していたらしいが、今は絶滅したとされている」
……などといった、くっだらねえ(ホメ言葉)ギャグがこれでもかと詰め込まれてます。

おそらく今後、漫画上で時代劇をネタにする場合、
必ずどこかで本作との“かぶり”を意識しなければならないほどの充実ぶり。
「言われてみれば確かにこれってよくあるよなー」という時代劇独特の文法を拾い上げ、
それをネタとして4コマに落とし込む。その見事さが本作の真骨頂でしょう。

そのほかにも、平賀源内エレキテルが必殺技だったり、
大岡裁き奉行所のプレイメニューだったり、江戸の黒豹が全身タイツ野郎だったり、
鞍馬天狗が実在しなかったり(いや、実在しないんだけど)と、いい意味でフリーダム。

もちろん元ネタがあることを抜きにしても、おもしろいです。
間の取り方の上手さやオチの多彩さが絶妙で、
ギャグ漫画家としての ほりのぶゆきの非凡な才能がうかがえる。

だいぶ昔の作品ですが、今読んでも新鮮で笑えます。全3巻と納まりもいい。佳作。
しかしこの漫画と吉田戦車伝染るんです。』が同時期に掲載されていたとは、
当時のスピリッツは充実してたんだなあ。うらやましい。