Fables vol.2 "Animal Farm" (翻訳その8)
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Bill Willingham
Vertigo
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※『Fables』は、おとぎ話を題材にしたアメコミです。悪の勢力によって、おとぎ話の世界“ホームランド”から追放されたさまざまなキャラクターたちが、現実世界で素性を隠しながら生活しています。キャラクターたちは自らをフェイブルズと称しています。
【夜、ファームの森で住民たちが集まっている。多くは動物系のフェイブルズ。ゴルディが指揮を執ってレイナードの捜索を行っている】
ゴルディ「広がってひと暴れといきましょう。ブレア・ラビット、あなたのグループはこの道を。ブレア・ベア、あなたたちは方向転換して反対側へ。古典的な挟み撃ちで捕まえられるはずよ。基本戦術ね」
ブレア・ラビット、ブレア・ベアは、ジョーエル・チャンドラー・ハリス著『リーマスおじさん(Uncle Remus)』(ディズニー映画での題は『南部の唄』)に登場するウサギとクマ。
ゴルディ「レイナードをこの道まで連れ戻すわ。開けた場所ならあいつを撃てる」
ポージー「ダンはこのやり方を好かんだろうな、ゴルディ。もしコリンの頭をさらし首にしていないと主張するのなら…」
ゴルディ「起きたことは起きたこと。覆水盆に返らずよ」
ゴルディ「あなたとダンはファームの政治を担っている。それはいいわ。でも父クマと母クマがファームで最強の捕食動物である限り…そして私が彼らの手綱を握っている限り、私こそがこの革命の推進力なのよ」
※ゴルディは3匹のクマたちを手なずけている(と考えている)ようだ。
ゴルディ「今では革命の進行予定も私の手の内にあるわ」
ポージー「だがまだ準備ができていない! ようやく武器の改造が始まった段階だ。それが終わるまではホームランドへの侵攻もありえん!」
ゴルディ「侵攻なんてかまやしない。私は、ホームランド奪還にはみじんも興味ないの」
ポージー「ならこれは何のためだ? なぜ我々をサポートする?」
ゴルディ「だって、あんたたち全員がドン・キホーテみたいに奪還作戦に向かうとき、誰かがフェイブルタウンとそのコミュニティーの両方を統治する役割を負わなきゃならないでしょ」
ポージー「その“誰か”が自分だと?」
ゴルディ「他に見合った人がいる? さあ、これは大人の会話よ。あなたたち2人にできることはないでしょ。あっちへ行って木立のあたりを見てきて」
【子グマと小鬼をよそへ追いやるゴルディ】
子グマ「ゴルディは自分が全能だと思ってら…。あいつをすり鉢に入れてやることができたら…」
小鬼「だな。が、まずはガチョウたちを落ち着かせるのが先のようだ」
【鳥たちが夜空を舞っている】
タカ「ヤツをこのあたりで見たぞ、マジだぜ」
別のタカ「その前に視力検査に行ったほうがいいぜ、マジで」
【森の中でも動物たちがレイナードを探している】
キング・ルーイ「カー、見つけたか?」
カー「まだだ、キング・ルーイ。といっても、俺のとぐろに巻かれるのは時間の問題だと思うが」
※キング・ルーイは『ジャングル・ブック』に登場するオランウータン。森のサルたちを治めるリーダー。カーも『ジャングル・ブック』に登場する大きなニシキヘビ。
キング・ルーイ「バンダーログたち全員に森を探し回らせているところだ。あんたが最初にレイナードを見つけるというのなら、よほど賢く立ち回るんだろうな」
※バンダーログは『ジャングル・ブック』に登場するサルたち。キング・ルーイをリーダーとしている。
【黒ヒョウが木から木へとわたり歩きながら、そこらの匂いを嗅いでいる。そこへ巨大なベンガルトラがやってくる】
バゲーラ「シア・カーン」
シア・カーン「バゲーラか」
※バゲーラは黒ヒョウ。シア・カーンはベンガルトラ。ともに『ジャングル・ブック』に登場する。シア・カーンは『ジャングル・ブック』におけるヴィラン。
バゲーラ「首尾は?」
シア・カーン「ほんの少し前に奴の匂いを嗅いだ。間違いない」
【そう話す2匹の後ろを、レイナードがこっそり通り抜けていく】
バゲーラ「この一帯を探す手伝いをしてやろうか?」
シア・カーン「王が農民とテーブルを分け合うものかよ。あっちへ行ってな、チビの黒ヒョウが」
【2匹を避けて森の中を駆けるレイナード。しかしそこへバゲーラが登場】
レイナード「おわっ!」
バゲーラ「後ろにいたことに気づかないとでも思ったか?」
バゲーラ「王様ぶったシア・カーンに目にもの見せてやるぜ」
【逃げ回るレイナード】
レイナード「お母ちゃん!」
バゲーラ「逃げるな、戻ってこい!」
【シア・カーンのすぐそばを走り抜けるレイナード】
レイナード「横から失礼。気にしないで!」
シア・カーン「グルゥオオ!」
【唸り声を上げるシア・カーン。レイナードを追いかけてきたバゲーラは、勢い余ってシア・カーンの背中に飛びかかってしまう】
シア・カーン「やる気か!?」
【逆上したシア・カーン、バゲーラの顔を爪で切り裂く。その隙に逃げ去るレイナード】
レイナード「簡単すぎるぜ」
【場面転換。ファーム内のとある家、中には老婆と子供たちがいる。ファームで数少ない人間型のフェイブルズと思われる】
老婆「さあ、お集まりな、子供たち。栄光の日がついに来た。召集がかけられたよ。銃を取りな!」
集まった子供たち「やった!」「クール!」「いよいよだね!」
【子供たちは声を上げて銃火器を手にする。彼らも革命派のようだ】
少年「ロックンロールの時間だぜ!」
少年「支配者どものケツに銃弾を撃ち込んでやろう!」
少女「テフロンコート弾をちょろまかしたのは誰? 白状なさい」
少年「日曜学校用のかばんに入れただろ、忘れたのかよ」
【場面転換。ゲストハウスにいるスノウ。ベッドに腰掛けている】
スノウ「いったい何がどうなってるのよ」
スノウ「みんなおかしくなったんじゃないの。まともな人なんていやしない」
【その時、窓をコンコンと叩く音が】
スノウ「えっ?」
レイナード「スノウ、中に入れて! 早く!」
スノウ「レイナードじゃない。窓の外で何をこそこそしてるのよ」
レイナード「急いで、誰かに見られる前に。ここから出る必要がありますよ、お嬢さん。この場所はもう安全じゃない」
ローズ「ローズも同じようなわけのわからないことを言っていたわ。何がどうなってるの?」
レイナード「時間がありません。ここから動き出すか、敗北するかです。我々の中にもあなたに忠実なものが数名います。あなたを彼らの元につれていかなければならない。連中どもが私を狩り出して、あなたを処分してしまう前に、です。荷物は何も持たないで。ここに戻ってくるように見せかけましょう」