Lady Killer #7

※『Lady Killer』は殺し屋兼主婦のジョシー(ジョセフィン)を主人公にしたアメリカンコミックスです。周囲に殺し屋の顔を隠しながら、良き妻・良き母として毎日の生活を送るジョシーの姿が描かれます。

【モノクロ画面に映るアニメーション映像。博覧会の解説をしている】

ナレーション「みんな見に来て、シアトル・ワールドフェア! 21世紀へようこそ。科学パビリオンでは火星へのロケット旅行へ行こう! 巨大コロシアムで信じられないほど素晴らしい都市を目にしましょう! 幸せに満ちた人々といっしょに、心踊る冒険の人生を!」

【博覧会の案内をするコンパニオン嬢たちが、その映像を見ている。リーダーらしきコンパニオンが、アルバイトのコンパニオンに言う】

コンパニオン「わかりましたか、皆さん。自分の配置につきましたら、とにかく笑顔を忘れないように。来られているゲストの方々に、世界に1つだけの忘れられない体験を提供しましょう。それから、科学パビリオンでは特に注意を払って、ミスなどしないように。ケネディ大統領のオープニングスピーチがフロリダ中に生中継されますからね」

【バイトのコンパニオン嬢の中に、ジョシーとルビーが混じっている】

ルビー「アーヴィングはもう位置についている。ペックとステンホルムは壇上にいるから、やつらの気を引いて」
※アーヴィングは前回のラストに登場した協力者の男性。

ジョシー「それは難しくないはず。あなたのところに連れて行くわ」

ルビー「気を付けて」

【それぞれの持ち場へと移動するコンパニオンたち。ジョシーは、スピーチがおこなわれているパビリオンの聴衆の中に紛れ込んだ】

スピーチの声「この手のフェアのオープニングは、宇宙時代の博覧と一緒に始まるものですね。文字通り、われわれは新たな海原に手が届いています。まだ見ぬ星にも、1万年前から届いていたラジオ波にも、このフェアの始まりにも」

【スピーチが行われている壇上には、ステンホルムとペックも列席している。その後ろには複数名のボディーガードが並んでいる。ジョシーはわざと壇上のペックに視線を送る】

スピーチの声「そのラジオ波は北の空のカシオペア座から届いています。この光の発している星が、平和で幸福な星であることを望みます……といっても、ここに届くまで1万年かかっているのですが。私は、このラジオ波がこのフェアを成功へと導くと確信しています。このシアトル・ワールドフェアは、さらなる科学的発展への扉を開くでしょう。信号を送るこの電鍵は、非常に重要な意味があるものです」

【ペックは、聴衆に混じるジョシーの姿に気が付き、ステンホルムに耳打ちする】

「今日までに、この電鍵は7代の大統領に使用されてきました。宇宙に信号を送ることが、シアトル・ワールドフェアの開催を成功させるだけでなく、全人類の平和と理解に満ちた新時代への扉を開いてくれるでしょう」

【ペックとボディーガードらが、あわただしく席を立つ。それを見たジョシーも、人込みをかき分けて走り出す】

ジョシー「お祭りの始まりね」

【と、その瞬間、声がかかる。見れば夫のジーンと双子の娘、義母だった】

ジョシー「ジーン!? ここで何を……」

ジーン「驚かそうと思ってね。子供たちに、ママが一生懸命働いているところも見せたかったし」

双子たち「ママ! パパがカートに乗っていいって!」

ジョシー「ああ、素晴らしいわ、あなた。でも……」

ジーン「わかってる、忙しいんだよね。そんなきみを誇らしく思うよ。女性が働くのはいいことさ、気持ちに張りが出る。引き留めてはおけないな。また数時間後にね」

ジョシー「ええ、それじゃ」

【急いでその場と立ち去るジョシー。そのあとを、ペックらが駆け抜ける。一方、ジョシーの義母は、来場客の人込みの中に、初老の男の顔を見つける】

ジーン「おい、危ないぞ!」

義母「まあ! あの男だわ!」

【義母の視線の先にいたのはアーヴィングだった。次回へ続く】 

Lady Killer

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