Fables vol.2 "Animal Farm" (翻訳その12)

※『Fables』は、おとぎ話を題材にしたアメコミです。悪の勢力によって、おとぎ話の世界“ホームランド”から追放されたさまざまなキャラクターたちが、現実世界で素性を隠しながら生活しています。キャラクターたちは自らをフェイブルズと称しています。

チャプター4:大空の将軍

【前回からの引き続き。ウェイランドと出会ったスノウだが、そこへファームの革命派とローズがやってきて、スノウを取り押さえようとする。ローズはスノウに銃を突きつける】

スノウ「ローズ? 何をするのよ!」

ローズ「フェイブルたちに対する罪であなたを逮捕するのよ」

ゴルディ「誰がこいつを逮捕するって言った? 敵は撃ちなさい!」

ローズ「それは取引と違うわよ、ゴルディロックス。あなたたちに加わる条件は、スノウを生かしておくことだったはず。少なくとも裁判まではね」

ゴルディ「今はもう裁判の時間がないのよ。それに生かしておけば、体制支持者のクソどものに妨害を許すことになる。そいつの頭に銃弾をぶち込めば、それで偉業を成し遂げられるわ」

ゴルディ「あなたにそれをやる覚悟がないなら、そこをどきなさい。私がやるわ」

ローズ「約束は約束よ、取引したでしょ」

【言い争う2人を、ダンが制する】

ダン「そうだ、取引した。まだ有効だ。だがゴルディの言い分も正しい。今、我々には時間がない」

ポージー「確かに。我々はまだファーム全体のコントロールを固めるまでには至っていない。シティのフェイブルタウンを掌握するには尚早すぎる」

ダン「スノウはここに鎖でつないでおけばいい。それなら、ウェイランド・スミスが武器の改造を終えるまで手伝いをさせることができる」

ポージー「素晴らしい妥協案だ、ダン。彼女に我らの革命の援助をさせるのか。彼女がよく働けば働くだけ、後々の話し合いでその事実を取引材料に持ち出すことができる」

ダン「みんなそれでいいな?」

【スノウの足首には鎖がつけられ、その一端は地面の杭につながれた。杭をハンマーで深々と地面に突き刺すウェイランド】

ゴルディ「杭は深く突き刺しなさい。また彼女が逃げ出したら、今度こそひどいことになるでしょうけど」

スノウ「ローズ、どうして彼らに加わったの?」

ローズ「どうして加わらないわけ? ファームの不平・不満には根拠があるわ。その不満を正すのは遅すぎたくらいよ。この革命は避けられないわ、スノウ。今回こそ、正義の側にいようと思ったのよ」

ゴルディ「よし、みんな移動するわよ。正午の労働者集会に向けて準備する必要があるわ」

【場面転換。ニューヨークの郊外】

<翌朝>

ブルーボーイ「行くぞ!」

【自動車に乗り、スノウとローズを救出に向かうブルーボーイたち。車内にはバフキン、プリンス・チャーミング、青髭も乗っている。クルマの窓には黒い遮光フィルムが貼られ、バフキンの姿は外から見えないようになっているようだ。バフキンは運転するブルーボーイに話しかけている】

バフキン「運転させて?」

ブルーボーイ「ダメだ」

バフキン「運転させて?」

ブルーボーイ「ダメだったら」

バフキン「運転させて?」

ブルーボーイ「黙ってて!」

バフキン「何でダメなの?」

ブルーボーイ「僕が運転してるから! お前はサルだから! 僕がダメだって言ってるから! このどれかだよ」

バフキン「でも俺はいい運転手だよ。みんなに聞いてみなって」

青髭「誰かこいつを黙らせられないのか」

ブルーボーイ「やっていいよ。撃ちたいならどうぞ」

青髭「うんざりするような救出作戦だと思ってたが、もう始まってるとはな」

【場面転換。再びウェイランドの洞穴へ。スノウは地面に敷かれたマットで寝ている】

ウェイランド「おはよう、眠れたかい?」

スノウ「ええ、たぶん。どれくらい寝てたかしら?」

ウェイランド「大体6時間だな。ここには時計がないから確実ではないけど」

【作業台で何かを作りながら答えるウェイランド】

スノウ「何が起きたのか、聞かせてもらってもいい?」

ウェイランド「話せることは少ないぞ。ある晩、農場の小屋で寝ていたら、鎖につながれ、武器の製造をやらされることになったんだ」

スノウ「やらされるって、どうやって?」

ウェイランド「俺の足首についている魔法の鎖のパワーで、さ。この鎖には俺を働かせる強制力と、俺の逃げる気力を妨げる効果がある」

スノウ「ウサギや山羊やニワトリまでもが銃を持つくらいにまで武器を製造したところで、彼らはどうするつもりなのかしら。ホームランドを奪還するの?」

ウェイランド「だと思う」

スノウ「さっきから何をやってるのよ?」

ウェイランド「君の鎖を解くカギを成形しているのさ」

スノウ「えっ、どうやって…」

ウェイランド「自分自身を自由にすることはできないが、君を自由にすることはできる。ファームの魔法使いなんてアマチュアさ。この鎖の魔法は、文字通りのことしかしてくれないんだよ」

ウェイランド「これでいいはずだ」

【ウェイランドの作ったカギは、スノウの足首にはめられていた鎖の施錠を解いた】

スノウ「ありがたいわ。で、あなたの鎖はどうすればいいかしら」

ウェイランド「スマンが、君が私の鎖を外すことについては、魔法の効果で何の助言もできなんだ」

スノウ「私があなたを逃がそうとした場合、鎖の魔法はどうなるの?」

ウェイランド「何も起きないと思う」

スノウ「オーケー、一歩前進ね。じゃあ、私があなたの鎖を壊したら、魔法の効果は持続するのかしら?」

ウェイランド「スマンが、君が私の鎖を外すことについては、魔法の効果で何の助言もできなんだ」

スノウ「ああもう」

スノウ「いいわ、何とか頑張りましょう、ウェイランド。私がこの面倒な鎖を外すか切断すれば、どうにかなるはずよ」