Fables vol.3 "Storybook Love" (翻訳その10)

10回目

※『Fables』は、おとぎ話を題材にしたアメコミです。悪の勢力によって、おとぎ話の世界“ホームランド”から追放されたさまざまなキャラクターたちが、現実世界で素性を隠しながら生活しています。キャラクターたちは自らをフェイブルズと称しています。

【前回から続き。ビグビーから隠れているよう言われたスノウは、その指示に従って岩の陰に身をひそめている】

スノウ「ビグビー? どこに行ったの? 何してるのよ?」

【そこへオフロードバイクに乗ったゴルディロックスがやって来る。そのとき、にわかに風が吹き始め、次の瞬間には森の木々を吹き倒すほど猛烈な突風がゴルディを襲う。彼女はバイクごと倒される】

ゴルディロックス「何によこれ!?」

【場面転換。青髭とプリンス・チャーミングの決闘はまだ続いている】

青髭「止めろ!」

プリンス・チャーミング「もう少ししたらな」

青髭「そうじゃない、お前は誤解している。俺を倒しても、ビグビーたちを助けることはできんぞ!」

プリンス「黙っててくれないか。少しくらい威厳のある最期にしたらどうだ」

【プリンスは青髭の隙をついて、彼の左肩を突き刺した】

【再びビグビーたちのシーン。岩陰から出てきたスノウの眼前には、オオカミの姿のビグビーと吹き倒された木々があった】

スノウ「ビグビー? 終わったの?」

ビグビー「ああ。出てきてもいいぞ」

スノウ「これは…どうやって…」

ビグビー「言っただろ、親父の能力だ。俺が混血の生まれであることは、まだ話していなかったな。俺の父親は北風なんだ。親父が俺の母に一目ぼれした時に…いや、興味深い話しだが、これはまたいつか話そう」

【どうやらビグビーの父親は、おとぎ話『北風と太陽』の北風であるらしい】

スノウ「あなたと三匹の子豚の話は聞いたことがあったけど、まさか本当に家屋を吹き飛ばせるとは思ってなかったわ」

ビグビー「あの時はまだ子犬だった。今ならレンガの家も吹き飛ばせるかもしれんな」

スノウ「彼女は? ゴルディロックスは死んだ?」

ビグビー「残念ながらノーだ。だができる限りのことはした。突風だけでゴルディを殺すのは至難の業だし、それを狙ったわけでもない。だが2つの目的は達成した」

スノウ「どんな?」

ビグビー「1つは、俺たちを狙う場所を作ってやったことだ。どんな馬鹿でも見逃すはずはない。ゴルディも難なく俺たちを見つけられるだろう」

ビグビー「もう1つは、こちらのほうが重要だが、この森の風たちを味方に付けたことだ。少なくともしばらくの間は、風は俺の支配下にある」

ビグビー「この森の風は、いつでもゴルディを俺たちより風上に置いてくれる。そうすればあいつの匂いを直接かぐことができる。どこにいようと関係ない。今ならゴルディがどこにいるのか、手に取るようにわかるぞ」

スノウ「今度は私たちが彼女を罠にかけたってことね」

ビグビー「ああ」

スノウ「じゃあ私は何をすればいいの」

ビグビー「計画がうまくいっている間は、静かに隠れていろ。だが俺の想定通りに進まなかった場合に備えて、何をすべきか話しておくか」

青髭の屋敷。左肩を負傷し、劣勢に立たされた青髭

青髭「わかった、降参する。お前の勝ちだ!」

プリンス「聞く耳持たないね。降参という選択肢はない!」

青髭「た、頼む…ぐああぁっ!」

【プリンスは容赦なく青髭の胸にサーベルを突き刺した。青髭は信じられないといった表情で胸に生えた刀身を見る】

青髭「やりやがったな。俺を殺すとは…。だが俺も勝った。聞こうとしなかったのは貴様だぞ。お前のお姫様もビグビーも死んでいる。すでにな…」

【そう言って絶命する青髭。再び場面転換。倒木の下敷きになったゴルディロックスは、悪態をつきながら這い出てきた。ビグビーの予想通り、まだ五体満足のようだ】

ゴルディ「クソッ!」

ゴルディ「姿を現しなさい。近くにいるのはわかってるのよ!」

【ライフルを構えて周囲を警戒するゴルディ。その背後から、オオカミと化したビグビーが襲い掛かる】

ビグビー「お望みとあらば」