Fables vol.5 "The Mean Seasons" (あらすじ翻訳1)
※『Fables』は、おとぎ話を題材にしたアメコミです。悪の勢力によって、おとぎ話の世界「ホームランド」から追放されたさまざまなキャラクターたちが、現実世界で素性を隠しながら生活しています。キャラクターたちは自らをフェイブルズと称しています。
チャプター1「残酷な夏」
【シーン1】
産気づいたスノウのもとに、駆け付けるビグビー。その顔に、普段の冷静な様子はうかがえない。手術室の前には、ブルーボーイ、コール老王、プリンス・チャーミングが待機している。
ビグビー「何か進展は?」
ブルーボーイ「何も。昨日から陣痛が続いているよ」
ビグビー「なら帰っていいぞ。投票してこい」
ブルー「今朝もう行ったよ」
新たな市長選について、現職のコール老王は、その結果がどうなるか、気が気ではない。一方、プリンスは落ち着き払ってふるまっている。
【シーン2】
フェイブルタウンではすでに投票が始まっていた。人々はウッドタウンビル内に設けられた投票所で列をなしている。どちらに投票するかと問うシンデレラに対し、フライキャッチャーは「スノウ・ホワイトって書いた」と答える。
【シーン3】
スノウの出産が近づいている。スノウに強くいきむよう、スウィンハート医師が呼びかけると、ついに1人の女の子が誕生した。
スウィンハート「見なさい、スノウ。健康で完全に普通の女の子だ」
スノウ「普通ですって? しっぽが見えないの?」
スウィンハート「しっぽじゃない。へその緒だ。いま切るよ」
スノウ「ああ、よかった。気絶しそうよ。この子を抱いてもいいかしら」
しかしスウィンハートはスノウの申し出を否定する。スノウの腹はふくれたままだ。どうやら三つ子かそれ以上のようだと言う。
【シーン4】
動物形態のフェイブルズが住まうファームでも、同じように投票がおこなわれていた。どうやら動物たちは前足をスタンプ代わりにして、どちらに投票するかの意思表示とするようだ。
【シーン5】
スノウの出産はまだ続いており、すでに数十時間が経過していた。
スウィンハート「これが本当に最後の子だ」
スノウ「さっきも最後って言ったじゃない! もう出てこないでって言って!」
スウィンハート「もうあと少しだ」
スノウ「もう勘弁してよ! なんでもあげるから!」
手術室の外では、ビグビーがじりじりしながら待っている。両手はオオカミのそれになっており、長時間続く出産に彼の気も立っているようだ。ビグビーは、スノウの体力が限界近くであると感じ取っている。
【シーン6】
市長選は投票の集計に入った。ウッドランドビルの前で、コール老王とフライキャッチャー、プリンスとホブズがそれぞれ話している。
コール老王「フライ。結果が出た段階で、すぐに再集計させてくれ。私が言うより、君が要求したほうがいいだろう。それとこっそりプリンスの陣営をうかがって、私がいつまでペントハウスにいられるか、様子をうかがってきてくれ」
フライ「俺がやるんですか? 荷が重いですよ、それは」
一方、プリンスは余裕だ。
プリンス「結果が判明したら、すぐにダンスホールで祝賀会の手配をしてくれ。それと、コール老王になるべく早急にペントハウスから退去するよう言伝を。ああ、それとスノウに出産祝いのバラを60本届けてくれ」
ホブズ「大変よろしいかと」
ビルの敷地内では、トラスティー・ジョンがさめざめと涙を流している。フライが聞けば、先の木製人形たちの襲撃によって、長年手入れしていた庭園がメチャクチャになってしまったという。フライはそれを慰める。
【シーン7】
集計の結果、フェイブルタウンの新市長はプリンス・チャーミングに決まった。ビル内のダンスホールでは祝賀会が開かれ、プリンスは早くも美女たちとダンスを楽しんでいる。しかしジャックは沈んだ表情だ。カイが話しかける。
