Lady Killer #8
※『Lady Killer』は殺し屋兼主婦のジョシー(ジョセフィン)を主人公にしたアメリカンコミックスです。周囲に殺し屋の顔を隠しながら、良き妻・良き母として毎日の生活を送るジョシーの姿が描かれます。
【前回からの続き。ステンホルムとペックをおびき寄せるため、ジョシーはひと気のない建物の中に移動してきた。ジョシーは両手にナイフを取り、ペックとその部下たちと対峙する】
ペック「銃は使うな。誰かに気づかれるかもしれん」
【ジョシーに飛びかかるペックの部下たち。ジョシーは巧みなナイフさばきで一人ずつ血祭りに上げていく。またたくまに3人の刺殺体ができあがった】
ペック「おいおい、ジョシー。せっかくそいつらを連れてきてやったのに、こんなふうに俺に恥をかかせるなんてな」
【そのとき、拳銃をかまえたルビーがジョシーのうしろから現れる。ルビーはペックに狙いをつけたままジョシーに話しかける】
ルビー「やったわね。あなたはアーヴィングのところへ行って」
ジョシー「それは想定外の行為よ」
ルビー「私とペックの間には因縁があるの」
ジョシー「計画通りにしなさい、ルビー」
ルビー「あなたの意見は聞いてない」
ジョシー「いいわ、でも素早くやりなさい。気を付けて」
【その場にルビーを残して去るジョシー。その足で、ステンホルムがいる部屋までやって来た】
ステンホルム「誰が来るか待っていたが……きみとはね。少々失望したと言わざるを得んな。これだから、この種の仕事は権限委任すべきだと言うんだ」
ジョシー「私を殺す命令、取り下げてもらうわ」
ステンホルム「きみがどう望むかなんて、私には関係ない。きみがこうしてこの場所にいられるのは、誰のおかげか忘れたようだな。きみのような女は、我々のビジネスについて何もわかっちゃいない。立ち去って、おままごとでもしたらどうかね?」
ジョシー「こうして丁重に頼んでいるのよ。命令を取り下げなさい」
【ステンホルム、吸っていた葉巻をかたわらに置いて言う】
ステンホルム「本当にそんな二重生活を望んでいるのか? お前のような女が?」
ジョシー「私が選んだ道だわ」
ステンホルム「それは間違いだ。お前に選択肢などない。俺のために働くだけだ!」
【そう言うと、ステンホルムはルビーの首を片手で絞め上げた。もう片方の手で、ナイフを持つジョシーの手を押さえつける。しかし、ジョシーはなんとか手を伸ばし、ステンホルムが置いた葉巻につかんだ。そしてその火を彼の眼に押し付ける。そのままステンホルムを壁に押し付け、ナイフを振りかざす】
アーヴィング「ジョシー、やめろ! ルビーが危ない!」
【そのときやって来たのはアーヴィングだった】
ジョシー「出て行って、アーヴィング! こいつは殺さなきゃ気が済まない!」
アーヴィング「行くんだ、ルビーを助けに。そのあとからでも、このゴミ野郎を始末する時間はある」
ジョシー「わかったわ。ボス、どこにも行かないでもらうわよ。すぐに戻る」
【ジョシーはナイフをステンホルムの手に突き刺し、壁に釘付けにした。その場を走り去るジョシー。アーヴィングは腕まくりしてステンホルムに話しかける】
アーヴィング「貴様はここにいるんだ。どうした? 俺のことがわかるか、ステンホルムよ?」
ステンホルム「ラ、ラインハルト!?」
ラインハルト「ビンゴ」
ステンホルム「やめ……やめろ! 待て、やめろおぉぉぉ!」
【ルビーとペックのもとに戻ってきたジョシー。背後からペックを羽交い絞めにするが、そのまま背負い投げされる。ペックはルビーを殴り、蹴り倒す】
ペック「いきなり出てきやがって、俺の言い分を聞く気はないのか? 俺にも抗議させろよ。うるさくて集中できないったらないぜ……」
【ペックはその場にあった大きな金属製のオブジェを持ち上げる。そして、倒れるルビーの頭部めがけて振り下ろした】
ジョシー「ルビー!」
ペック「これで五分五分だな、ジョシー。俺たちの間には、お互いに過ごしてきた過去があるよな。俺は、きみをここから連れ出す。そしたら子供たちと一緒におとなしくしてろよ、組織のごたごたが収まるまでな」
【ジョシーは落ちていた拳銃を拾い、ペックに狙いをつける。ペックはそれを意に介せず、ジョシーに詰めより、銃を持つ手を押さえつける】
ペック「そのあとは知ってるよな。俺はきみの家にまっすぐ行って、きみの愛する家族をひとりずつ殺してやる。お前も……」
ジョシー「させるか!」
【ジョシーはペックの手を振りほどき、彼の頭部を撃ち抜いた。と、そのとき義母の声が響き渡る】
義母「なんてこと、ジョセフィン! いったい……!?」
ジョシー「お義母さん? ここで何を?」
義母「あの男について来たのよ……なんてことでしょう、あいつがやったの? あの男のことは、戦時中から知っていたわ。危険な男……」
【義母はどうやらラインハルト(アーヴィング)のことを昔から知っているらしい。戸惑いながらジョシーに話す】
ジョシー「お義母さん、そのことはあとで話しましょう。今はここから出なくては。もうすぐ人が来ます。ここにはいられない。着替えを隠しています。急げばここを片付けてから、この場から逃げられる」
義母「え、ええ……でもラインハルトとあなたは一体……? あなたは何者なの?」
ジョシー「あとで話します。知りたいことも、知りたくないことも、質問すべきことも何もかも……」
【あとにはペックとルビー、そしてラインハルトに切り刻まれたステンホルムの死体が残されていた】
エピローグ
【青い制服を着たセールスレディが、ジョシーの家のドアを叩く】
ジョシー「はい、何か?」
セールスレディ「こんにちは、モリスと申します」
ジョシー「こんにちは、シュラーよ」
セールスレディ「シュラーさん、最後にお化粧なさったのはいつですか?」
【即座にドアを閉めるジョシー。部屋に戻ると、ジーンが話しかけてくる】
ジーン「誰だったんだい?」
ジョシー「エイボン化粧品のセールスレディよ」
ジーン「へえ、今の女性に人気なんだろ。きみもああいうのやってみたらどうだい?」
ジョシー「ああいうのって?」
ジーン「えーと、つまり自分で商売のやり方を考えて、自分自身で稼ぐってことさ。やりがいと自信にもなるじゃないか」
ジョシー「そうね、あなた、悪くない考えだわ。自分自身で働く……素晴らしいアイデアよ」
【微笑むジョシーの顔でEND。なぜジョシーの義母がラインハルトのことを知っていたのか、ラインハルトとステンホルムらの間に何があったのか、そしてジョシーはどうなるのか……などは続刊(予定)で語られるっぽいです】