グルームパーティー

 よくさ、「優れた漫画は、読者である子どもを“少し背伸び”させてくれる」……、
みたいなこと、言うじゃない。

いわゆる名作と呼ばれている少年漫画・少女漫画は、
想定読者が少年・少女であっても、暴力や恋愛、体制への反抗、
葛藤、もちろんお色気といったアダルト(エロのみにあらず)な要素を含んでいる。

それゆえに少年・少女を成長させてくれるし、
年齢を重ねてから読むと「そういうことだったのか!」と面白さが理解できることもある。

んで、こうした「アダルト成分の含有具合による面白さの感じ方の違い」が
最も顕著に表れるジャンルってなんだろうと考えると、
実はギャグ漫画なんじゃないかと思っちゃうわけ。

例えば子どものときに読んだギャグ漫画って、
多くはウンコ・チンコといったの分かりやすい下ネタや語感、ナンセンスなビジュアル、
展開のイキオイ、キャラのダイナミズムなんかで笑わせようとするよね。

それが想定読者が成長するにつれて、だんだんとシュールさやツッコミの巧みさ、
間の取り方、微妙な空気感なんかで笑わせようとするギャグ漫画が増えていく。

要するに、『絶体絶命でんぢゃらすじーさん』と『伝染るんです』は同じギャグ漫画だけど、
読者を笑わせようとするアプローチは全然違う。
その違いは、作品にどれだけアダルト成分が含まれているかに由来するのではないか?
と、個人的に思うわけです。

さて、本題。今回は川島よしお『グルームパーティー』です。
ジャンル的には4コマのギャグ漫画なんですが、
本作には上記でいうところのアダルト成分がこれでもかっつーくらい含まれています。

何を材料にしているかというと、例えば、落語、ヤクザの実録シリーズ、時代劇、下町、
水産業(寿司とか魚屋とか)、日活ロマンポルノ、昭和期の女優・俳優、etc、etc...

さらには下ネタも多いんだけど、
コロコロコミックなんかには まず掲載されないような本物のアダルト具合。
ストリップ劇場や“スカートの下のブルマ”、水商売、ビニ本といった
大人のエロを知ってて初めて楽しめる下ネタが多い。

こういった材料を、オチの余韻やシチュエーションの妙、
ネタの投げっぱなし具合を楽しむような“味わい深さ”で調理していく。

「おさな妻」シリーズ、「さそり」シリーズ、「うちの猫」シリーズといった
オリジナルキャラのネタもレベルが高く、“なぜか読み返したくなる笑い”が満載です。

これが少年チャンピオンで4年以上連載されていたということに、
秋田書店の底力というか、ギャグに対する意欲を感じる。

単行本1~2巻あたりこそ、吉田戦車的な“不条理”ネタも目立つものの、
その後は上述したような、とても少年漫画向けとは思えない笑いが増えていきます。
おまけに絵も加速度的に上手くなっていき、4コマとは思えないほど丁寧な絵柄に。
別作品『ナックルボンバー学園』での推薦文では、噺家の春風亭昇輔(瀧川鯉朝)が
「毎コマの描き込みは多分4コマ界で一番コストパフォーマンスが高く~」と評するほど。

読めば読むほど味わい深くなる、スルメか酢コンブのような1冊。
面白さを説明するのが難しいんだけど、
いろんな4コマ漫画やギャグ漫画を読んできた人ほど楽しめると思いますです。
深夜ラジオ的なノリで寝る前とかに軽く読めるので、
何気に一番読み返している漫画かも知らんなー。作者の別作品もおススメ。5つ星。