Fables vol.2 "Animal Farm" (翻訳その9)

※『Fables』は、おとぎ話を題材にしたアメコミです。悪の勢力によって、おとぎ話の世界“ホームランド”から追放されたさまざまなキャラクターたちが、現実世界で素性を隠しながら生活しています。キャラクターたちは自らをフェイブルズと称しています。

<チャプター3: ザ・パイレーツ・オブ・アップステイト・ニューヨーク>

【武器庫で装備を整えるローズ。ハンドガン、リボルバー、サーベル、さらに海賊のようなバンダナまで巻いている】

ダン「必要なものは持ちましたか、ミス・レッド?」

ローズ「こうでなくっちゃね、行きましょう」

ネズミ「映画の撮影でも始まるの?」

【場面転換。レイナードを見つけるために、夜通しで山狩りをしていたゴルディとファームのメンバーたち。時間はすでに朝になっている。集まって話すゴルディたち】

母クマ「事実を認めましょうか、子供たち。レイナードは我々の捜査網から逃げおおせたのだわ」

ゴルディ「だから? 遠くまでは行けないわ。どこへ行くと思う?」

子グマ「昨日僕らがやっていたことを、非革命派の誰かに警告しに行くんだろう」

ゴルディ「問題は、私たちを止められるフェイブルは、シティにしかいないってことよ。そしてファームとシティの連絡はすでに絶たれている。レイナードが実行しようとしていることと、そのやり方は何かしら」

父クマ「わからんが、鳥のフェイブルらにメッセージを託すことはできただろうな。そのことは考えてあるかい?」

ゴルディ「実はすでに考えてたのよ。だから彼らを呼んだの」

【ゴルディ、フクロウやタカといった鳥たちに命じる】

ゴルディ「よく聞きなさい、同志たち。完全な制空権を確立する必要があるの。完璧な監獄状態よ。誰も出られず、入れない」

フクロウ「承知した」

ゴルディ「ファームから出ていこうとしている飛行系のフェイブルは、誰であってもすべて消すのよ」

フクロウ「任せよ」

【鳥たちは羽ばたいてその場を後にする】

母クマ「本当にそこまでやる必要が? 私たちの革命はファームをもっと監獄みたいにし始めているようだけど? 裁判もなしに殺すなんて…」

ゴルディ「怖気づかないで、マミーベア。見せしめの裁判でよければ革命が終わるまでにいくらでもできるわ。でも、その間は『卵を割らなければオムレツは作れない』という金言を忘れないでもらいたいわね」

【厳しい表情で言うゴルディ】

ポージー「もういいだろ、ゴルディ。みんな長時間探索して疲れている。非難合戦も揚げ足取りも、後からいくらでもできる」

ポージー「レイナードの探索は続行しつつ、ハンターたちはローテーションで休むこと。それならみんなしばらく眠れるだろうさ」

【場面転換。上空を飛ぶタカの姿を目にしたレイナード】

レイナード「なるほど、狩りは続行か」

レイナード「気を付けてスノウ、タカが上空を巡回中だ。木陰の下にいる限りは安全なはず」

【夜通しで逃げ続けたスノウはあくびをしながら言う】

スノウ「よかった。髪をとかして眠れる場所がどこかにあれば最高なんだけど」

レイナード「それはまだできません、可愛い人よ。木立の中にも我々を探している者たちがいます」

スノウ「“可愛い人”?」

レイナード「ライオンやら虎やらクマなんかから、身を守るために火器を携帯していてほしいのですが…おっと口がすべった」

スノウ「可愛い人って言った?」

レイナード「シーッ、静かに。殺されたいんですか!『私たちを食べに来て!』と言ってるようなものですよ」

スノウ「いつから可愛い人なんて呼ぶようになったわけ?」

レイナード「どんな馬鹿者だってあなたが美人であることは理解できるでしょうし、あなたをキツネだと見なすよりは適当だと思いますが。それとご承知願いたいですが、私はまだ異性と“ねんごろに”なっていませんよ。希望はしていますがね」

スノウ「私に見せたいものがあってここまで連れてきたんでしょ、それを見せなさい。私のブーツがあなたの無遠慮な尻を蹴り上げる前にね」

レイナード「いいでしょう。こちらですよ、陛下」

【場面転換。森の中でレイナードたちを探すシア・カーン、子グマ、武装した子供たち。鳥たちも上空を警戒中。そのうちの一羽が森の中を飛ぶコマドリを見つけ、襲い掛かる】

フクロウ「何があった?」

タカ「どう見える?」

フクロウ「コマドリが死んだ」

タカ「ンむむ…」

コマドリ(クックロビン)の肉をついばむタカ】