Fables vol.3 "Storybook Love" (翻訳その8)

※『Fables』は、おとぎ話を題材にしたアメコミです。悪の勢力によって、おとぎ話の世界“ホームランド”から追放されたさまざまなキャラクターたちが、現実世界で素性を隠しながら生活しています。キャラクターたちは自らをフェイブルズと称しています。

<Storybook Love チャプター3:対決>

【前回からの会話の続き。なぜ自分に魅力を感じるのかというスノウに対し、ビグビーが答える】

ビグビー「ロマンスの引き金はいつだって、他のみんなと違う香りがする人にあったときに引かれるものだ。最初に出会ったとき、俺が君を食い殺さなかった理由のひとつは、君の芳香が心地よいものだったからだ」

スノウ「冗談でしょ。あのときは魔王軍に3日も追われて泥まみれだったのよ。お風呂にも入ってなかったし、香水ももう尽きていたわ」

【休憩を終えた2人は森の中を歩き始める】

ビグビー「確かにな。だが俺は、それまで人間の女性にそこまで興味を引きつけられたことがなかった。俺を数世紀の間、人間の姿でいさせたのはそのためだ」

スノウ「それからだんだん私を好きになっていったわけ?」

ビグビー「それは正確じゃない。君は無視できない存在なんだ」

スノウ「どういう意味? ちょっと曖昧すぎるわ」

ビグビー「タウンに住むようになってから、俺は煙突みたいにタバコを吸い続けなきゃいけなくなった。鼻に負担をかけて、強すぎる嗅覚をにぶくするためだ」

スノウ「ええ、気付いてたわ」

ビグビー「そうしてもなお、何万という邪魔な音とにおいを意識的に遮断しなければならなかった。車の排気ガスや個人の体臭、コロンや香水は特にな。そして2万もの家庭とレストランから流れてくる食事と生ごみのにおい。これらをブロックできていなかったら、俺は気が狂っていただろう」

スノウ「で、それが私にどう関係するのよ」

ビグビー「君のにおいだけがブロックできなかった。信じてほしいが、試しはしたんだ。しかし無駄だった」

ビグビー「君が毎日・毎秒どこにいるかわかる。いい夢を見ているか悪夢を見ているかもわかる。君の微妙な気分の変化がわかる。風呂に入っても香水を変えても、だ」

ビグビー「めったにない君の嬉しいときも、悲しいときも、特に多いのは孤独を感じているときだが、どれも感じ取れる」

【スノウは戸惑った顔で答える】

スノウ「ねえ、この話やめましょう」

ビグビー「君がビューティーと話すときに嫉妬していることも感じ取れる。彼女とビーストの結婚生活が上手くいっていることを、否が応でも思い知らされるからだ」

スノウ「お願いだから…」

ビグビー「そして君自身、ビューティーの幸せに腹を立てていることに罪悪感を覚えているんだ、彼女は悪くないのに。」

スノウ「やめて! こんなの…こんなの気持ち悪いわよ。ずっと私をストーキングしてたみたいじゃない」

【スノウはついに泣きそうな顔になりながら言う】

ビグビー「俺だって止められるものなら、止めている」

ビグビー「思い出してほしいが、ホームランドを追われた最初の年、俺は君とも他のフェイブルズとも離れて暮らそうとしたんだ。しかし君はタウンに来てコミュニティーの運営に加わるよう、俺に強く言っただろう」

スノウ「まだ言う気なの」

ビグビー「聞きたくない答えがあるのなら、質問しないことを学ぶんだな」