Fables vol.5 "The Mean Seasons" (あらすじ翻訳2)

※『Fables』は、おとぎ話を題材にしたアメコミです。悪の勢力によって、おとぎ話の世界「ホームランドから追放されたさまざまなキャラクターたちが、現実世界で素性を隠しながら生活しています。キャラクターたちは自らをフェイブルズと称しています。

 

チャプター2「長く、厳しい秋」

【シーン1】

ウッドランドビルの地下の一室で、かつての戦いで捕らえた木製人形の一人が尋問されている。尋問をおこなうのはビグビーとシンデレラ、そして次のセキュリティ担当であるビースト。尋問にかけられている木製人形は、戦いが終わった時と同様に、頭部だけの姿である。

ビグビー「洗いざらい話してくれたら、ほかの仲間が待つ部屋へもどしてやる。叫ぶのも駄々をこねるのも、好きにしろ。だがお前の運命はお前次第だ。全部話してくれれば、独りぼっちもすぐに終わるさ」

木製人形「わかったよ。で、前回はどこまで話したっけ?」

シンデレラ「ゲートについてよ」

木製人形「ああ、ゲートな」

木製人形は、ホームランドでのことを語る。彼によれば、魔王は現世と通じるゲートを早急に閉鎖するよう命じたらしい。強力な魔力によって支配される自らの帝国が、銃火器や近代兵器、テクノロジーによって脅かされることを恐れているのだという。

 

【シーン2】

新たな副市長であるビューティーが、行政オフィスに入ってくる。部屋には、赤ん坊たちを寝かしつけたばかりのスノウがいた。六つ子たちは浮かび上がってしまわないように、ひもでベビーサークルにくくりつけられている。

スノウ「一度に2人しかお乳をやれないでしょう。残りの子たちは、餌を待ちきれないひな鳥みたいに騒ぐもんだから大変よ」

ビューティー「でも、あなたにとっていい影響があるみたいね。今のあなた、すごく元気そうに見えるんだもの。セックスのほうもいい感じ?」

スノウ「え…ええ……。そうね、再開すべきかも……。月末にはファームに移動しなきゃいけないし。その前に、あなたに教えておくべきこともあるの。バフキンとブルーボーイは解雇しちゃダメ。彼らの仕事ぶりはプライスレス。何がどこにあるか把握してるし、その日にやらなきゃいけないタスクも知ってる」

とはいえ、自分の仕事は責任をもって自分でやらなければいけない。新市長のプリンスは、コール老王よりも実践を好むタイプだろうから……。スノウはビューティーにそう伝える。

 

【シーン3】

ビルの屋上にあるペントハウスでは、コール老王が荷物をまとめていた。

コール老王「手伝ってくれて感謝する」

プリンス「就任式の前日までには引っ越してくれるとありがたいですね。ここで式のアフターパーティーをするので」

プリンスはホブズに、もっと大きく豪華なプールを建造するよう注文する。失意のまま、肩を落としてかつての自宅から出ていくコール老王。

 

【シーン4】

スウィンハート医師は、ブルーボーイの自宅に問診に来ていた。彼はブルーボーイの指を見て、完全に治ったこととかつてのようにトランペットを演奏できるだろうと伝える。そのとき、コール老王が部屋を訪ねてくる。老王は、次の部屋が見つかるまでブルーボーイの部屋に居候することにしたようだ。ブルーボーイは、望むだけ部屋を使ってくれて構わないと老王に告げる。

 

【シーン5】

木製人形への尋問は終わった。尋問で得た情報は厳重に保管するよう、ビグビーはシンデレラに命じる。その後、ビグビーとビーストはシンデレラと別行動に移る。

ビースト「で、なんでシンデレラがこの仕事を?」

ビグビー「彼女は諜報員の一人だ。警備主任を引き継ぐなら知っておけ」

警備主任の仕事は、フェイブルタウンの治安維持を請け負うことだけではなく、非公式な諜報員らの統括も兼ねている。そしてこの仕事を引き継ぐには、ボスである市長や副市長にさえも機密を保たなければいけない。ビグビーはビーストをビルの地下深くへと案内しながら、「フェイブルタウンの未来がどうなるかは、お前の能力にかかっている」とビーストに伝える。

