Fables vol.3 "Storybook Love" (翻訳その6)

【前回からの続き。ニューヨーク、フェイブルタウンのオフィス内。ブルーボーイと青髭、プリンス・チャーミングが集まっている】

<一方…>

ブルーボーイ「バフキンがオフィスでこいつら2人を見つけたんだ」

【机の上には鳥かごに入れられた3人の小人たちの姿がある。小人たちは3人とも巡査の姿をしている】

ブルーボーイ「そのあと、もう1人が市長のペントハウスの天井で見つかった。バフキンとフライキャッチャー、グリンブルに他にいないか探させたよ」

青髭「マウスポリスがファームの外で何をやってるんだ」

ブルーボーイ「分からない。こいつら話そうとしないんだ」

プリンス「大発生する季節なんじゃないか?」

青髭「至急、調査が必要だな」

ブルーボーイ「確かにコール老王もそう言っていたけど、ビグビーとスノウは不在だし…」

プリンス「僕がやろう」

青髭「お前が? この仕事は、我々の中で確かな地位についているものが行うべきだ。我々の繁栄に寄与したものがな。最近やって来たばかりの“平民”には難しいだろう」

プリンス「ちょっと待て、青髭。確かに俺は庶民的になったが、王子でもある。記念集会のときにジャックから自分の肩書は買い戻したんだぞ」

青髭「それはそうかもしれん。だがお王子という肩書は一度売り払われたんだ。その時点で威信は失われているぞ!」

ブルーボーイ「うーん…この調査はファームとの対等な関係を必要とするはずだよね。っプリンスはファームの革命のときに裁判長を担当したから、コール老王も彼が調査役をするよう望むと思う」

青髭「これは許し難いミスだぞ、お前も、ほかの全員も、遅かれ早かれそいつに失望することになるだろうよ」

【苦々しげな表情で立ち去る青髭。一方、場面転換して森林の中を歩くビグビーとスノウは、四輪駆動のレンタカーを発見した】

ビグビー「見つけた」

スノウ「ようやくね。足が棒になったわよ。休みたいわ」

ビグビー「そう長くは休めん。どうも状況は一刻を争うような気がする。なるべく早くこの場を立ち去るべきだ」

スノウ「なら運転して」

ビグビー「運転の仕方は知らん」

スノウ「習いなさいよ。20世紀に追いつくには、いい頃合いよ」

ビグビー「今は21世紀だぞ」

スノウ「そうだった。時間が経つのは早いわね」

【スノウの運転で自動車に乗り込む2人だが、しばらくすると前輪のタイヤが…】

スノウ「パンクだわ!」

ビグビー「掴まれ!」

スノウ「ちょっとちょっと!」

ビグビー「そのままだスノウ、コントロールが効くならまだ大丈夫!」

ビグビー「頼むぞ!」

【下り坂で勢いがついた車は、容易には止まりそうもない】

ビグビー「いいぞ、茂みに向かって走らせろ。木に正面衝突するなよ、減速させるようにこすらせるんだ」

スノウ「もうやったわよ!」

【車は崖から飛び出し、林の中へ突っ込んだ。気を失う2人。場面転換してブライア・ローズのアパートに帰ってきたプリンス】

プリンス「ただいま、ブライア」

ブライア・ローズ「いちいちそう言ってくれて助かるわ」

※ブライア・ローズは童話「眠れる森の美女」の主人公。プリンスの2番目の妻。

【苛立たしげにソファーから顔を上げるブライア】

プリンス「起きなくていいよ。書斎で仕事があるからね」

ブライア「鍵付きの部屋にこもるのはやめて。追加の部屋を持つことを許した覚えはないわよ。元旦那を相手に慈善事業するのも、そろそろ限界だわ」

プリンス「ブライア、紳士にはプライバシーが必要なんだ。用事が終わったら出てくるよ」

【部屋に入ったプリンスは、鳥かごから小人たちを出してやる】

プリンス「ほら、周囲の目と耳は締め出した。君たちは奴らに捕まるほどスパイの適正がなかったのか? 説明してくれ」

マウスポリス1「我らのせいではありません、プリンス」

マウスポリス2「そうです。あなたが我らを、必要な情報を得られる場所まで連れて行ってくれなかったからです。もうへとへとですよ」

マウスポリス3「予定通り進めたいのなら、チャンスを掴まなければいけませんよ」

プリンス「大きな声で話してもらえるか? よく聞き取れん。ウィルフレッド警部に何が起きたんだ?」

マウスポリス2「彼はここ数日、報告に戻ってきていません。私たちも心配しています」

マウスポリス3「私はそうでもないぞ。彼とネズミのレックスは最高のマウスポリスだ」

【3人から報告を受けたプリンスは、思案顔で椅子に腰かける】

プリンス「よし、3人とも休んでよろしい。しばらく任務はない。奴らに見つかったんだから、活動をひかえなきゃいけないな。次の一手を考える必要がありそうだ」