寄生獣

はいはーい。そろそろ作品紹介という、このブログの本筋に戻りますよ。このままだと放置しそうだ。放置プレイでええやん。えーっと、前回でちらっと話した『寄生獣』、いきましょうか。

寄生獣』、いいよね。名作だよね。どこがどう名作か、物語の面白さなんかは、もうさんざん語り尽くされてるだろうから、個人的に「おっ!」と思った部分だけ語ります。あらすじとかはWikipediaで調べてくれ、それくらい有名作なんだべな。

でも、これが例えば今の少年誌に連載されてたらどうだったか? 十中八九、名作にはならなかったと思う。面白いマンガにはなっただろうと思うけど、後世に語り継がれるような名作にはならなかったんじゃないか?

 

順を追って説明。

 

読めばわかるんだけど、『寄生獣』における“パラサイト”のアイデアって、あくまでの作品の小道具でしかないんだよね。「人間を捕食するために人間に寄生し、宿主を乗っ取る。しかもキモイ」ってのは、確かに日本のSFマンガ史的に見てもユニークだし、画期的だとおもうけど、それでも本作の中でメインに語られる要素ではない。実際、パラサイトたちを、「人間を捕食し、しゃべるスーパードッグ」に置き換えても、作品としてはそこそこ成立すると思うし、テーマ性もそこまでズレないはず。

じゃあ何がメインの要素かって言うと、それはやっぱり物語でしょう。新一とミギーの関係性、“天敵”を見つけてしまった人間たちの右往左往、パラサイトたちが見せる独特の死生観などなど。

 

で、話は戻るけど、なぜ今の少年誌に連載されていたら名作になりえなかったか?

 

理由は2つ。

1つ。仮に『寄生獣』が現在の少年誌に連載されていたら、“設定”が物語を隷属させていたはず。つまり、上記のような、“設定はあくまで小道具”という姿勢が崩れ、パラサイトの性質や謎といった要素にひっぱられる形で物語が進行しただろう。

例えば、パラサイトの繁殖が可能に!? とか、人間の意識を残したパラサイトとか、あるいは特定条件下で強化されるスーパー・パラサイトとか、そういう設定ありきの物語進行になった可能性が極めて高い。

HUNTER×HUNTER』みたいな、もっと分かりやすく言えば、TVゲーム化されうる漫画になったはず。(ハンタがつまらんとは言わんけどさ)そうなったら、それはもう『寄生獣』ではないし、『寄生獣』らしさもない。

 

で、もう1つ。仮に『寄生獣』が現在の少年誌に連載されていたら、本作のストーリーは、もっと壮大かつ長大な内容になっていたはず。例えば軍隊によるパラサイト部隊とか、海外のパラサイトたちとの抗争とか、はたまたパラサイトは実は宇宙からやってきた地球外生命体だった! とか、そっち方向へ進展していった可能性が極めて高い。

 

要するに、物語を終わらせないよう、終わらせないように動いたであろう。

 

でも、『寄生獣』は、そうはならなかった。この作品ががマジでスゲーのは、どこまでいっても基本的には“新一とミギーの戦い”であり、“個人のドラマ”の範囲内を出ないという点です。個人の・個人による・個人がどうにかする物語であるという、その一点。

 

まーひと言でいやあ。自分や他者の生命について、等身大で考える物語だわな。読者を置いてけぼりにせず、最後まで“自分だったらどうする?”と問いかけさせることに成功している。そこからぶれないように、ぶれないように描ききったのがスゴイ。

 

ここも失われてはいけない『寄生獣』らしさであり、失われてしまっては『寄生獣』とはいえない。悪い意味でハリウッド的なSF物語にすぎん。

 

ちゅーわけで、ボク様が『寄生獣』を読んで「おっ!」と思ったのは、

①設定があくまでも物語を彩る小道具に過ぎないということ

②物語が壮大化せず、個人の物語として貫かれているということ

この2つです。

謎が謎を呼ぶユニークな設定をもっとガンガン突っ込んで、世界を巻き込むくらいのSFアクション巨編としてストーリーを拡大させれば、もっと今風に、今の人々にウケるように描くこともできたと思う。連載中からアニメ化、ゲーム化、実写映画化もされたでしょう。

でも、奇抜な設定や壮大でビッグな物語には、必ず賞味期限がある。そして賞味期限を迎えた作品は、一過性のヒットで終わってしまう。だから作者の岩明均は、そのように描かなかった。

パラサイトやその特徴については、あくまでも物語の彩りにとどめ、“新一とミギー”による等身大の視点を大事にした。だから現在まで読み継がれている普遍的な名作として、その名を確立しているのよ。本当はこういう作品こそ、少年誌に掲載されてほしいと思うんだけどね。キャラで引っ張る作品、奇抜な設定で引っ張る作品ばっかりでつまんないよ。

と、愚痴ったところでどうしようもないか。名作です。10つ星。読めよぉー。 

寄生獣(1) (アフタヌーンコミックス)

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