 

【シーン6】

行政オフィスで寝ているバフキンのもとに、ブルーボーイがやってくる。

ブルーボーイ「新しいルームメイトがやって来たから、自分の部屋でトランペットの練習ができなくてね。ここを使いたいんだ。バックルームで眠っていいからさ」

バフキンは快諾し、枕をもって部屋から出ていく。その姿を見送りながら、ブルーボーイは彼に別れの言葉を告げた。

 

【シーン7】

ビル地下深くまでやってきたビグビーとビースト。扉を開けると、そこには一匹のガチョウがテレビを見ながら座っていた。

ビグビー「彼女がグドラン、金の卵を産むガチョウだ」

グドラン「どうもビグビー。こんにちは、ビーストさん」

ビースト「なんてこった。ホームランド侵攻のとき、魔王軍に殺されたんじゃ?」

グドラン「ビグビーと私の作り話なの、それ」

ビグビーがグドランが座っている麦わらの台の下を探ると、そこから金の卵が見つかる。これこそが、非公式の諜報活動を継続するための資金になるのだ。「この黄金を、足のつかない現金に変えてくれる男も紹介してやる。俺はしばらくしたらタウンから出ていくが、お前は面倒な仕事に首を突っ込んだってわけだ」。ビグビーは金の卵をビーストに投げながら、そう告げる。

 

【シーン8】

ビグビーからビーストへ、スノウからビューティーへ、それぞれ仕事の引き継ぎが終わった。ビグビーとスノウは、2人で公園の池のほとりを歩いている。

スノウ「私とあの子たちは明日、ファームへ行くのよ。あなたはどこへ行くの?」

ビグビー「わからん。だがここにはいられない」

スノウ「フェイブルタウンには、まだあなたが必要でしょう」

ビグビー「俺は数世紀のあいだ、この街に尽くしてきた。だが困ったことに、自分の子供たちが向かう場所は、俺がいてはいけない場所だ。自分の仕事はもう十分以上にやった。次はほかのやつが担当する番だ」

獣人にしか見えない六つ子を育てるには、ファームへ行くしかない。スノウはそう決めた。しかし「悪いオオカミ」であるビグビーは、動物型フェイブルズの住むファームへ行くことはタウンの法律で禁じられている。

スノウ「もう会えないの?」

ビグビー「そんなことはない。スノウ、俺は子供たちにできるだけ近寄らないつもりだ。だがいつまでそれを守れるかはわからない。遅かれ早かれ、いつか君と子供たちに会いに来るだろう。そのときが来たら、どんな力でも、どんな魔法でも、地球上のどんな生き物でも俺を止めることはできないだろう」

スノウ「私たちが創り上げてきたすべてを、捨てていくつもりなの?」

ビグビー「俺たちが創ったのはな、スノウ、あの子たちだけだ。その子供たちを、君はファームへ連れて行こうとしている」

スノウ「じゃあどうすればいいの?」

ビグビー「簡単なことだ。ファームへ行くのはやめて、俺と一緒に来い。この世界には、まだ誰にも見つかっていない森がある。そこであの子たちを育てればいい。フェイブルズにも現世人にも邪魔されずにな」

スノウはビグビーの胸に顔をうずめてしばしすすり泣いた。

スノウ「ああ…私にはできない、ビグビー。フェイブルタウンのみんなを裏切ることも、森で暮らすことも」

 ビグビー「そうだろう、スノウ。君がかつていじわるな王妃から受けた仕打ちを考えれば当然のことだ。君はまだお城のお姫様という幻想の中で嘆いている。俺の居場所は、犬小屋しかない」

