Fables vol.2 "Animal Farm" (翻訳その16)

※『Fables』は、おとぎ話を題材にしたアメコミです。悪の勢力によって、おとぎ話の世界“ホームランド”から追放されたさまざまなキャラクターたちが、現実世界で素性を隠しながら生活しています。キャラクターたちは自らをフェイブルズと称しています。

<2週間以上が経った>

【季節は秋になり、スノウの病室にはハロウィーンのカボチャが置かれている。病室には再びビグビーがお見舞いに来ている】

スウィンハート医師「一度の面会で1人だけだぞ。今日の面会はあんたでおしまいだ。これ以上続けると言うのなら、全員の面会を禁止するからな」

ビグビー「あんたがそう言うのなら」

【スノウはベッドに座って食事をしている。包帯もほとんど取れている】

スノウ「おはよう、ビグビー。今日の私の“子守り”はあなた?」

ビグビー「君と俺が望もうと望むまいと、3日に1回は面会だよ」

ビグビー「チューブ食から本物の食べ物に戻った感想は?」

スノウ「この味気ないおかゆが“本物の食べ物”だって言うんなら、すぐにチューブ食に戻してもらいたいわ」

ビグビー「そっちのほうがいいかどうか、見てみたいものだ。まずい食事のことはさておき、気分はどうだ?」

スノウ「死ぬほど退屈。あなたのものになるから、ここから出してほしいくらい」

ビグビー「すまんがそれはできない相談だな。君はまだここにいなきゃならないし、公式に全快と認められるまで、長くかかるだろう」

スノウ「ならせめて最新ニュースでも話して。毎日毎日“こちら側”のニュースばっかり見てたら、残った脳みそも腐っちゃいそう」

ビグビー「そうだな、戦後裁判が始まった」

【場面転換。ファームで簡易裁判が開かれている。テーブルにプリンス、青髭、ブルーボーイが座り、その前にはファームの住人たちの長蛇の列。列を監視するのはバフキンとウェイランド・スミス】

バフキン「線に沿って並べ! おしゃべり禁止!」

ウェイランド「減刑に足る証拠があるもの、減刑のための論駁を行うものは、裁判員の前まで来たときに自分で話すように!」

プリンス「次は?」

【デスクに座るプリンスの前に、キング・ルーイがやってくる】

青髭「キング・ルーイ。ジャングル・ブックのグループの一員」

※キング・ルーイについては翻訳その8参照

プリンス「罪状は?」

青髭「革命活動への積極参加。だが、首謀者ではない。スノウ・ホワイトの捜索隊に加わっていた」

プリンス「この罪状について異論はあるか? もしくは公式での裁判を望むか?」

キング・ルーイ「いいえ、何も」

プリンス「ならば20年間の勤労を言い渡す。ただし君の心がけ次第では5年間に減少することも可能だ。さて、次!」

青髭「レイナード・ザ・フォックス。無罪。彼は反革命派の活動員で、さらにスノウの命まで救った」

プリンス「そのことについて、我らのコミュニティーは君に大きな借りがあるな。皆を勇気づける君の英雄的行為に対し、公式見解を述べるのが後回しになったことをお詫びする」

レイナード「構わないさ。助けになれて嬉しいよ」

プリンス「次!」

【今度はポージーがやってくる】

青髭「三匹の子豚のポージー。革命の首謀者の1人。コリン殺害の共犯、ウェイランド・スミスの誘拐と隷属、スノウ・ホワイトの殺害指示」

ポージー「弁解させてもらうなら、私は…」

プリンス「弁解は後で聞こう。極刑もあり得る公式な裁判が開かれるまで、お前は拘束されることになっている」

青髭「ポージーを拘置所へ」

【ポージー、うなだれて連れて行かれる】

プリンス「次!」

【場面転換。数週間が流れ、季節はすっかり冬になっている。スノウは車いすに座ってベッドから起きられるようになった。病室内には小さなツリーが飾られ、コール老王とブルーボーイはパーティー用の三角帽子をかぶっている】

<さらに時は流れ…>

コール老王「クリスマスには何がほしい、ミス・ホワイト?」

スノウ「この病院からの片道切符なんてどうかしら」

コール老王「よかろう」

スノウ「本当に?」

コール老王「明日の朝一番にね」

ビグビー「おめでとう、ついに釈放か」

スノウ「お祝いが必要ね。病室の外にはストームトルーパーみたいな看護婦たちがいるけど、誰かシャンパンを持ち込んでくれたかしら?」

ブルーボーイ「そう簡単にはいかないよ。スウィンハート先生は何も見逃さないし、あの太った看護婦ってば、マジで怖いからね」

ビグビー「だがアルコールがないからこそ、人の不幸を少しばかり喜んでしまう自分を許してしまいそうだな」

スノウ「どういうこと?」

ビグビー「今日はファームでの処刑実行の日だ。革命の首謀者たちは、その犯罪行為の報いを受けなくちゃならん。ちょうど今、実行されるころだろう」

【場面転換。ファームの広場に断頭台が置かれ、住民やローズなどがそれを取り囲んでいる。断頭台にはダンが横たえられており、そのそばには斧を抱えた刑人がいる。ポージーはすでに斧で首を落とされている】

プリンス「ダン、お前はフェイブルズ全員に対する罪を犯した。極刑に値する罪だ。ジャック・ケッチ、刑を執行せよ」

ジャック・ケッチは17世紀イギリスの有名な処刑人。手際が悪く、罪人を一撃で処刑できなかったこともあった。

ダン「ポージーにやったときよりは手際よくやってくれよ。お前は首切り人に向いていないようだからな。10回以内に首を落とせるか、見ておいてやるさ」