という、パイソニアンにしか通じないネタはどうでもいいとして、
最近、「いったい勇気とは何ぞや」、ということについてしばしば考えます。
勇気があるとはどういうことか、勇気をともなう行動とはどういうものを指すのか。
「もうちょっとこうすれば、きっとよかったのに」
「本当はこうしたかったのに、あと一歩踏み出すことができなかった」
「周囲に流されて、結局何もできずに見過ごしてしまった」
そういう状況にあったとき、つまり勇気の在り方が問われる時、
どうすれば本当に勇気をもって行動することができるのか? できないのはなぜか?
で、気になったのでAmazonで調べたら、
一番上のほうに本書がピックアップされたので、購入。で、読んだ。
概略から説明すると、本書は“勇気をもって行動した”5名の人と、
同じく“勇気をもって行動している”イスラエルの人々のエピソードを紹介している本です。
全6章で、それぞれ……
・2度の失敗を重ねながら、エベレスト登頂世界最年少を達成した野口健さん
・県警の裏金づくりを断固として拒み、のちに先陣を切って告発した仙波敏郎さん
市井の人たちの声と意見を収録しています。
5名の人たちは、いずれもニュースでも取り上げられたことのある、名のある人たち。
そして、いずれの人も、自身の行動や発言に対して、
周囲(同僚やメディア、大衆)からバッシングや批判を受けた経験がある。
ジュニア新書とあって、そのへんの経緯については平易に紹介されており、
当時のことをしっかり把握できた上で、
彼・彼女らがどのように考え、行動したのかを知ることができます。
批判・バッシングをどのように受け止めたのか、それでもなお屈しなかったのはなぜか。
どこに言動の根拠を求めたのか、そうすることでどのような変化が生まれたのか。
本作で描かれる勇気の在り方は、章ごとにそれぞれ異なりますが、
共通しているのは“困難・不安に直面してもなお自分の信じた道を肯定する”こと。
ただ単に自分の信念を通すのではなく、
“困難に直面しても・それでもなお”ということがミソです。
だから、例えば、警察官が万引き犯を捕まえるのは、勇気ではない。
しかしその万引き犯がお偉いさんの身内で、見逃すのが暗黙の了解だという、
そういう状況下での逮捕だったら、それは勇気。
同様に、素人が徒党を組んで特定人物を吊るし上げるのは、勇気ではない。
逆に「ちょっと待とうぜ」と彼らの間に入るのなら、それは勇気。
かつて自分は、勇気という言葉からは、非常に牧歌的な印象を受けてました。
なんつーか、道徳の教科書でしか語られないような概念というイメージ。
いい大人が正面切って面と向き合うには、いささか子供っぽいというか。
でもそんなことはないんだということが、本書を読むとよくわかる。
何かを成し遂げるとき、あるいはそれに失敗したとき、自らの過ちを認めるとき、
不安や非難にさらされたとき、どの場面でも試されるのは、まさに勇気なのだと。
そういうことを学べる一冊です。
あと、イスラエルの事例については、
パレスチナ問題の概略および現在の状況もわかりやすく解説されていてお得。
イスラエルの若者たちの変わりゆく気運も知れて興味深い。
基本的に中高生向けの書籍で、サクッと読み終わってしまいますが、
何歳になって大切にしなければいけないことが書かれてて、得るものが多いです。
学校の図書室に置いていてほしい良書。オススメ。