バットマン マスク・オブ・ファンタズム

ひさしぶりの、アメコミヒーロー作品だよ!

といってもコミックではないです。アニメ『バットマン マスク・オブ・ファンタズム』。

本国アメリカでは1993年に劇場公開されたバットマンのアニメ映画。
ただし、当然のごとく日本では劇場未公開。というかDVD化されたのが2000年って。

ざっとあらすじ。

例のごとくゴッサムシティを自警しているバットマン
しかしあるとき、ガイコツのようなマスクに鎌の手を持つ怪人“ファントム”が現れ、
名のあるギャングの大物たちを襲い始める……。

“マスクにマント”という似たような風貌から、
事情を知らない市民らはバットマンに疑いの眼を向け始め、
シティの有力な市会議員リーヴスもバットマンを公然と批判するように。

そんな折、ブルースはかつて恋人同士だったアンドレアと10年ぶりの再会を果たした。
かつての幸せを思い出したブルースは、バットマンを引退すべきかどうか迷い始めるが、
ファントムの凶行はとどまるところを知らない。さらに宿敵ジョーカーまでも登場し……。

同じアニメ版バットマンですが、以前紹介した
TVアニメ版『Batman The Animated Series』とのつながりあまりないです。

実写劇場版バットマン(バートン版やノーラン版)が、
コミックやアニメ、TVドラマ版から切り離された独自のストーリーを歩んだように、
この劇場版アニメも、表現方法としてアニメを使っているだけであって、
TVアニメ版からは独立した完全オリジナルのストーリーとして見た方がいい。

ただ、下敷きになっているであろう作品はある。
コミック版の名作『バットマン イヤーワン/イヤーツー』です。

例えば本作、ブルースがバットマンとして目覚めるまでの過去も描かれてるんですが、
単なるマスクをかぶった正義の味方から、コウモリ男として目覚めるまでの流れは、
明らかに『イヤーワン』からの影響が強い。
「悪党どもが怖がらないんだ!」みたいなセリフもあるし、
また、ファントムの造形と父娘の関係性は、『イヤーツー』が背景にあることは間違いなし。
名前も、悪党どもを始末する理由も全然違うけどね。

物語の構成は上手いし、作画の質も高い。
相変わらずバットマンは苦悩しているし、ジョーカーの狂気は素晴らしい。
「こんな物語もありえたかも」という“if”を描いたバットマンとしては、たぶん傑作の部類。

ファントムの正体は? ジョーカーとのつながりは? バットマンは本当に引退するのか?
アンドレアとのロマンスの行方は?…などなど、
70分ほどの間に、いろんな山場があって確かな見ごたえあります。
もちろん、日本語吹き替えは玄田哲章青野武の名コンビ。(青野さん…)

それと、ユニークな試みとして、なんとジョーカーのオリジンが描かれてます。

いや、別に御大層にオリジンというほどのことでもないし、
別にジョーカー誕生のエピソードまで描かれているってわけでもないんだけど、
あの真っ白顔になる前の素顔や立ち振る舞いがしっかり描写されているのは、
アニメ作品では本作だけなんじゃないでしょうか。

バットマンのイロハを知らない人でも楽しめるし、
知ってる人は細かいネタを発見しながらより一層楽しめます。
Amazonだと2000円以下でDVD買えるので、ファンは持ってて損はナシ。おススメ。