読めよぉー。(´;ω;`)

あとプレイしたり、観たりしろよ。アメコミ翻訳はじめました。

おひっこし

いやあ、いつの間にか『無限の住人』が完結してて、おじさん驚愕。
ちゃんと買い直すべきなのかしらね。

それとは関係なしに、いや関係なくはないけど、沙村広明の短編より『おひっこし』です。

いきなり話ソレル(ディアナ)んだけどさ、世に漫画のジャンルはいろいろありますが、
“大学漫画”ってのがあることを、みんな認識すべきだと思うんだよね。
古いとこだと『動物のお医者さん』とか『バイトくん』とかも大学が舞台だ。

中学生の自意識過剰さは卒業し、高校生らしいカッコつけも体験済みでありながら、
まだあと一歩だけ大人になっていない・大人になりきれない、
だけどもみんな大人になろうとしているギリギリタイトロープな大学生というお年頃。

そんな要素をどこかしら感じさせるのが、ワタクシの定義する大学漫画です。

で、この『おひっこし』も大学漫画のひとつ。
2000~2001年にかけて、アフタヌーン増刊にて全4回にわたって連載された中編で、
作者の出身校である多摩美術大学(たぶん)を舞台としています。

性格はいたってまともだし、別段変な趣味もないけれど、
恋愛に対していまいち押しが足りない男子学生、遠野禎(とおの さち)と、
そんな彼に好かれつつも飄々と勝手気ままに生きる自律型女子の赤木先輩。
遠野のことを想いつつも、素直になれない幼なじみの小早川、
遠野の友人であり小早川と付き合っている木戸といった面々が、
大学生らしいモラトリアムな青春日記を繰り広げる、とゆーのが大まかなストーリー。

青春といっても、そこはやっぱり作者が沙村広明ですから、
読者が“ある程度わかっている”人向けであることは折り込み済み。

ちょっとひねくれた(照れ隠し的な?)小ネタやパロディが随所に挿入されます。
女神転生とか平田弘史とか『頭文字D』とか、話田家(小田扉の)とか。
なのでそういう描き方を許容できない人には、面白さが半分くらいしか伝わらないはず。
コマ外に書きこまれたメタなツッコミも多いし。

だけども、そうしたギャグっぽさとは別に、
けっこう大事なことをサラッと入れ込んでくるあたりが本作のグッドなところ。
例えば、片思いの赤木先輩にプレゼント作戦を決行しようとする遠野と、
その作戦に対する友人・木戸の助言のシーン。

木戸「プレゼントォ!? アッホか。たいして親しくもない人間から
 いきなり物を送りつけられる身にもなってみ? 十中八九退かれるっての!」

遠野「そ…そお?」

木戸「大体そういうスタンドプレーが有効なのは元々モテるヤツだけなんだよ!
 オレらみてえのはそんな小手先に走らねえで、
 地道に会う時間をふやしてくしかねーのよ」

遠野「……つまり具体的には?」

木戸「連れ出せ!」

遠野「──デートか」

木戸「そうよ」

遠野(しかし確かにそうだ──
 いつだってベストな答えは一番シンプルな方法の中にあるのかもしれないな──)

世の中には星の数ほど恋愛指南書やモテ講座があふれ返っていますが、
こういうごく当たり前のことが、学生時代には案外気づけなかったりします。

とゆーよりもむしろ、学生時代のことを「あのときこうしていれば~」と後悔しちゃうのは、
その当時、ごく単純なことができなかったためだったりするんですよ。
「声をかける」とか、「遊びに誘う」とか、「告白する」とか、「ビビらない」とか!

よくよく考えれば、そんな当たり前のことを当たり前に実行できるようになることが、
実は大人になるってことなのかもしらん。
変な例えだけど、“絵を描いて告白の代わりにしてみました”とか、
“自作の曲を歌って愛のメッセージ”とか、“学園祭で全校生徒の前で告白”とか
結局それはそのシチュエーションの奇抜さそのものの威を借りているだけであって。
いや、そりゃ実際にやるとなったらスゴイことだと思うけど、
相手からしてみれば、まあまず「退くわー」って感じかもしれないし。

ごくシンプルに考え、行動すること、思いを表現すること、
つまり素直になることが恋だの愛だのには必要なんじゃねーのか? 
ということを伝えていると思います、本作は。俺はそのように読みました。

ただまあ、こんな風に紹介してしまいましたが、読んでてぜんぜん説教くさくないし、
声に出して読みたい頭悪い(ホメ言葉)セリフも多いので、笑えます。

「この世のどこかにあるという回転しないスシ屋」、
「『アタシって天の邪鬼だから』とか言いたがるタイプのどこにでもいるオタクの女子高生」、
「『デス』とか『グラインド』とか冠詞に付かないジャンル」、
「暑さのあまり赤の他人に!!」、
「嫌いなモノは『お前のような女』です」、
「デート中 男に泣かれるという超うざったいシチュエーション」などは
一時期ボクの中でもヒットしたグッとくるフレーズでした。

ハチクロ』にピンとこなかった人や、『のだめ』ほどがんばれなかった人、
かといって『げんしけん』はちょっと……という人に、ぜひ読んでほしい1冊。
まあぶっちゃけて言えば、シャイで世に対して斜めに構えてしまう人や、
ちょっとだけ大学デビューをミスってメインストリームから外れた人におススメ。

なお表題作のほか、マジだかギャグだかわかんない『涙のランチョン日記』、
楽屋感のありすぎる作者の京都旅行記8P漫画も収録。読めよぉー。