Fables vol.2 "Animal Farm" (翻訳その10)

※『Fables』は、おとぎ話を題材にしたアメコミです。悪の勢力によって、おとぎ話の世界“ホームランド”から追放されたさまざまなキャラクターたちが、現実世界で素性を隠しながら生活しています。キャラクターたちは自らをフェイブルズと称しています。

【前回から引き続き。森を抜け、スノウを安全な場所まで案内するレイナード】

レイナード「単なる希望ですが、山狩り中の鳥たちはこのあたり――ファームの土地の内部までは来ていないでしょう。私たちが逃げると思って境界付近を探すはずです。さて話の続きですが、記念集会の日以来、みんなはあなたとビグビーがデキてると思いました」

スノウ「デキてない!!」

レイナード「シーッ! 我々は逃亡中の身ですよ、忘れたんですか」

レイナード「まあ、話を元に戻します。ビグビーはフェイブルズの治安担当です。あなたがビグビーに夢中なんだとすれば、あなたと仲良くしておくことで私の“洗練度”も上がります。遅かれ早かれ都会へ出られるようにしてくれるでしょう」

スノウ「2ついいかしら。ひとつ、“洗練度”なんて言葉はない。ひとつ、遅かれ早かれなのは、私があなたを絞め殺しちゃうことよ」

レイナード「なるほど、でしょうな」

【レイナード、駆け出して地面を指す】

レイナード「ここです、見てください。昨晩逃げ回っているときに見つけた物です」

スノウ「ようやくね。何、これは?」

【スノウが持ち上げたものは、頭頂部に拳銃が固定されたヘルメット】

レイナード「銃です。四足獣タイプのフェイブルズ向けに改造されたものでしょう。私が思うに、それは部隊ごとの装備体制が存在することを示しています。戦場で持ち運びしやすくするようにカメさんの背中にそれをくくりつけて、ウサギさんが指揮を執るんでしょうな」

スノウ「でもどうして…」

レイナード「言うまでもなく戦争のためでしょう、プリンセス」

【そのとき、2人の背後からシア・カーンが忍び寄る。】

シア・カーン「おしゃべりしていろ、美味しいエサども。近づくんだ、もっと近くに…」

スノウ「彼らは何考えてるのよ!」

レイナード「ファームに縛られ続けて生きるよりは、栄光ある戦いのうちに…クンクン…戦いのうちに…クンクン……」

【においでシア・カーンの接近に気付いたレイナード】

レイナード「聞いてください、スノウ。あの小山を超えて、巨人たちが眠る谷を下っていくんです。そのあとまた小山を超えたところにある洞穴を探してください。見逃すことはないはずです」

スノウ「何のこと?」

レイナード「ちょっとしたトラブルです、虎だけに…クソッ」

【スノウに襲い掛かるシア・カーン】

スノウ「うっそでしょ!」

レイナード「走って! シア・カーンの注意を引きつけている間に! 運が良ければまた会いましょう」

【レイナード、シア・カーンの背後に回って注意を引きつけようとする】

レイナード「こっちだ、こっち! おいデカブツ、こっちを見ろって!」

【シア・カーンの尻尾に噛みつくレイナード】

シア・カーン「ぎゃっ! やる気か!?

【その間、スノウは岩肌をよじ登って小高い丘を越えていく。息も絶え絶えだが、ようやく登り切って、その向こうにある大きな谷を見下ろす】

スノウ「なんとまあ…」

【そこには谷を埋め尽くすほど大きな3人の巨人と、それと同じくらい大きなドラゴンが眠っている】

スノウ「忘れてたわ…ハアハア…いつ見ても…ハアハア……息を…息を飲む光景ね…」