のはらのはらの

こんな僕でも恋愛漫画くらい読みます。BLくらい読みます。

と、ゆーわけでー、雁須磨子作品、2回目。

『のはらのはらの』。タイトルにあんまり深い意味はないと思います。
音みてーなタイトルだな。カリスマ作品はこういうの多い。

遅刻で・バス停で・熱中症で気絶寸前になってしまった
高校1年生男子の西戸崎(さいとざき)くん。

ピンチを救ってくれたのは、女性ものの日傘をさした
野球部所属の2年生男子・糸島(いとしま)先輩でございました。

それ以来、西戸崎くんは糸島先輩が気になってしかたない。

先輩は特段、美少年というわけでも、男前というわけでもないけれど、
その何気ないしぐさや口ぶりが気になって、胸がドキドキして、
どうでもいいことばかり考えてしまう。この気持ちは何なんだ──?

いちおうBL漫画に分類されるんでしょうが、いかにもなBLっぽさとは無縁。
耽美な感じとか、退廃な感じとか、
ゲイだとかバイだとかノンケだとか、あるいは攻めだとか受けだとか、
そういうBL漫画につきもの(とされている)要素が見当たらない。

また、襲ったり襲われたり、あるいは恋のライバルが現れたりといった
ショック強めのドラマチックな展開もありません。
ふつーの恋愛漫画を淡々と描いたら、たまたまBLになった、みたいな印象。

じゃあどこらへんが面白いのか、この説明がすごく難しい。
というか雁須磨子の漫画は、どれも面白さを説明するのが難しい。

でもさ、あるじゃん。
誰かを好きになったときの、あの“何も手に付かない”感じ。
それがよく描かれていて、読んでてドキドキする。

西戸崎が「これは恋だ!」と目覚める瞬間、
糸島先輩が「男と男ってどうなんだろう」と気づく瞬間、
2人がやっと恋人らしい恋人として歩きだす瞬間。
そのどれもがハッとするほど鮮やかで、見守りたくなるほど初々しい。

特にト書きや心象のセリフの出し方が秀逸で、
2人の高校生男子が感じている恋のモヤモヤを存分に堪能できます。
西戸崎と糸島先輩、2人の感情の機微の描写がとてもうまい。

「誰かを好きになる 自分が この俺が
いや この俺なんて たいそうなもんでもないけど 
きゅんとする
ああ なりふりかまわず 身も世もないほど。」

散文的で、心に浮かんだ気持ちをそのまま連ねたような言葉遣いだけど、
だからこそシンプルで・何度も読み返したいと思ってしまう。
この漫画、本当に読み返し性が高い。もう20回くらい読んだ。

恋のトキメキを味わいたい人や、
良質な恋愛漫画を探している人にオススメ。
BLらしさは非常に薄いので、男性でも読めまっせ。