ビグビーはそう言い残し、スノウに背を向けて立ち去った。

翌朝、スノウは荷物をまとめて、六つ子らとバンに乗り込んだ。運転手はフライキャッチャーだ。新市長プリンスやコール老王、ビースト、シンデレラ、ジャックらに見守られ、タウンを去っていった。ビグビーは、その様子を離れた場所から見つめていた。スノウと自らの子らの乗ったバンが遠ざかっていく中、彼はタクシーに乗り込み、どこへともなく走らせる。

 

【シーン9】

スノウとビグビーはタウンから去った。ビューティーが行政オフィスを、ビーストが警備主任を担当することになる。ビューティーは、オフィスがようやく自分一人のものになることを喜ぶが、そこへ新市長のプリンスもやって来た。すでに彼自身のデスクも行政オフィスに運び込まれている。

プリンス「これからはもっとダイレクトに市政にたずさわろうかと思ってね。で、ブルーボーイとあのお猿さんはどこだ? 最初の激励演説をやろうじゃないか」

ビューティー「知らない。そういえばしばらく見かけてないんだけど」

ビースト「早くも前途多難だな」

 

【シーン10】

その日の終わりごろ、スノウたちはファームへと到着した。ファームは歓迎ムード一色で、ローズ・レッドのほかキツネのレイナード、熊の夫婦、三匹の子豚らが出迎えてくれる。姪っ子・甥っ子らの顔を見るために、ローズがバンの後部ドアを開くと、2人の赤ん坊が浮遊能力でどんどんと空へ浮かび上がっていく。

スノウ「どうしよう!」

ローズ「心配しないで。あの子らを捕まえるのよ!」

数羽の鳥たちが浮かび上がった赤ん坊をキャッチした。スノウは喜びながら鳥たちに感謝の言葉を伝える。

 

【シーン11】

荷物を運び入れて、子供たちを寝かしつけたスノウ。ローズは彼女に、ビグビーとはどうなったかと質問する。

ローズ「ロマンティックな別れをした?」

スノウ「全然。昨日はケンカ別れしたし、今朝は話もしなかった。誰にも見つからない場所に行くと言っていた」

ローズ「よかった」

スノウ「どういうこと?」

ローズ「すねてるのよ、ビグビーは。あなたたちのことを気にかけてる証拠だわ。誰が見ても当たり前のことでしょうけど」

ローズはスノウをじっと見つめて言葉を続ける。

ロース「あなたたち2人は見えない鎖でつながっている。どれだけケンカしても、どれだけ離れていても関係ない。初めて会ったときからそうだったのよ」

スノウはそれでもビグビーが去ったことを嘆くが、きっと彼は戻ってくると、ローズはそうスノウに言い聞かせた。

 

【シーン12】

同日深夜、プリンスのペントハウス。女たちと寝ているプリンスのもとに、ホブズがやってくる。彼はプリンスを起こし、バフキンが行政オフィスのバックルームに隠れていたことと、ブルーボーイがいなくなったことを告げる。

プリンス「どうやって? ゲートは閉じているんだろ?」

ホブズ「どうやら何かを持ち去っていったようです。姿隠しのマント、ヴォーパル・ソード、それとピノキオの体。ほかにも盗まれたものがないかチェック中です」

 

【シーン13】

同じころ、スノウは誰かが呼ぶ声に目を覚ます。目を開くと、例によって首だけになったコリンがいた。また夢の中なのだ。

コリン「君が呼んだんだよ、スノウ。何か気になることがあるんだね」

スノウ「コリン、最悪のときは終わったのよね? これから事態はよくなる?」

コリン「ああ……スノウ。私にそう言うことができたら、どんなにいいだろう。そう言えたなら…」(続く) 

Fables Vol. 5: The Mean Seasons (Fables (Graphic Novels))

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