Fables vol.2 "Animal Farm" (翻訳その11)
|
Bill Willingham
Vertigo
|
※『Fables』は、おとぎ話を題材にしたアメコミです。悪の勢力によって、おとぎ話の世界“ホームランド”から追放されたさまざまなキャラクターたちが、現実世界で素性を隠しながら生活しています。キャラクターたちは自らをフェイブルズと称しています。
【都市にあるフェイブルズの事務所、作業しているビグビーのもとにブルーボーイが飛び込んでくる】
<ちょうどその頃、シティでは…>
ブルーボーイ「なんてっこた」
ブルーボーイ「ビグビー、電話線が切れてる! 彼女たちが事件に巻き込まれた、コマドリが死んだ!」
ビグビー「赤ん坊くらいに何言ってるか分からんぞ。落ち着け、呼吸を整えろ、ブルー。イチから話せ」
ブルーボーイ「オーケー。ファームとこの事務所を繋ぐ直通回線が落ちてる」
ビグビー「だから? よくあることだろ。」
ブルーボーイ「そうだよ。でも昨日フォースウォーン・ナイトが予言していたことが気になって。スノウとローズが何か切迫した危険に巻き込まれるんじゃないかって」
※翻訳その7を参照。
ブルーボーイ「だから、心を落ち着かせようと思って電話したんだ。でも回線が切れてた」
ビグビー「普通なら、メッセージ・バードを使わなきゃならんな」
ブルーボーイ「うん、それが次に取った手段だよ。コマドリは次の便に備えていたし、彼はこういうときに信頼できるからね。だけど彼も死んでしまった! 今朝、ファームから出ようとしたその瞬間に殺されてしまったんだ」
ビグビー「どうやってそれを知った?」
ブルーボーイ「コマドリが発つ前に、黒の森の魔女に監視を頼んだんだ」
※都市部のフェイブルたちの中には魔女も存在する。そういう魔法能力を持っていると予想される。
ビグビー「正気か? お前にそんな予算を費やす権限はないぞ!」
※フェイブルズたちは一般人たちから魔法を極力隠そうとしている。魔法を使用させる際には、高い費用が要求されるのかもしれない。
ブルーボーイ「心配だったし、わかってもらえると思ったんだよ。何か悪いことがあそこで起きてる!」
ビグビー「いいだろう、ブルーボーイ。納得できた。しかし俺はここの管理がある。お前がトラブルの首謀者を検挙できるように手助けしてやる」
ブルーボーイ「ようやく話が通じたね!」
<その直後、遠く離れた場所では…>
【場面転換。前回から引き続き、巨人とドラゴンの眠る谷を経て、小高い岩山を上っているスノウ。しかしそのとき…】
シア・カーン「本気で逃げられるとでも思ったのか、チビの人間め」
スノウ「シア・カーン!」
【スノウのすぐ下にまでシア・カーンが迫っていた】
シア・カーン「ひと口分にしかなりそうもない貧相な足で、俺から逃げられるとでも?」
スノウ「ああ、神様!」
シア・カーン「正直なところ、もう少しでお前のあとを見失うところだったぞ。小便で立ち止まるべきじゃなかったな」
※そういうシーンは描かれていないが…。
【スノウに飛びかかるシア・カーン】
シア・カーン「グルオオッ!」
スノウ「きゃあああっ!」
【スノウ、とっさに前回レイナードから見せてもらったヘルメットで、シア・カーンの鼻づらを殴りつける。鼻を押さえて岩山を転がり落ちるシア・カーン】
シア・カーン「痛っ、うっ、クソッ!」
スノウ「なにを…どうやったの?」
【そのまま転がり落ちていくかに見えたシア・カーンだが、途中で木の枝にひっかかった】
シア・カーン「あのクソアマ!」
【スノウ、ヘルメットに取り付けられている拳銃の弾丸を確認する】
スノウ「装填されてますように、装填されてますように! 神様お願い! ああ、なんでチェックしておこうと思わなかったのかしら」
【再び岩山を上り始めるシア・カーン。その顔は怒り狂っている】
シア・カーン「その骨、すり潰してやる!」
【岩場で腰を抜かしているスノウに、シア・カーンが再度襲い掛かる。が、拳銃が火を吹き、シア・カーンの肩に命中する。動きを止めたシア・カーンにスノウが銃口を向ける】
シア・カーン「マジかよ、冗談だろ?」
スノウ「食らえ、クソ野郎!」
【連射するスノウ。全弾がシア・カーンに命中し、彼は岩山を転がり落ちていった。スノウは泣きながら拳銃付きヘルメットを投げ捨て、岩場の陰で座り込む。日が落ちるまでの数時間、その場で泣き続けていたが…】
スノウ「泣き虫の女の子ね」
スノウ「ともかく進まないと…」
【岩山を上りスノウの耳に、カンカンという甲高い音が聴こえてくる】
スノウ「えっ?」
【登り切ったところに、レイナードの言う通り洞穴があった】
スノウ「誰かいるの?」
【洞穴の中に入っていくと、そこは炉と鍛冶場があった。壁には銃器やクロスボウなどがかけられている。ヒゲを生やした筋骨隆々の人間男性が金床で金属を叩いており、どれも彼が作ったもののようだ】
スノウ「驚いた…ウェイランド・スミス!」
ウェイランド「スノウ・ホワイト、君か? こんなところでお目にかかるとは。なぜこんなところへ?」
【ウェイランドの片足は、奴隷のように鎖で地面とつながれている】
スノウ「ここで何をしているのよ、誰がこんなことを? 何で誰にも告げずにファームを去ったの?」
ウェイランド「去った? 私が? どうして自分がこんなことをしているのか想像もできないけど、君が言うのなら…」
ローズ「囚人から離れるのよ、姉さん!
【そこへ現れたのはローズだった。その後ろにはダンやポージー、ゴルディなどファームの革命派メンバーが揃う】
スノウ「ローズ? 一体何を…」
ローズ「うまく私たちの追跡をかわしたものね。でも終わりよければすべて良しってところかしら」
ゴルディ「おしゃべりしないで、ローズ。やるべきことをやるのよ」
ローズ「スノウ・ホワイト、革命団の裁定に基づき、フェイブルたちに対する犯罪のかどであなたを拘束する」
【ローズ、腰に下げていた拳銃を抜き、スノウの顔に突きつける】