カイ「お前にとってはうれしい結果かな、ジャック? 新体制下のほうが、新しい悪だくみも成功しそうじゃないか」
ジャック「そう思うか? 俺が思うに、この街はひどい場所になるぜ。俺たちは長い間うまくやってきたが、これももう終わり。最後。終了だ」
浮かれて踊っているプリンスや、新しい警備主任を約束されたビーストらを尻目に、ジャックはそう答える。
カイ「かもな。だがローマ帝国だって、崩壊するまで500年かかった。まだしばらくはいい日もあるだろうさ」
ジャック「俺にとってはそうでもないだろうな。俺はもう行くよ」
【シーン8】
そのころ、ビグビーは、自分とスノウとの間に生まれた6人の子らを眺めていた。何人かは、狼男のようにグレーやこげ茶の体毛におおわれている。
ビグビー「この子たちを見てみろ、スノウ。六つ子だ。ほとんど人間そのもののだし、健康そのものだ」
スノウ「完璧に人間に見えるのは、1人だけね」
現世で暮らすには、完全に人間に見えなければいけない。明らかに獣人のように見える子らは、ファームで育て、暮らすしかない。スノウはそうビグビーに伝える。
【シーン9】
プリンス当選の祝賀会はまだ続いている。プリンスは、選挙公約に掲げた「動物型フェイブルたちの変身自由化」について、魔女たちに話しかける。
プリンス「変身魔法の価格について、一度みなさんと話し合う必要がありますね。呪文はいつごろから準備できますか?」
フラウ「できないね」
プリンス「なんですって?」
フラウ「馬鹿な王子様だね。私たち魔術師は、確かに市の要望に応えてきたけど、かなえてやれるくらいのレベルに要望をカットしてきたからだよ。もう私たちの魔力は限界ギリギリなんだ。これ以上、変身魔法を使うことはできない。現世人たちの大量生産品とは違うんだよ」
フラウはプリンスに対し、選挙公約を立てる前に相談しなかったことを指摘する。プリンスは青ざめた顔で会場を後にする。
【シーン10】
選挙に敗れたコール老王は、ペントハウスで一人頭を抱えている。
コール老王「私が何をしたって言うんだ?」
【シーン11】ウッドランドビルの地下の一室。壁にはりつけにされたバーバヤガーが、フラウに対して口汚い呪詛を投げかけている。フラウは聞く耳を持たない。
バーバヤガー「この手足が自由になったら、フェイブルタウンを破壊しつくしてやる。この現世の地球も丸ごと塩漬けにしてやる」
フラウ「なるほど、やればいいさ。だがその前に、話をさっきの議題に戻していいかね。魔王とはいったい誰だ?」
【シーン12】
フェイブルタウンでの戦いを探るジャーナリストのケビン・ソーン。彼は何かが起きていることを察知しているが、事件の核心をつかめずにいる。しかし独自調査のために、日記をつけることにした。
【シーン13】
ビグビーとスノウの六つ子を見るために、ブルーボーイやフライキャッチャー、コール老王、シンデレラ、ブライア・ローズ(眠れる森の美女)などがやって来た。新生児室のガラス越しに、赤ん坊らを眺めている。
ブライア「名前は決めたの?」
ビグビー「いくつか。だがスノウに却下された」
スノウ「あの赤毛の子は、ブロッサムって名前にしようかと思う。体毛がローズ・レッドみたいだし」
コール老王「コールってのはいい名前じゃないか?」
フライ「アンブローズとか」
ブルーボーイ「アンブローズなんて名前聞いたことないよ」
フライ「俺の本名だよ」
突然、赤ん坊の一人が保育器の中で立ち上がろうとした。驚くスノウ、ビグビーらの前で、六つ子の体が少しずつ保育器から浮き上がっていく。そのまま赤ん坊らは完全に宙に浮いてしまった。(続く)
Fables Vol. 5: The Mean Seasons (Fables (Graphic Novels))
- 作者: Bill Willingham
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