Lady Killer #6

※『Lady Killer』は殺し屋兼主婦のジョシー(ジョセフィン)を主人公にしたアメリカンコミックスです。周囲に殺し屋の顔を隠しながら、良き妻・良き母として毎日の生活を送るジョシーの姿が描かれます。

【前回からの続き。エディスへの電話を終えたジョシーに、ジーンが話しかける】

ジーン「帰って来ていたのかい? 車は?」

ジョシー「昨日の晩、言わなかった? カーショップに持っていったのよ。子供たちをバレエ教室に連れていくのに、あなたのトラックを借りたいんだけど」

ジーン「クラッチ入れるとき気を付けてくれよな?」

ジョシー「わかってる」

【双子を連れてジーンの軽トラックに乗るジョシー。そこへジーンが声をかける】

ジーン「ジョシー! ヘイ、ジョシー!」

ジョシー「何?」

ジーン「エディスが『あの車が動き出した』ってさ。何のことだい?」

ジョシー「何でもないのよ。彼女、なんにでも鼻をつっこむから」

ジーン「ああ、オーケー。じゃあ2人とも楽しんできて」

双子たち「行ってきます、パパ」

【トラックを急発進させるジョシー】

ジーン「ああもう、クラッチに気を付けてって言ったのに……」

双子たち「やったー、速い速い!」

【車内では双子たちが騒いでいる。猛スピードで走るジョシーの前に、ペックのスポーツカーが姿を見せた。そのあとをついて行くジョシー】

双子たち「去年のバーベキューのときのパパより速いね! でもこれパパには内緒ね。私たちだけの秘密にしとこう!」

双子たち「ママー、ここどこ?」

ジョシー「アイスクリーム食べたい人?」

【ペックは一軒の中華料理店へ入っていった。ジョシーらも店に入り、ペックに気づかれないよう、近くの席に座る】

中国人のウェイトレス「失礼ですが、ミスター。何か御用ですか? ここではかなり香辛料をきかせた中華料理しか提供していませんが」

ペック「遅れたのは謝るよ、サービス価格はまだ終わってないだろ?」

中国人のウェイトレス「先に連絡してよ。そしたらアンタに嫌味を言わなくて済むんだけど

ペック「おいおい、ルビー。仲良く遊ぼうぜ」

ルビー「もうこれ以上、アンタとは付き合わない」

ペック「俺にもきみにも、他に選択肢はないんだよ。俺はきみの借金を払ってやりたいだけだぞ」

ルビー「アンタ、本当にクソ野郎ね!」

【ルビーと呼ばれたウェイトレスとペックの会話を盗み聞きするジョシー】

双子「ママ、あの人、うんこって言った!」

ジョシー「シーッ! ジェーン、静かに」

中年のウェイトレス「ご注文は?」

ジョシー「アイスクリーム、3つ」

中年のウェイトレス「アイスクリームはないんだよ、すまないね。フォーチュンクッキーならあるんだけど」

ジョシー「いいわ、ならそれ1つとコーラ3つ」

中年のウェイトレス「ふん、アメリカ人か……」

【立ち去り際に愚痴る中年のウェイトレス。ジョシーは子供の前に置かれたお茶の湯呑みをわざとこぼす】

ジョシー「なんてことするの。ごめんなさい、私の娘が…」

双子の1人「私やってないよ!」

【テーブルを拭きに来たのはルビーだった。ジョシーは、テーブルのかげで彼女の脇腹にお箸を突き当て、ささやく】

ジョシー「静かに。あなたのことは知ってるわ。話したいことがある。今夜遅く、コルマン船着き場で待っていて」

【ジョシーはそのまま店を後にする】

ジョシー「行くわよ、2人とも。バレエの時間だわ。クッキーはあとからにしましょう」

【場面転換。真夜中、船着き場にジョシーがやって来る】

ルビー「ここよ。何の用なの?」

ジョシー「ジョシーよ。来てくれてありがとう。昼間はごめんなさい、ただ……」

【ルビーは聞く耳を持たず、いきなりジョシーの腹にひざ蹴りを食らわせる】

ルビー「何をしてほしいのかわからないけど……正体をしゃべってもらうわよ」

【うしろからジョシーを羽交い絞めにするルビー】

ジョシー「グッ! 私もあなたと同じエージェントよ。ステンホルムのもとで働いてきたけど、あいつは私を殺そうとしてる」

ルビー「それがどうしたっていうの?」

ジョシー「あなたがペックと話しているのを聞いたわ。組織から抜けたいんでしょう!? でもやつらはそれを許さない。私を助けなければ、次はあなたの番よ」

【ジョシーはルビーに肘鉄を食らわせ、腕を取って彼女を投げ飛ばす。そのまま彼女の腕を取り、関節を固めた】

ジョシー「あなたを傷つけたくない。決断しなさい」

ルビー「なら、その前に腕を離しさいよ」

ジョシー「いいわ。さあ、どうなの? あいつらを殺るの?」

ルビー「なんでもやってやるわよ。でも2つ、ハッキリさせておく。あなたからの命令は受けない。それとペックを殺すことになったら、あたしが殺すわ」

ジョシー「了解」

ルビー「それと、やつらを殺るなら助けがいるわね」

【場面転換。時間貸しで部屋を提供していると思しきアパート。管理人の老人男性が、苦労しながら階段を上っている。そのうしろにはカップルの男女がいる】

年老いた男「すまんな、お若いの。あちこち悪くなっていてな。どうか手伝ってくれんかね?」

若い男性「べつにいいさ、おやじさん」

【老人の手を取って、階段を上るのを手伝ってやる男性客】

年老いた男性「ありがとうよ。若いころは、2段飛ばしで何の問題もなく階段を上っていたもんだがなあ」

男性客「はいはい。で、そんときゃパン一斤が1ペニーだったんだろ」

女性客「時間がないのよ、ピーター。旦那は6時に帰ってくるんだってば」

男性客「大人しくしてろよ。時間通りには家に戻してやるよ。本当にこの部屋でいいのか、おやじさんよ」

【老人の案内のもと、男女は貸し部屋に入ってきた。しかし老人男性はふところからサイレンサー付きの拳銃を取り出す】

年老いた男性「ああ、間違いなくこの部屋だよ」

男性客「なん……!?」

【ためらうことなく発砲し、男女を殺害する老人男性。そのとき、部屋のトイレのドアがあき、中からルビーとジョシーが姿を現した】

ルビー「ハイ、アーヴィング。ちょっと時間ある?」 

Lady Killer

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