Fables vol.4 "March Of The Wooden Soldiers" (翻訳その15)

※『Fables』は、おとぎ話を題材にしたアメコミです。悪の勢力によって、おとぎ話の世界“ホームランド”から追放されたさまざまなキャラクターたちが、現実世界で素性を隠しながら生活しています。キャラクターたちは自らをフェイブルズと称しています。

<チャプター6:集会の自由>

【太陽も登りきらない早朝、何台ものトラックがファームからタウンへ向けて走っている。車列の先頭を運転するのはローズ・レッド。携帯電話でスノウと話している】

ローズ「いま向かってるわ。すべての車両を集めたり、借りたり、盗んだりしてきた。ありったけの銃器を積んでるわ。数トン分の銃器をね。大急ぎでそっちに向かってるから、待っていて。白馬の騎士がやって来るわよ」

スティンキー「いまどこ? 見えませんよ!」

アナグマのスティンキーが、座席から頭を上げようとしている】

ローズ「現世人に見られたらやっかいでしょ。座って隠れてなさい、スティンキー」

【別のトラックでは、ウェイランド・スミスが運転している】

ファームの住人「本当に戦争しに行くの? ウェイランド」

ウェイランド「そうでないことを祈るよ。何かの間違いか、予告なしの緊急訓練だと思いたい。けど実際のところ、戦争だろうな」

【また別のトラックでは、三匹のクマが愚痴を言っている】

ブー「なんで僕らが? 何で行かなきゃならないの? 毎日12時間も僕らを働かせるようなタウンのやつらのために、命をかけないといけないの?」

父クマ「ここで新たに忠誠心を示さなければ、またもっと長い間働かされることになるからだよ」

【場面転換。ニューヨーク市のウッドランド・ビル前。フェイブルズたちが、金属製のたるにセメントを入れてバリケードを作っている】

警官「ここで何をやってるんだ!? この街じゃあ、道路を封鎖してバリケードを建設するなんて、許されていないぞ!」

プリンス「それができるんですよ。許可はもらっています。近くのブルフィンチ通りでストリートパーティーをやるんです」

婦警「でも、パーティーのためにセメントでバリケードを? 敵の侵略にでも備えているように見えるわよ」

【警官たちの相手をするプリンス・チャーミング】

フェイブルズ「みんな働いておけよ。プリンス・チャーミングが、現世人の対応をしてくれる」

プリンス「そんなに大仰なもんじゃありません。僕らは偏屈なコミュニティーなので、古い故国の伝統にしがみついているだけなんです。このバリケードは、お祭りの間のプライバシーを守るための保険ですよ」

警官「いいだろう、許可証は本物のようだ」

婦警「明後日までには、道路をきれいにして、元通りにしてね」

プリンス「もちろん。僕らはニューヨーク市で一番善良な市民ですよ。では、お二人とも、お気をつけて」

【プリンスがバリケード建設を行うフライキャッチャーに話しかける】

プリンス「問題解決だ。仕事の調子はどうだい、諸君」

フライキャッチャー「順調ですよ。セメントをたるに詰めるときに、少し汚れちまうくらいで…」

プリンス「素晴らしい。よくやってくれているよ。正午までには、ブルフィンチ通りの両端を封鎖できるだろう。バリケードの高さはたる2つ分。厚さもたる2つ分でな。さあ、ちょっと歩こう」

フライキャッチャー「あー…、いいですけど」

【駐車車両に気づくプリンス】

プリンス「この車は? 我々のものか?」

フライキャッチャー「そうです。タウンの所有物。現世人に呪文をかけて、ここに駐車させたんですよ

【ウッドランド・ビルの門の前に立ち、指示する】

プリンス「よし。ここに半円状に移動させてくれ。ウッドランド・ビルの入り口を守る、内側のバリケードにしよう。この種の戦闘で求められるのは、最悪の場合に備えた防御地点だ。それを入れ子状に設置するんだ。最後の砦としては、ビル前の中庭が使えそうだな」

フライキャッチャー「人形3体を相手にする防御策としては、ちょっとやりすぎじゃないスか?」

プリンス「知っている限り3人だ。本当は何人いるのか、誰も知らないんだぞ」

【場面転換。黒服たちとニセ赤ずきんのアジトである廃工場。大量の木箱が開封され、中から人形たちの頭部や腕、胴体など各部位が出てくる】

黒服「注意しろよ、兄弟」「木箱を開けるときには、最大限の注意を払え。大事な中身に傷をつけるんじゃない」

黒服「箱を開けたら、次は中身の確認だ。パーツがしっかり動くこと、無傷であることを確かめろ。特に、頭と両手を扱うときは要注意だ。これらのパーツは、我らの創造主が直接彫りだしたものだからな。しかも、生きた人間に見えるように呪文がかけられている」

【木箱から人形の頭が取り出され、口を開く】

黒服「よお、ブラザー・ルー。また会えてうれしいよ」「やあ、ブラザー・ランドルフ。積み荷に入っての旅行は快適だったかな?」「この上なく。実のところ、このあったかくて快適な木箱から出たくないくらいだよ」「仕事の時間だ、ランドルフ。パーツを全部開封したら、2番ステーションで組み立ててきてくれ」

【木箱から開封された各パーツは1体の人形へと組み立てられ、番号に沿って衣服やかつらを身に付けていく。数十体の人形たちが、列をなして身支度をしていく】

黒服「組み立てられたら、きちんと稼動するかどうかセルフチェックするんだ。もしどこかきつかったり、ゆるかったりしたら、衣服を着る前にここで調整していけ」

黒服「シャツとスラックス、ジャケット、ネクタイ、靴下、革靴を持っていけ。サイズは気にしなくていい。全部同じだ」

黒服「服を身に付けたら、5番ステーションでかつらを受け取れ。そのあとは6番ステーションで武器だ」「好みの髪色があれば言ってくれ。誰かと交換してもいいぞ」

黒服「全員に銃を渡せるわけじゃない。足りないんでな。非武装のやつは、武装しているやつと一緒に行動しろ。戦闘中にそいつが倒れたら、銃はめでたくお前のものだ。体の組み立て、着衣、武装がすんだら、下の階へ行け。ミッションの説明がある」