トウモロコシ畑の子供たち
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書籍媒体であれば小説でも漫画でもホラージャンルは好きなんだけど、
なぜかスティーブン・キングって読んでなかった。
いや、すげえ多作だし、今さらビートルズ聴くような感じがして。
でもたまたま古本屋で短編集を見かけたので、手にとって見たわけさ。
というわけで、はい、今回はキングの『トウモロコシ畑の子供たち』。
1970年代後半に発表された著者の短編集を集めた1冊。
ジャンルも雰囲気も読後感も多彩。バラエティに富んでます。
表題作である『トウモロコシ畑の子供たち』は、
子供たちの信奉する奇怪な宗教が支配する田舎町に
迷い込んでしまった中年夫婦の恐怖を描く中編。
後半の畳みかけるようなスリリングな展開と、
キリスト教とかそこらへんの知識があったほうが楽しめる気がする。
そのほか……。
ビルの最上階のふちを1周できるかどうか──。
危険で破滅的な賭けに挑む男の心理描写が秀逸な『超高層ビルの恐怖』
決してイケメンでも何でもないが、
自分の心にピッタリと寄り添ってくれる男性。
彼には、ある秘密があった。『キャンパスの悪夢』。
何度も禁煙に失敗している男。
禁煙を成功させる“画期的な方法”とは? 『喫煙挫折者救済有限会社』。
とある男の、とある殺人。
オチの気持ち悪さが際立つ『花を愛した男』
吹雪の夜、さびれた村、まことしやかに言い伝えられる呪い。
闇夜に展開される男達の恐怖を描く『<ジェルサレムズ・ロット>の怪』。
死と隣り合わせで寝たきりとなっている母親。
彼女にどうしてやることもできず無力感にさいなまれている主人公の
心の葛藤と現代的な苦悩を描いた『312号室の女』。
……など全10編。
その他、読後感がじんわり怖い『バネ足ジャック』や
『花を愛した男』なども収録されてます。
初めてキングを読んだのですが、
どれも情景描写がしっかり整理されてて、どの作品も大変読みやすい。
19世紀末~20世紀初頭にかけての幻想恐怖系作品と比べると、
まるで日本語小説のような読みやすさがあります、はい。
だからといって、決して軽く読み捨ててしまえるようなものではなく、
ホラー作品としての完成度はどれも一定水準以上の高さがある。
心のどこかにトゲを残すような“もの悲しさ”を感じる作品もあり、
またあるいは、どこか冷笑的なブラックユーモアを感じる作品もある。
単なる読み捨ての小説ではないなと思わせる、そんな1冊です。
この短編集でキング自体の面白さはわかったので、
また別の短編集か、長編にもチャレンジしてみたいところ。
でも作品が多くてどれから読めばいいのやらって感じなんだよなー。