シャイニング

きたよ、キューブリック

無理っぽい。けどなんとか面白さを伝えて見ます。

あいだに風邪ひいたりしてましたが、

夏のホラー特集は、とりあえず今日でいったん終了。

最後の作品は、スタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』です。

スティーブン・キングによる同名小説が原作ですが、

そちらは未読なので、比較検討はまた今度。

あくまで、この映画単体としての魅力を考えてみたいです。

本作を観た人は、まず間違いなく、こう言うかと思います。

「わからん」。

いや、あらすじは解説できますですよ。

豪雪地帯に位置するとあるホテル。

冬季は利用客もおらず、ほぼ陸の孤島状態。よーするに閉鎖環境。

夫のジャック・トランス、妻のウェンディ、息子のダニーら3人は、

冬の間だけそのホテルの管理役を請け負うことになったのだが、

ジャックは徐々に精神に変調をきたしていく……。

でも、まともに解説できるのはここまで。

中盤以降は加速度的に謎と不安が増殖し、しかもそれらについての説明は、

ほとんど視聴者の解釈にゆだねられるという投げっぱなしジャーマン。

ダニーが目にする不気味な双子や血の正体は? そもそもなぜ双子なのか?

ホテルには残された不気味なウワサとは?

ジャックはそれが原因で狂ってしまったのか? 

仮にそうなら、なぜジャックでないといけなかったのか?

それとも、ホテルは関係なしに、ジャック自身が原因でキレたのか?

ジャックも、狂ってしまってからは奇怪な人物やと会話したり、

ありえない光景を目にするようになるが、それは現実なのか?

狂人が生み出した幻覚なのか? あのクマの着ぐるみは一体?

ダニーの第六感とこの事件の因果関係は?

とまあ全編にわたって「?」だらけ。説明がつく要素のほうが少ないです。

いやまあもちろん、これらの謎要素を観る側が解釈することは可能よ。

だけども、明確な答えは用意されてない。

あくまでも不安をあおるだけあおって、いきなりハシゴを外される感じ。

それのどこが恐いのかといわれると、返答に困るんだけど、

それでもやっぱりこの作品は恐いのよ。

場面のつなぎ方、神経を逆なでする音響、唐突に挟まれる不気味シーン、

ステディカムを効果的に使った臨場感あるカメラワーク。

ジャック役のジャック・ニコルソンの演技はマジで突きぬけてるし、

ウェンディ役のシェリー・デュバルの恐怖顔&叫び声は鬼気迫るものがある。

これは余談だけども、ロンドン王立大学の研究チームの発表によれば、

数学的に世界最高のホラー映画なんだそうです。→参照

ストーリーや設定が恐いわけでもないのに、これだけ恐いってことは、

ホラー作品の神髄ってのは演出や見せ方にあるんだなということが、

『シャイニング』を観るとよく分かる。

そういう意味では、ホラー映画というよりも、

純然たる「恐がらせ映像」といったほうが正しいのかも。

たぶんですが、本作を監督したキューブリックなら、

サザエさん』だって最小限の改変でホラー映画に仕立て上げたはず。

まあとにかく、唯一無二の面白さと恐さを兼ね備えた、

得難い作品であることは間違いない。観て損はしないっす。おススメ。