サンドマン

ホントはこのブログ始めた当初、
もう少し海外コミックを取り上げるようにしようかと思ってたんですよ。

でも、よくよく見渡してみたら、ネット上には俺より海外コミックに詳しい人ごまんといるし、
むしろ国内漫画におけるマイナー漫画のほうが、
ヘタな海外コミックより注目されてないんじゃないかと思い、
そっち方面をメインに取り上げてきた次第。
前回の藤枝奈己絵とか、ほんまりうの『息をつめて走りぬけよう』とかね。
セガサターンの隠れた名作より、プレステのマイナーゲームのほうが不遇なんですよ。

とはいっても、海外コミックの布教活動も、私なりに精いっぱいやっていきたいなと思い、
今回は、ハイ、ニール・ゲイマン原作の『サンドマン』です。
ゲイマン。ゲイ♂マン。とかって書くとファンに殺されそうな勢い。

海外コミックですが、アメコミヒーロー系ではありません。
DCコミックの1ブランド、ヴァーティゴから出ているファンタジー・オカルト系コミックです。

主人公は、あらゆる夢(睡眠時に見るほうの)をつかさどる超越的存在、ドリーム。
サンドマンモルフェウス、カイックルなど複数の呼び名を持つ彼は、
“エンドレス”と呼ばれる7人の兄弟姉妹のうちの1人。
そんな彼を中心とした、幻想的でユニーク、恐ろしくも美しい物語を描いた作品です。

現在、本国アメリカでは全75編、単行本10巻が刊行されてますが、
日本では20編を収録した単行本5巻のみ。未完です。ミカンミカンミカン!

といっても読む価値はあるので、その5巻をざっと紹介。

1巻&2巻:プレリュード&ノクターン(それぞれ上・下)
ささいなことから人間の魔術師によって70年間も幽閉されていたドリーム。
幽閉生活で失われた力を取り戻し、“夢の王国”を再建するため
自らの力の象徴である“砂の袋”、“ルビー”、“マスク”を探し求めて旅に出るが……。
  ◆  ◆  ◆
オカルトヒーローのジョン・コンスタンティンや、
ジャスティス・リーグヴィランであるDr.デスティニーことジョン・ディーが登場。
わりとがっつりストーリーに絡んでくれます。
ジョン・ジョンズや『スワンプシング』に出てる(らしい)マッド・へティ、
ジョナサン・クレーン(バットマンスケアクロウね)もちょこっと出演。
2巻には、エンドレスの1人であるデス(かわいい)との日常的なやり取りを描いた
1話読み切りエピソード「ザ・サウンド・オブ・ハー・ウィングス」を収録。

3巻&4巻:ドールズ・ハウス(それぞれ上・下)
人々の夢の垣根を破壊してしまう“渦”と呼ばれる存在、とある少女がそれだった。
同時に、ドリームの“夢の王国”から強力な4体の生き物が逃げ出してしまう。
ドリームは“渦”たる少女を見守りつつ、いなくなった4体を探し始める……。
  ◆  ◆  ◆
知らないうちに“渦”となった少女と、その彼女を巡るドラマを描きつつ、
夢の世界に生きる悪夢的存在の恐ろしさも垣間見せるエピソード。
登場キャラの1人、“コリント人”が不気味でコワい。
「プレリュード&ノクターン」からの伏線もあり、作中の世界観の広さを感じさせます。
エンドレスの1人であるディザイアとディスペアも登場するほか、
4巻には読み切りの1エピソード「メン・オブ・グッド・フォーチュン」も収録。

5巻:ドリームカントリー
それぞれ読み切りの4エピソードを収録。
クリエイティブな才能を授ける女神カリオペと、
彼女をとらえ、成功のために利用した作家の悲劇を描いた「カリオペ」。
猫たちが夢見る真の世界とは……「ア・ドリーム・オブ・ア・サウザンド・キャット」。
ドリームとの約束で演劇を披露することになったシェイクスピア一座と、
劇の観客たる妖精らが織りなす一夜の出来事、「ア・ミッドサマー・ナイツ・ドリーム」。
超人メタモーフォーと同じく、死ねない体になってしまったエレメント・ガールの
哀しみと救いを静かに描く「ファサード」。
4編のうち、「~サウザンド・キャット」は特に秀逸。
猫たちがどのように世界を見ているかをゲイマンらしい着想で描いた短編で、
古今東西を問わず、猫好きなら1度は読んでほしいです。

シーンとセリフを多層的に重ねながら、
物語の全体像を描いていくゲイマンのストーリーテリングは秀逸で、
それこそ夢を見ているような、掴みどころがないようであるような読み心地です。
いや、じっくり読めばちゃんと理解できるのでご安心を。
気難しく、プライド高いんだけど、
どこか子供っぽさを残したようなドリームのキャラクターも、
読んでるうちにむしろ好感を抱いていくはず。見た目もクールだし。

「ドールズ・ハウス」以降も物語は続いており、
エンドレスの残りの兄弟姉妹──ディスティニー、ディストラクション、デリリウム
順次登場していくんだけど、前述の通り、翻訳は5巻でストップしてます。

海外コミックがまだまだ“マイナー”であることは間違いないけど、
現在は“市場から認定されたマイナー”にまで拡大しているので、
今こそ全話を翻訳してみてはいかがでしょうか、どことはいいませんが、小プロさん。

なお、みんな大好き、デス(かわいい)をフューチャーした外伝、
『デス ハイ・コスト・オブ・リビング』も翻訳が出てますが、これはまた別の機会に。