Fables vol.2 "Animal Farm" (翻訳その4)

※『Fables』は、おとぎ話を題材にしたアメコミです。悪の勢力によって、おとぎ話の世界“ホームランド”から追放されたさまざまなキャラクターたちが、現実世界で素性を隠しながら生活しています。キャラクターたちは自らをフェイブルズと称しています。

【前回からの続き。話し合う2人と3匹たち】

スノウ「2人とも馬鹿げてるわ。ファームは監獄なんかじゃない。繁栄している素晴らしいフェイブルズのコミュニティーじゃないの。私たちの歳入1ドル当たり90セントを、この地の存続のために費やしているのよ、ポージー」

ポージー「その千倍も費やせば、あらゆるタイプの贅沢に没頭することができるし、この場所は遊び人の楽園になるでしょうな。それでも監獄であることは違いない、なぜなら私たちはこの地を離れることが許されないからです!」

ダン「それにフェイブルズにとって、その一生はあまりに長い。最低でも数世紀はあるし、千年以上もある者もいる」

スノウ「オーケー、わかった。言わんとしていることは理解できたと思うわ。でもダン、具体的な計画はあるの?」

ダン「まだ計画していませんが、あなたの法と決まりに照らせば、いささか暴力的なものになるでしょうな」

スノウ「私の法じゃないわ、私たちフェイブルズの法よ。私たちの安全を守るためにあるの」

ポージー「これまでのところ、我々は一般方針について話しただけで、具体的な戦略は話していませんよ」

スノウ「ほっとしたわ。さて、もう遅いからローズと私は寝るわね。朝は起きられるから」

【スノウとローズ、立ち上がり玄関へと向かう】

コリン「もう寝るのかい、夜は長いよ、お嬢さんたち」

ポージー「よいお休みを。ゲストルームは準備してあります」

【家の玄関で振り返るスノウ】

スノウ「ありがとう、ポージー。おやすみなさい。ああ、ひとつ忘れてたわ。ウェイランド・スミスはどこ?」

ダン「いなくなったんだ」

ポージー「代表を辞任してね」

ダン「突然にさ。みんな驚いたよ」

スノウ「でしょうね。さて、その他の話し合うべきことは明日にしましょう。ローズ、行くわよ」

【3匹の家を後にして、ゲストルームまで歩く2人】

ローズ「残りの話し合うことって? ウェイランド・スミスって誰よ?」

スノウ「この地で私と同じ立場にいる人物よ。ファームを管理している人──あるいは管理していた人ね、どうやら」

【スノウ、不機嫌そうな顔で言う】

スノウ「ローズ、これだけは知っておいて。あなたがあまりにもフェイブルズのコミュニティーについて知らないこと、知らないように見えてもいいと勝手に決めこんでいることについて、私はいよいよあきれつつあるわよ」

【2人を見送った3匹の子豚たち】

ダン「予定通りにうまくいったと思うが…」

ポージー「我々がまだ具体的なプランを立てていないと、スノウは信じたろうか?」

ダン「それはわからん。とはいっても、彼女は根拠を掴んでいないはずだ。“いつも正しく適切”のスノウ・ホワイトだからな、疑惑だけでうごくことはないだろう」

【コリンに詰め寄るダンとポージー】

ダン「では、お前と話を始めようか、コリン」

コリン「もう遅いぜ、ダン。まずはゆっくりお休みするべきじゃないか?」

ポージー「シティでのミッションはどうなった? 最優先の目的は完遂したのか?」

ダン「ウッドランド・ビジネスオフィスの合鍵は手に入れられたのか?」

※ウッドランド・ビジネスオフィスはスノウやビグビーの事務所があるビル。フェイブルズの運営本拠地。

コリン「いや、まだだ」

ポージー「俺たちのシンパはどれくらい見つかった? そのうちの誰かが協力してくれないのか?」

コリン「えっと、その…実はビグビーにヒモでつながれっぱなしだったんだ。だから、実際のところうまくいかなかったんだよ」

【場面転換。スノウとローズのゲストルーム】

ローズ「1つだけ? 同じベッドで寝なきゃなんないの?」

スノウ「ここでは大きい部屋は貴重なのよ。シングル以上のゲストルームを取っておく余裕はないんだわ。2人で寝るには十分な大きさなんだから落ち着きなさいよ。同じベッドで寝たことがないわけじゃないんだし」

【寝間着に着替えるスノウとローズ】

ローズ「子供のときの話でしょ。大きくなってからは女の子と寝る習慣なんてなくなったわ。毎年のジャックの誕生日のスペシャルプレゼントのとき以外はね」

※遊び好きのローズのことだから、はめを外すときもあったのかもしれない。

スノウ「あなたの個人的な生活の汚らわしい詳細なんて、勘弁してよ」

ローズ「落ち着いてよ、何もしないわ。仮に近親相姦できたとしても、姉さんはわたしのタイプじゃないもの」

スノウ「嫌がらせのつもり?」

スノウ「半年ごとの管理義務があるとはいえ、今回の旅の理由は私とあなたが仕事できるようにするためのものなのよ」

【ローズはさっさとベッドに入っている】

ローズ「どうでもいいわよ」

スノウ「子どものとき、どうして私たちはあんなに親しく付き合うことができたのかしらね?」

【回想シーン。幼いスノウとローズが人形で遊んでいる】

幼いローズ「私たちいつでも親友よね」

幼いスノウ「もちろんよ、これからもずっとね」

スノウ「大人になってからお互いを目の敵にし合うっていうのに……」

【回想シーン。ローズがジャックの車に乗りながらスノウに中指を立てている】

ローズ「世界一クソつまんない姉貴ね!」

【ベッドに腰掛けて話すスノウ】

スノウ「いつからこんなに醜い関係になったのかしら」

ローズ「姉さんの旦那とベッドにいるのを見られたときからよ、覚えてる?」

※スノウの元夫であるプリンス・チャーミングは、かつてローズと不倫したことがある。スノウとプリンスはそれが原因で離婚した。

スノウ「ええ、覚えてるわ。でもその前から悪化していた気がするのよ」

ローズ「ねえ、4つだけ言わせて。1、もう黙って。2、電気を消して。3、寝られるようにカーテンを閉めて。4、マジで黙って」

【スノウ、カーテンを閉めるために窓に近づくが、外に何かを見つける】

スノウ「いいわ、もうおしまい…ねえ、あれ何?」

ローズ「何が?」

スノウ「あれよ、外のトラックのそばにあるもの」

スノウ「ああまさか! 何が起きてるの!?」

ローズ「何がどうなって…ウソでしょ!」

【窓から外にあるものを見下ろす2人】

スノウ「何なのよ、ローズ! あれは何なの!?」

【トラックの前にあるのは、切り取られたコリンの生首だった。その首は、地面に突き刺さっている木の棒の上に、さらし首のように乗せられている】

ローズ「コリンだわ、ひどいことを…。何かのサインなのかもしれない。誰かが私たちに明確なメッセージを送っているようね」