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読めよぉー。(´;ω;`)

あとプレイしたり、観たりしろよ。アメコミ翻訳はじめました。

『ブラック・ジャック』の個人的な名エピソード ベスト10

みんな大好き手塚治虫の『ブラック・ジャック』。居酒屋での「とりあえずビール」並みに面白さの安定感がありますね。もう何度も読んでいるんですが、こないだひさしぶりに文庫全巻を読み返したので、その中でも特にオススメのエピソードをベスト10として紹介します。ランキング形式で。文庫版からピックアップして。

10. なんという舌(文庫5巻)

【あらすじ】

ブラックジャックの移植手術によって、短肢症を克服したソロバンの得意な村岡少年。彼は全国ソロバン大会に出場するが、ブラックジャックは「移植した腕では長時間の酷使に耐えられない」と警告する…。

【解説】

村岡少年を叱咤するブラックジャックのセリフ、「笑うやつには笑いかえしてやれないのか」が印象的なエピソード。最後には「体のある部分(エピソード名ネタバレ)」でソロバンをする村岡少年と、それを快く認めるソロバン大会の審査員たちの姿が描かれます。「障害を克服した者は、決して卑下しなくていいんだ」という、ブラックジャックの価値観が見て取れますね。

9. ピノコ愛してる(文庫3巻)

【あらすじ】

ブラックジャックと暮らすことになったピノコ。炊事洗濯もできないあげく愛の言葉を投げかける彼女に、ブラックジャックは手を焼く。そんな中、事故で重傷を負った男児を手術することに。ピノコは自分の体を使って移植手術をすればいいと言うが…。

【解説】

ブラックジャックの最大の理解者であり恋人でもあるピノコ。その彼女の愛と、ブラックジャックとの関係が見事に描かれている一編です。ブラックジャックのことが大好きなのに、いざ手術となれば死ぬこともためらわない、そこがやっぱりピノコというキャラクターの凄さでしょう。もちろん、だからと言ってピノコを犠牲にできるブラックジャックでもない。手術は悲劇的な最後を迎えるんですが、彼の苦悩と葛藤を我がことのように理解するピノコのラストのセリフが泣けます。

8. 助け合い(文庫2巻)

【あらすじ】

異国の地で警察に捕まってしまったブラックジャックを、蟻谷という男性が助けてくれた。帰国後、ブラックジャックはその蟻谷氏が事故で危篤に陥ったことを知る。かつての恩を返すため、ブラックジャックは走り出した!

【解説】

ブラックジャックでも一・二を争う誠意ある善人、蟻谷さん。そんな彼の善意に、これまた持てるすべてを使って恩返ししようとするブラックジャック。やっぱり「情けは人のためならず」ですよ、いやほんと。蟻谷さんを取り巻く悪人たちも懲らしめられて、一石二鳥となる大団円っぷりが良いですね。病院を現金20億円で買い取るシーンも痛快。

7. ちぢむ!(文庫3巻)

【あらすじ】

かつての恩師・戸隠先生によって、アフリカの奥地へ呼び出されたブラックジャック。そこでは、体が縮んでいくという謎の奇病がまん延していた。戸隠自身もこの病に侵されており、ブラックジャックに原因解明を依頼する。ブラックジャックはこの奇怪な病に挑むことになるが…。

【解説】

ブラック・ジャック』には架空の病気もたくさん出てきますが、その中でも印象的なのが本エピソードの組織委縮症。普段冷静なブラックジャックが焦りの中、原因究明に奔走していて、エピソード全体に緊張感が漂っています。そしてラストの「医者はなんのためにあるんだ!」という叫び。まさにこの漫画で描かれるからこそ、深い意義を持つ名シーンでありましょう。

6. 台風一過(文庫17巻)

【あらすじ】

人気アイドル歌手の子宮外妊娠の手術を行うことになったブラックジャック。手術は極秘で進めなければならず、外では台風が吹き荒れるという不安定な状況下に乗り気はしない。自宅ではピノコが帰りを待っているが…。

【解説】

珍しくブラックジャックピノコが別行動で話を進めるエピソード。世間体ばかり気にする芸能マネージャーとのやり取り、緊迫した極限状況下での手術、ピノコの奮闘など一話完結とは思えないほどの見どころがありますが、やはり帰宅後のお茶のシーンが素晴らしい。救われる感があります。文庫版は全17巻なのですが、最終巻にこのエピソードをもってくるあたり、選者のセンスが良いですね。

5. ときには真珠のように(文庫1巻)

【あらすじ】

ブラックジャックの元にとどいた小包み、それは奇妙な石の鞘(さや)に収められたヰ1本のメスだった。送り主が命の恩人・本間丈太郎医師であることを突き止めたブラックジャックは、老衰で寝込む彼の元を訪れる。そこで聞かされた、ある懺悔とは…。

