The Last of Us (ラスト・オブ・アス)

以前から「早く発売しろー」と呪詛のようにつぶやいていた『The Last of Us』、
ようやく発売されたので、買って、プレイして、クリアした。

で、これがすごかった、楽しかった、会いたかった、Yes!(どうでもいい)

ざっと概要から説明。

ジャンルとしてはアクション×アドベンチャー
背後霊視点からキャラを操作し、敵を倒し、仕掛けや罠を説きながら、
チャプターごとにさまざまなステージをクリアしていく、というものです。

開発会社のノーティー・ドッグは『アンチャーテッド』シリーズの開発元なんだけど、
ぶっちゃけアンチャと似ているといえば、分かる人には分かるはず。
なので、ゲームとしての革新性やオリジナリティは、驚くほどでもないです。

が、本作はとにかく物語とその見せ方が素晴らしい。
そうです、本作はストーリーが見どころのゲームなのです。

あらすじはこうだ。

人間に寄生する謎の菌類が大発生した21世紀のアメリカ。
寄生された人間──感染者は理性を失い、人間を襲う凶悪な存在になり果ててしまう。
感染者に噛まれると、その人もまた感染してしまうことから、
アメリカの国土は急速に疲弊し、荒廃していった。

パンデミックから20年後、文明社会は大きく後退し、
大都市は軍隊の厳重な支配下に置かれるようになっていた。
そんな都市のひとつ、ボストンで運び屋として働く壮年の男性・ジョエル。
パンデミック時の混乱で娘を失っていた彼だったが、
ある事件をきっかけとして、一人の少女を“荷物”として預かることになる。

少女の名はエリー。14歳ながらも、大人びた立ち振る舞いとタフさを見せる彼女には、
とある重大な秘密が隠されていた……。


こうしてプレイヤーはジョエルを操作し、エリーを守りながら、
感染者や野盗たちと戦いつつ、荷物の届け先まで旅を続けることになるわけ。

あらすじだけ読むと、いかにもハリウッド的な印象を受けるかもですが、
ハリウッド的なのは舞台設定だけ。
感染者の原因究明も、強権的な軍隊との対決も、黒幕との決戦も、一切なし。
物語の中心は、あくまでもジョエルとエリーの関係性です。

すさんだ毎日と、娘を失った悲しみから優しさや心のゆとりを忘れたジョエルは、
エリーに対してもぶっきらぼうに振る舞う。

エリーはというと、大人びた態度や子どもとは思えない気丈な姿を見せるけども、
ときおり年相応の少女らしいあどけなさも見せる。

ともに死線をくぐり、ときには感情をぶつけ合い、
様々な人との出会いや別れも経験しながら、徐々に2人の距離感は縮まっていく。

文章で説明すると何でもないように聞こえるけど、
ストーリーを無駄に広げず、2人の関係のみにピントを合わせているので、
余計な要素がそぎ落とされて、よりストーリーに没頭できるつくりになってます。

何気ない表情や声の抑揚、徐々に親しくなっていく会話内容など、
少しずつ変化が感じられる演出が非常に見事。
シンプルで、無駄がなく、ブレていない。

ゲームに限らず創作全般にいえると思うんだけど、
“余計な要素を入れない”ってのは、実は結構すごいことで、
「絶対にこの範囲・この要素からピントをずらさない!」と、
明確に覚悟しないとなかなかできないことです。

JRPGを例に挙げるなら、需要不明なカードゲームや恋愛要素が入ったせいで、
本当にプレイヤーが楽しむべきコア部分の味が薄れてしまうってのはよくある。

でも本作ではそれを意図的に避け、地に足を付けたまま物語を完結させた。
それがすごい。職人芸的な引き算の美学を感じる。

ラストも、微妙にもやっとさせる何かを感じさせて終わるんだけど、
驚くことに「だがそれがいい!」と思えるんだよ、なぜか。
たぶん、2人だけの人間関係だから、無理にスッキリさせる必要ないのかも。


あえて欠点をあげるとすれば、敵AIがたまにバカです。
ゲーム的な限界かもしれないけど、ジョエルさえ見つからなければ、
敵の視界にエリーやその他のキャラが入っていても、ステルスが可能。
その他、無駄に走り回ったりもします。

あとストーリー中盤で、若干(ホントに少しだけ)展開がダレます。
これは海外のレビューでも指摘されていた通り。

ただ、物語以外の要素も極めて高水準。
グラフィック、最高。音響、ベリーグッド。難易度、完ぺき。

あと声優の演技も素晴らしく、プレイ時の没入感を高めてます。
日本語吹き替えも、そのまま土曜洋画劇場として放映できるレベル。

全体的にいえばPS3ユーザーならぜひともプレイしておきたい1本。
シングルプレーのクリアまでは12時間くらいだけど、
リプレー性は高いし、オンのマルチ対戦でも長く遊べる。

そして何より、開発陣の作品に対する愛情が感じられ、プレイしていて嬉しい。
「こんなゲームを作ってくれる人たちがいるのか!」って。
これが6000円(実際は5000円くらいだけど)なら、間違いなく安い。
個人的に、2013年のベストゲームに一番近いです。プレイしろよぉー。


下記からは、ラストについてちょっと考察。
ネタバレあり、読みたい人だけ反転してください。

↓  ↓  ↓

最後、感染の抗体と成りえたエリーを病院から連れ出すじゃん。

で、そのことを秘密にしたままジョエルは、エリーに対し、
「抗体の研究は打ち切られた。
 新しく生きる目的を見つけよう」みたいなことを言う。

エリーは「研究が打ち切られたのは本当だって誓って」とジョエルに言う。
で、ジョエルは「誓うよ」とウソをつく。

エリーはジョエルに対して「わかった」って言うけど、
これ、ホントは彼のウソを見抜いてるんじゃないか?
どことなく疑念を残したままの表情をしている、ように見える。

それにエリーは賢い子だし、14歳とは思えないほどタフな面もある。
「抗体をつくるためには、自分が犠牲にならなければいけない」と
ひょっとして最初から覚悟してたんじゃないか?
もしかして、あのあと、自分ひとりで研究所に戻ったのでは?

という考えが、個人的にはどうにも残る。

あとこれは完全な憶測、というかこじつけに近いけど、
メニュー画面で窓枠にエリーのナイフが置いてあるでしょ。
あれはジョエルとの別れを暗示してるのでは。
「ごめん、私は行くよ。私の代わりにナイフを置いていくね」という。
いや、ホントに何の根拠もないんですけど。

エリーはまだ子どもだし、ジョエルより未来が残されている。
将来的に再び“抗体としての自分”について決意を固めそう。
そして出て行ってしまいそう。

物語の進行にしたがって、
ジョエルとエリーは“父と娘”の関係に進展していくけど、
“父と娘”の終着駅は、やっぱり“娘の独立”でしかないわけで、
であるなら、最終的にはジョエルの元を去るんじゃないかなー。と思う。
娘はいずれ父親から旅立つものさ。

↑  ↑  ↑

ここまで。