フランケン・ふらん

“医”を扱った漫画といえば、やっぱり手塚神による『ブラック・ジャック』ですな。
医療漫画というほどには、医療現場の実情をメインに描いているわけではないので、
個人的には「お医者さん漫画」とでも呼びたいところです。

医療漫画ってのは、もっとこう、『ブラック・ジャックによろしく』とか、『医龍』とか、
あとは『Dr.コトー診療所』みたいなのを指すんじゃないかと。

じゃあ“医学”漫画ってないかなーと考えたところ、ありました。

いちおー“メディカルホラー”という肩書きはついていますが、
ボク的にはこれは“医学”の漫画です。
だって毎回、医学とか生物学とかのビックリドッキリ知識や考察が出てくるんだもん。

例えば、生命の定義、人面瘡、神を知る動物とは何か?、人体のダウンサイジング
“メドゥーサの首”、人間による単為生殖、少女漫画顔への整形手術、
仮面ラ○ダーの実現、「不死」という病、カットスロートフェティッシュなどなど。

「○○が××だったら医学的・生物学にどうなるか?」という問題を、
ツギハギ美少女で人造人間で医師の“ふらん”が解決しちゃいます。おもに手術で。

ビジュアルはだいぶっつーか弩ストレートなグロですし、
死体も内臓も脳ミソも虫も触手も湯水のごとく登場します。
プライベート・ライアン』のノルマンディ上陸シーンのほうが、まだ平和。
この漫画において人命は羽毛より軽い。
だけどまー、それは「すべて医学のためなのだ!」なので、“描く必要がある”グロ。

意味のあるグロってのは理解可能ってことだから、恐怖の対象じゃあねーだろ。
生物の教科書は「気持ち悪い」かもしれないけど、恐怖小説ではないっしょ。
なのでやっぱりメディカルホラーという皮をかぶった、医学漫画だと俺は思ってます。

ともあれ、さっきも言ったように、ビックリドッキリな突拍子もない発想を
医学的・生物学観点から解釈・考察するという視点は、ほかの漫画にはないものです。
そういう意味で、今どき珍しい真にオリジナリティにあふれた漫画だと思う。
もう完結しちゃったけどね。もったいない。

ふらんはカワイイし、ヴェロニカもマヌケかわいいし、
ところどころ百合の香り(ただし死臭込み)がただよってるのもグッド。
人面ネコの沖田が繰り出す冷静なツッコミもかわいい。

しかし人体っつーか生物ってのは面白いよねー。
もっとこういう医学や生物学や、
その他理系科学を漫画の切り口で調理した漫画があってもいいのに。
「裏シートン動物記」とか、「ブラック・ファーブル昆虫記」みたいな漫画。
あー、ファーブルのほうは『ベクター・ケースファイル』だったのか?

個人的には深海生物とかをネタにした漫画が読みたい。誰か描いて。