【解説】

名セリフ、「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんて おこがましいとは思わんかね……」が登場する回です。『湯治場の二人』(文庫5巻)にも描かれてる通り、漫画『ブラック・ジャック』には”人間が人間の手で生死を操作すること”に対する懐疑心のようなものがあります。その懐疑心を如実に表したのが本エピソードと言えるでしょう。もちろん、ただ単に「生死の操作は人間の分を超えた行為だ!」と非難するのではないところがミソ。「救いたい」、「救えなかった」、「救うのが正しいのか」の間で葛藤するブラックジャックの姿が心に残ります。

4. 密室の少年(文庫12巻)

【あらすじ】

事故で手足がマヒしてしまった少年を診ることになったブラックジャック。しかし不思議なちからで、聴診器は飛び回りメスは折れ曲がってしまう。少年の鬱屈した精神による念動力だと確信したブラックジャックは、彼と対決することを決意する。

【解説】

バカ親のせいで手足が動かなくなってしまった少年と、その憎悪のほとばしり。それらと真正面から向き合い、一身で受け止めるブラックジャックの人間としての気概に胸が熱くなります。念動力による攻撃をものともせず、ひねくれまくった少年に言い放ったセリフ、「おれがおまえぐらいのときにゃア からだじゅうがバラバラだったんだ!!」もめちゃくちゃカッコいい。バカ親のおかげでもの悲しいラストになってしまうのですが、ピノコのセリフが救ってくれます。

3. ふたりの黒い医者(文庫3巻)

【あらすじ】

おなじ患者を同時に受け持つことになったブラックジャックドクター・キリコ。ひとりは助けるため、もうひとりは安楽死のために…。医師として、ひとりの人間として負けられない戦いが始まった。

【解説】

ブラックジャックのライバルともいえるドクター・キリコの登場回。「死への一時間」(文庫8巻)とどっちかなと考えたんですが、やっぱり2人の価値観の違いが如実に表れてる本エピソードのほうを選びました。そしてまたこのエピソードは、5位の「ときには真珠のように」で提示された課題に対する、ブラックジャックなりの解答も描かれています。ラストシーン、絶望の淵に踏みとどまって自分の決意を叫ぶブラックジャックに対し、哄笑するキリコの姿はほのかに哀れを誘いますね。

2. あつい夜(文庫10巻)

【あらすじ】

ハワイ在住のとある大富豪。彼は何度も殺し屋に命を狙われ、そのたびにブラックジャックに助けられていた。富豪は「命を狙われる心当たりなどない」と言うが、かつてベトナム戦争に従事した経験があった…。

【解説】

ちょっとしたミステリ仕立てで、戦争の理不尽と復讐の悲哀を描く隠れた名エピソード。犯人が悲痛な思いで叫ぶ「できれば戦争中にお前を殺したかった 戦争は人間のひとりやふたり殺しても罰せられん」というセリフ。このセリフが持つ恐ろしさ・残酷さ・意義深さは、相当なもんですよアンタ。このエピソードを読むためだけにでも、文庫10巻を買う価値はあります。ブラックジャックの最後のセリフも印象に残ります。

1. 霧(文庫15巻)

【あらすじ】

病気のため自暴自棄になり、険しい山奥で自殺を図った少女・美江。彼女を追ってきたブラックジャックだったが、急激に立ち込めた濃霧によって美江ともども遭難してしまう。美江は自分のことなど放っておけと言うが、果たしてサバイバルの行方は…?

【解説】

一刻も早く下山して治療したいブラックジャック、自殺志願で自暴自棄な美江、霧に包まれた閉鎖空間、時間と飢えとの戦い、少しずつ歩み寄る2人の心…。ちょっとした映画でも作れそうな設定を、16ページ内に見事に収め、しかも泣けるというすさまじいエピソード。ブラックジャックと美江の2人しか登場しないというのも素晴らしい。中盤、親に見捨てられたことを知った美江が、なぜ自分なんかを助けるのかと泣きながら問うシーンがあるんですよ。それに対するブラックジャックのセリフは、たぶん全エピソードの中でも一番ブラックジャックらしい、そして人間臭いセリフだと思います。だからこのエピソードを1番に推しました。ぜひ本編を読んでみてください。

  

いかがでしたか、俺の個人的ベスト・オブ・ブラックジャック。正直、ベスト100でもいいくらいなんですが、さすがに体力が持たないので10本に絞りました。次点として「二つの愛」(文庫3巻)、「六等星」(文庫1巻)、「湯治場の2人」(文庫5巻)、「殺しがやって来る」(文庫8巻)なんかも好き。文庫未収録ですが、「ふたりのジャン」(単行本4巻)なんかも良いですね。皆さんもどうぞベストエピソードをまとめてみてください。一家に一冊、ブラックジャック。 

ちなみに特設サイト「ブラックジャック 40周年アニバーサリー」には一般投票で選ばれた人気エピソードランキングもあります。ご自身のピックアップと比べてみるのもまた一興かと。