Fables vol.4 "March Of The Wooden Soldiers" (翻訳その14)

※『Fables』は、おとぎ話を題材にしたアメコミです。悪の勢力によって、おとぎ話の世界“ホームランド”から追放されたさまざまなキャラクターたちが、現実世界で素性を隠しながら生活しています。キャラクターたちは自らをフェイブルズと称しています。

【タウンのウッドランド・ビルに、大勢のフェイブルズたちが集められている】

シンデレラ「何なのよ、これ! しばらくタウンの外に行くつもりだったのに、どこも大混乱だわ」

スノウ「完全防衛封鎖よ、シンデレラ。さあみなさん、私たちは現在、紛争状態にあるわ。これまで何度か防衛訓練をやってきたわよね」

ビースト「この国がまだ英国植民地で、国民が数百万人もいなかったときにね」

ビューティー「現世人たちから隠れられるの? 侵略時にどうするかなんて覚えてないわよ。誰か覚えてる?」

コール老王「おお、なんてことだ、恐ろしい。とにかく選挙は延期しよう」

ミス・マフェット「ビグビーは? 大戦のとき、軍事訓練を任されていたでしょ?」

スノウ「最初の数年間、魔王軍が侵略してこなかったとき、私たちは愚かにもそれがずっと続くと思っていた。でも今この瞬間、私たちはまだ攻撃されていない。準備できる時間があるのよ。助けがないわけでもないし、リーダーを失ったわけでもない」

スノウ「さあ各自の役割を伝えるわ。素早く行動しなきゃいけない。私は13階に行って魔術師評議会とミーティングする。誰かに電話させて、ファームに準備するよう伝えて…」

【その時、階下から大きな音が響く】

コール老王「これは…銃声?」

ジャック「奴らだ、戻ってきやがった! 信じてなかったろ、戻ってきてジョンを撃ちやがったぞ!」

【玄関へ駆けつけるスノウら。銃を構えた黒服たちが、ボロボロになったブルーボーイを抱えて立っている。足元には、腹部を撃たれたドアマンのジョンが倒れている】

ジャック「な? こいつらが俺を襲ったクソ野郎どもだよ」

黒服「下がれ、もめ事を起こす気はない」「今日のところはな」「このドアマンが我らの通行を妨害した際、殺すこともできたが、それすらしなかったのだ」

【ブルーボーイの体を投げ下ろす黒服】

黒服「そしてこれもまだ殺していない」「慈悲深い我らが主人からの贈り物である」

スノウ「ブルー!」

黒服「平和的意志の証明だ」

スノウ「どこのクソッタレがこんな仕打ちを?」

黒服「我らを侮辱するな、女よ。敬意を払え」「そいつはただの使い捨てだ、うじ虫や毛虫に食わせるための肉にすぎん」

黒服「我らはメッセージを届けるために来た。重要な手紙だ。心して静粛に聴け」

【黒服のひとりが巻物を取り出し、読み上げる】

黒服「“フェイブルタウンおよび現世に暮らす臣民たちへ、皇帝より”」

コール老王「なんてこった、魔王からだと!」

黒服「“放蕩息子の父がするように、君たちへの愛は絶え間なく降り注がれている。無限の慈愛とともに、君たちが再びわが胸中へと戻ってくる日を切望している。力づくで君たちを連れ戻すようなことは、決してさせないでほしい。我が両目は、今はフェイブルランドの別のところへ向けられている。私が強く望むことは、自ら好んで流浪の身となった君たちが、その愚行に気づき、再び進んで我らに加わることである”」

黒服「“その推進のために、帝国公使を送る。赤ずきんとして知られる、優れた女性だ。我が庇護のもと、彼女は帝国の言葉を伝える。彼女は我らの調停のために、休むことなく働いてくれるだろう”」

黒服「“だがその間、気を散らされるような心配のタネを片付けねばならない。すなわち、わが領土から不法に持ち去られたマジックアイテムを取り戻すために、帝国兵団の一隊がそちらへ到着するということだ。アイテムのことは知られている。細心の注意を払った方がよいぞ。もし君たちがそれらを隠そうと言うのなら、我らはあらん限りの武力と怒りをもって、それを探し求めるだろう”」

スノウ「それで?」

黒服「手紙はここまでだ」

スノウ「ならそれをよこして、生きてるうちに出て行きなさい」

黒服「この文書は贈呈しよう。神聖なものだぞ」「だが手紙には書かれていなかった問題が、もうひとつある」「皇帝陛下も知らなかったことだ」

黒服「明日、我らは皇帝陛下のマジックアイテムを受け取りに戻ってくる。そのとき、ピノキオ殿もお迎えさせてもらう」

フライキャッチャー「なんだって?」

ピノキオ「なんで俺が?」

黒服「あなたが、最初に彫られた兄弟の一員だからです」「不幸にもあなたは人間に変えられてしまったが、それでも親愛なる我らの一員だ」

黒服「恐れる必要はありません。皇帝陛下の魔術師なら、あなたを再び木製に戻してくれるでしょう。荷物を集め、みなにお別れをいう時間は1日だけです」

【黒服たちは玄関から出ていく】

黒服「ここを離れるまで、全員動くな」「無差別に銃撃されたくはないだろう」「忘れるな、24時間後だ!」

ジャック「ピノキオだ! やつらはピノキオだったんだ! クソッタレの木製人間! どうりで殺せないわけだぜ」

スノウ「今はそれどころじゃないわ、ジャック。一度でいいから、重要なときに少しは空気を読んでほしいわね。フライキャッチャーとプリンス、今すぐにブルーボーイを車で病院まで運んで。到着までに、スウィンハート先生には知らせておく。それと、できるだけ早く戻ってきて。やるべきことが山ほどある」

【しばらく後、ピノキオの部屋】

フライキャッチャー「病院から電話があったぜ。ブルーの命の危険はないってさ。ピノキオ、聞いてるのか? ブルーは大丈夫だって」

ピノキオ「聞いてるよ、フライ。よかったな」

フライキャッチャー「何やってるんだよ」

ピノキオ「荷作り。あいつらの話、聞いただろ、戦いを避けるには、俺が出ていかなくちゃならない」

【おもちゃの兵隊をカバンにつめながら話すピノキオ】

フライキャッチャー「だけどあっちは3人だけだぜ。簡単に追い返せるよ」

ピノキオ「知ってる限りで3人だろ。それでも簡単なわけはない。俺もあいつらと同じだったんだ。やつらは頑丈で、強くて、食べ物も休息も必要ない。痛みも感じない。ヤバい事態なんだよ。俺は行かなきゃならない。あいつらが存在することの意味がわからないのか? 魔王軍に木製人形がいるってことは、爺さんが生きてるってことだ。爺さんがあいつらを作ったんだ。ゼペット爺さんは、魔王の捕虜になってるんだよ」