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Bill Willingham
Vertigo
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※『Fables』は、おとぎ話を題材にしたアメコミです。悪の勢力によって、おとぎ話の世界“ホームランド”から追放されたさまざまなキャラクターたちが、現実世界で素性を隠しながら生活しています。キャラクターたちは自らをフェイブルズと称しています。
<そう遠くない別の場所>
【オーバーオールを着たクマと、エプロンを着たクマ、そして地味なコートを着た、金髪のメガネの女性が森の中で穴を掘っている】
父クマ「さて、ゴルディ、これくらいの深さでいいかね?」
ゴルディ「十分だと思うわ、パパ。たぶんね」
母クマ「じゃあ、あとは子グマがコリンの残りの死体を持ってこれば、この忌々しい仕事もおしまいね」
【メガネをかけたクマ(前回、コリンの頭部を運んでいったクマ)と小鬼(同じく、前回コリンの頭部を棒の上から外した小鬼)がコリンの頭部を持ってくる】
子グマ「落ち着いてよ、ママ。ほらここに」
※ゴルディと父・母・子供のクマは、イギリスの童話「3匹のクマ」の登場人物。
母クマ「ようやくね」
ゴルディ「じゃあ誰かが来る前に早いところ頭部を穴に埋めましょう」
父クマ「君が生首を飾ろうなんて言わなければ、さっさと埋葬を終えてベッドに戻れていたんだけどね」
母クマ「そうよゴルディ、あんな見せしめは本当に必要だったの?」
ゴルディ「少しも見せしめなんかじゃないわよ、ママ。だけど、必要なものではあったわ、本当に。あれは私たちの革命が日の目を見つつあること、そしてそれが本気だということを象徴する瞬間だったのよ」
【コリンの生首を穴に投げ入れる子クマと小鬼】
小鬼「おえ~っ」
子グマ「気持ち悪い!」
母クマ「だけど、あんなに野蛮で流血沙汰にする必要があったの? それにあそこまでおおっぴらにする必要も?」
ゴルディ「あったわ。今はもう後戻りはできないんだもの。臆病な日和見主義者たちも、どちらに付くか選ばなくちゃならない時期よ。そうでなきゃ、どんな結果も受け入れるべきね」
ゴルディ「それと、もしたまにでも図書館にでも行っていれば、私のやり方で送った“メッセージ”が特別上手いやり方だったって気づくはずよ。私たちは十分すぎるほど長期間、“島”で孤立しているのよ。不当な監禁の結果としてであれば、どんな蛮行だって起きうるものだわ」
子グマ「ねえ、ゴルディ、ここは島じゃないよ」
ゴルディ「暗喩の概念を習いなさい、ブーちゃん」
【父クマと子グマが、カバーで隠されていたコリンの胴体部分も穴の中に入れる】
母クマ「でも、あなたは私たちのようにはここに縛りつけられていないわ。お望みなら街にだって行けるし」
ゴルディ「私のレクチャーのあとだっていうのに、まだわかってないの? 誰か1人が奴隷にされているのなら、みんなが奴隷にされているのと変わりない。確かに私はファームから立ち去れるわ。だけど私はあなたたちと居ることに決めたの。あなたたちの主張は、私の主張なのよ」
ゴルディ「ただサイズが“ちょうど良い”から子グマのベッドをシェアしたのだと思う?」
※「3匹のクマ」の物語のことを言っている。上記リンク先参照。
父クマ「いや、そうは思わないが」
ゴルディ「あのベッドは、重要かつ力強い政治的主張よ。我々すべてが平等だという象徴だわ。人間だろうとクマだろうと、ハリネズミだろうと、特別な種族は何もないし、違いもない。たとえ愛し合う仲であろうとも、仮に私たち自身が圧政を敷く側に立とうともね」
【木陰から1匹のキツネが姿を現す】
レイナード「あるいは、“禁断の果実”に手を出していても?」
父クマ「レイナード!」
ゴルディ「種族主義者め!」
レイナード「ゴルディ、あんたはなんでも象徴に結び付けて主張する政治屋だ。ならば、象徴の世界に生きていればよかったのに」
※レイナードは、中世フランスの物語「狐物語(きつねものがたり)」に登場する狡猾なキツネ。
母クマ「ここで何をしているの?」
レイナード「新鮮な豚肉の匂いに呼ばれたのさ。メンバー表は忘れちまったんだが、コリンはあんたらの同志じゃなかったのか? 何が起きた? 栄光ある革命には仲間割れがつきもんだが、それがもう起きたのか?」
ゴルディ「コリンは臆病ものだった。敵中にあって重要なミッションに失敗したのよ。強くない者は、裏切り者となんら変わりない!」
ゴルディ「そして、あなたはもう知り過ぎてしまったようね」
【コートの内側から拳銃を取り出し、レイナードに向けるゴルディ】
レイナード「ひえっ!」
【父クマ、ゴルディの肩を後ろからつかむ】
父クマ「バカ、何やってるんだ! みんなに聞こえるぞ!」
ゴルディ「だから何よ? 支配体制ってものは演説だけでひっくり返るものじゃないのよ」
【その間に、レイナードは森の中へと走り出す】
ゴルディ「レイナードを逃がしちゃったじゃない。あいつが誰かにしゃべる前に捕まえないと!」
ゴルディ「すべての労働者よ、目を覚ませ! 今すぐに!」
※ゴルディは極左の革命家的な描かれ方をしている。
<まさにその頃…>
【ポージーに導かれ、洞窟のような場所に案内されたローズ。洞窟内には、大小さまざまな銃火器、爆弾、大砲などが並べられている】
ポージー「さて、これでもまだホームランド奪還が不可能だとお思いで?」
ローズ「ワオ」