ワイルドアームズ

もう17年も前の作品になるのねえー。
今回はプレイステーション初期の傑作、『ワイルドアームズ』です。

ジャンル的には、きわめてオーソドックスなタイプのRPGです。

フィールドは見降ろし型で、丁寧に描き込まれたドット絵が好印象。
ダンジョンだけでなく、街中にもさまざまな仕掛けやパズルが施されており、
ストーリー進行に合わせて手に入る“グッズ”で攻略していきます。
これによって隠しボスを戦ったり、隠しアイテムをゲットしたりできるなど、
当時としては高めのやり込み性が新鮮でした。

戦闘はポリゴンのグラフィックでアクティブに進行。
よくあるターン制バトルですが、キャラごとに特有のコマンドがあったり、
ターンごとにエネルギーをためて一発逆転のアビリティを発動したりと、
なかなか戦略性の高い戦いが楽しめます。

ただ、これらはあくまでも作品の魅力の一部。
本作で素晴らしいのは、やっぱりストーリーと世界観でありましょう。

物語の舞台は、西部劇とファンタジーとSFをミックスしたような世界・ファルガイア
剣と魔法だけでなく、サイエンスな要素も
物語のキーワードやダンジョンのデザインなどに上手く取り入れられてます。

主人公は、旧世界の兵器“ARMS”を使用できる心優しい少年ロディ、
ぶっきらぼうで青臭いところもあるけど、根は気さくで剣技に優れるザック、
世間知らずのお嬢様だけども、芯は強い魔法使いのセシリア、の3人。

彼&彼女らをプレイヤーキャラとして、
突如復活した“魔族”たちから世界を守る……というのがストーリーの大筋です。
世界各地を渡り歩く冒険者(“渡り鳥”と呼称される)として人々を助け、
また人々から協力を得たり、守護獣やゴーレムといった存在とも対峙しながら、
魔族からの激しい侵攻に立ち向かっていく。

こうして書くとかなり壮大な物語のように思えますが、
ときおりユーモラスなエピソードが挿入されたり、クスッとさせる仕掛けが豊富なので、
うまく緩急をつけながら、ダレることなくストーリーを進行させることに成功してます。
本筋とは関係ないサブイベントや隠しダンジョンも豊富で飽きさせないし、
ところどころにニヤリとさせられるパロディ要素もある。「はいよるこんとん」とか。

また、RPGの主要素の1つである“プレイヤーキャラへの感情移入”についても、
かなり高いレベルでまとまっています。
メインストーリーにからめてロディら3人の素性や過去の因縁を描きつつ、
サイドストーリーやちょっとした会話などでもキャラの背景を肉付けしていくなど、
キャラクターの掘り下げ方が上手く、かつ自然。
ド派手で美麗なムービーはないけれど、丁寧かつ職人芸的なストーリー構成で
知らず知らずのうちに、ロディら3人と旅しているような気分にさせられる。

主役の3人だけでなく、その他のキャラクターたちも魅力的。
妙齢の美女にして凄腕の科学者、ロリコン気味の船長、純粋な心を持つゴーレム、
ロディと同じく“ARMS”を操る14歳のツンデレ賞金稼ぎとその執事など、
ひと癖もふた癖もある人物たちが物語を彩る。

敵キャラも、ザックと因縁のある女騎士レディハーケンや、
まさに外道」としか言いようのないほどド汚いアルハザード
渋くてクールでカッコいいんだけど戦うとマジで強いブーメラン、
さらにお茶の間のアイドルにして超ハイテンション野郎・ゼットなどバラエティ豊か。

なるけみちこが担当する音楽も秀逸で、
特にOPアニメに載せて奏でられる「荒野の果てへ」、フィールド曲「荒野の渡り鳥」、
街・村でのBGM「街」などは、初めて聴くのに郷愁を誘う名曲。

かように魅力的な要素の揃った本作ですが、
約1か月後にファイナルファンタジーVIIが発売予定ということもあって、
セールス的にはパッとしましせんでした。

が、地味ながらも手抜きのないつくりでジワジワと評価を高め、
なんと発売から5年もたってから廉価版がリリース。
さらに現在でもプレイステーションアーカイブスで配信されるなど評価を維持しています。
ポリゴンバリバリな美麗ムービーも萌えキャラも奇抜な設定もないけれど、
RPGに必要な要素がハイレベルで融合している貴重な作品。
今ならアーカイブスでダウンロードしてPSPでプレイするとグッドかも。おススメ。