Lady Killer #4
※『Lady Killer』は殺し屋兼主婦のジョシー(ジョセフィン)を主人公にしたアメリカンコミックスです。周囲に殺し屋の顔を隠しながら、良き妻・良き母として毎日の生活を送るジョシーの姿が描かれます。
【前回からの続き。ステンホルムが、ジョシーの今後の処遇についてペックに話している】
ステンホルム「ジョシーのように、市井の人間として長く生活してきたエージェントは、結局のところトラブルの元になる」
【ステンホルムが調べたというジョシーのファイルには、彼女の過去の写真が貼られている。それを見る限り、ジョシーは幼少期から殺しの仕事をしていたようだ】
ペック「彼女が厄介者になると心配しているんですか? 彼女に限ってそれはないですよ。ジョシーは私が抱える最高の女性エージェントのひとりです。その忠誠心には疑いがない。それに、言うまでもなく私のコントロール下にあります」
ステンホルム「それは疑っておらん。だがリスクはリスクだ。彼女が現在の任務を終えたら、存在を消さねばならん……私はそう考えている。それこそが話し合いたいことだ。彼女を片付ける責任は、きみにあるようだがな」
ペック「お言葉を返すようですが、私にはどうしようもありませんよ。それより、彼女をクビにしてキッチンへ送り返せばいいじゃないですか。子育て主婦をさせればいい」
ステンホルム「あんなタイプの女に育てられるより、孤児になったほうがましだろうが」
ペック「あんなタイプって、どんなタイプですか、ボス?」
ステンホルム「一時の感情に惑わされるなよ、ペック。この仕事は人を変えてしまうんだ。結婚して子持ちになるような女性は、結局この仕事では不利なんだよ」
ペック「……では、もうすでに決まったことなんですね」
ステンホルム「まったくその通りだ。もしきみには荷が重いというのなら、すぐに別の人材をきみのポジションに置くこともできるがな。デイビッドなんかどうだ?」
ペック「……わかりました」
【伏し目がちに承諾するペック】
ステンホルム「この件に関して、これ以上の話し合いは無用だ」
【ファイルを持って退室するペックだったが、ステンホルムの女性秘書を見るなり、笑顔になって声をかける】
ペック「お待たせ」
【場面転換。ジョシーはステンホルムから与えられた仕事に取り掛かっていた。暗殺対象の、少年の家を訪れている】
少年「はい、どなた?」
ジョシー「こんにちは。私はサラ。先日、忘れ物しちゃったのよ。中に入ってもいいかしら?」
少年「えーっと、うん。いいよ」
【家の中に入りこむジョシー】
ジョシー「お鍋を取りに来たのよ、料理するのに必要なの。あなたのお母さん、いつでも取りに来ていいって言うから」
少年「ママがそう言ったの?」
ジョシー「そうよ」
少年「いつ?」
ジョシー「昨日よ、電話でね。他に聞きたいことは?」
少年「あんたがママと話したはずないよ」
ジョシー「話したわよ。こんなことでうそはつかないわ」
少年「あんたはうそつきだ。ママと話したことがあるわけない。ママは死んだんだもの。ママもパパも、ある男に殺されたんだ。おじさんが『お前も危ない』って言ってた。あんたは僕を殺しに来たんだ。そうだろ?」
【後ろ手に包丁を隠し持つジョシー。一瞬見つめ合ったのち、少年は2階へと駆け上がる。ジョシーもそれを追う。少年は自室へと駆け込み、ベッドの下に潜り込んだ。ジョシーも少年の部屋に入るが、壁に立てかけられた家族写真を手に取り、そこに写された少年とその両親の姿を見つめる】
ジョシー「あの子はもうここにはいない。逃げられた。たぶん安全な隣の家に駆けこんでしまっただろう。少なくとも、私ならそうする。
【ベッドの下で、ジョシーの独り言を聞く少年】
ジョシー「おじさんが帰ってくるまでそこに隠れていて、帰ってきたら襲われたことを話そう。だっておじさんは警察官だから。おじさんならどこか安全な場所を見つけてくれるだろう。誰も僕を傷つけない、あんぜんな場所で暮らそう」
【ジョシーは包丁を棚に置いて、部屋から出て行く】
ジョシー「ママとパパのこと、ごめんなさいね。それじゃ」
【少年の家から出て、車に戻ったジョシー】
ジョシー「クソッ!」
【涙に目を浮かべ、ハンドルを強く叩く。そのとき、ペックの車が背後に停まった。ジョシーは車を急発進させる。ペックもそれを見て、ジョシーのあとを追う。しばしのカーチェイスののち、ペックの車に接触されて、ジョシーの車はスピンして止まった】
ペック「どこへ行くんだ?」
【スピンした際に頭部をぶつけたジョシー。顔を上げると、そこには拳銃を突きつけるペックが立っていた。次回へ続く】