LA QUINTA CAMERA-5番目の部屋

基本的に漫画は「漫画として面白ければそれでOK」と思っているので、
絵柄で選り好みは(あまり)しないし、どんな絵柄であっても驚かない自信はあります。

が、それでもこの人の漫画を最初に読んだときは驚いた。
「こんな絵で漫画を描ける人がいたのか!」と。

とゆーわけで、オノ・ナツメ『LA QUINTA CAMERA-5番目の部屋』です。
ラ・クインタ・カーメラ、と読みますよ。

イタリアのとある町でルームシェアリングしている4人のイタリア人男性を中心とした、
他愛のない・生活感のある・やさしくも温かい物語、の読み切り連作です。

面倒見のいい家主のマッシモ、無愛想だけど根は優しいアル、
音楽好きの小動物系・ルーカ、周囲を振り回すけどもみなから愛されるチェレ。
彼らと、彼らのアパートの空き部屋=「5番目の部屋」を訪れる人たちが、
イタリアならではの自由で大らかなショートストーリーを展開していきます。

話の構成がうまいし、「心を温かくするポイントを知っているな」と感心するんですが、
それよりもやっぱり驚きなのは、そのビジュアル、絵柄。

いやー、これがカッコいい。
ほんと、そのまま切り抜いて一枚絵のイラストにできるんじゃないかと思う。

「最近の漫画は、登場人物のファッションもおしゃれでイケてる」
なんて言われているらしいですが、
カッコいいキャラがカッコいい服を着ていたら、カッコいいのは当たり前だろ!

そうじゃなくて、何でもない一般人が普通の私服を着ているのにカッコいいんだぜ。
これが“センス”ってやつですよ、マジで。

例えばさ、どの漫画とは言わないけど、『NANA』とかだとさ(言っとるやんけ)、
「うひー、シャレオツwwファッションセンスぱねえwww」とかってやっかみ半分で
コメントしてしまいそうになるけど、
この漫画だとそうはならない。ごく自然なカッコよさ、センスのよさがある。

人物の描写も、かなりデフォルメの効いたイラストタッチなのに、
しっかり人体としてバランスが取れているし、違和感のある構図になっていない。
それをサラッとスッキリした線で描いている。
間違いなく余力を残した、あえて力を抜いたシンプルなタッチで。

作者のほかの作品──『さらい屋五葉』とか『リストランテ・パラディーゾ』とか、
あと『クマとインテリ』とか──を読むとわかるんだけど、
デフォルメの少ない、リアルちっくで写実的な絵柄の作品も多いです。
つまり、描こうと思えばそういう写実的な絵も描けるからこそ、
本作のような肩の力を抜いたデフォルメを効かせた絵が成功しているんでしょう。

肩ひじ張らずに読めるし、ビジュアルは素晴らしいし、
心にほんのりとした確かな心地よさを残してくれる1冊。おススメ。
ぺんぎん書房のやつのほうが先に出てますが、小学館版のほうが手に入りやすいです。