本気!(マジ)

本気! と書いて「マジ」です。

作者は立原あゆみ。ちなみに男性です。会うまで手塚治虫も勘違いしてたとか。

「絵柄で食わず嫌いされてる漫画家」ランキング第1位ですね。俺調べ。

しかしきみ、男だったらこの漫画は読んでおいてほしい。

主人公の白銀本気(しろがね もとき)、通称マジはヤクザです。

が、ヤクザ漫画にありがちな、ドンドンパチパチや成り上がりなんてのはおまけ。

それよりも主人公・本気の“任侠”を読むのが物語の中心です。

とにかくこの主人公、男が立っている。

えーと、つまり、どういうことかというと、

正々堂々としている。弱い者の盾になる。約束を守る。ホレた人間には命かける。

自分を犠牲にする。人を信じる。カネに頓着しない。無駄な暴力を振るわない。

部下のために体を張る。親分・兄貴のために体を張る。

情理をわきまる、そのためなら親分・兄貴とだってケンカする。

ここまで書くと、そうとう嫌味な人間なんでねーのと思うかもしれんが、

そう見えせないのがこの作品のスゴイところ。なぜでしょうか。

理由は主人公そのものにあって、謙虚なんです。

どうあがいても結局はヤクザであることを自覚しているのです。

「やくざなんつうのはな どうしょうもねえバカがやるこった」

おまけにページをめくるたびに、主人公は己の心境を独白している。

ヤクザものとは到底思えないモノローグの多さ。心境のセリフ多すぎ。

正直なところ、リリカルとさえ言ってもいい。ほんとだよ。抒情的。

ここらへんのセンス、少女漫画も手がけた立原あゆみの手腕が光ります。

でも、ここまでやるからこそ、主人公の真意がわかる。

「ああ、本気(シャレでなく)なんだな、一途なキャラで描くんだな」と分かる。

それはもう、しょせんヤクザがどうとか、現代の男性性がどうとか、

そんなん瑣末なことで、ひとりの“男”が在るのだと。

ご都合主義なエピソードもあります。話のこんがらがりもたまにあります。

でもいいんです。男はいつだって“男”を読みたいのです。

そして、また、“男”にホレたいのです。