Fables vol.5 "The Mean Seasons" (あらすじ翻訳2)
※『Fables』は、おとぎ話を題材にしたアメコミです。悪の勢力によって、おとぎ話の世界「ホームランド」から追放されたさまざまなキャラクターたちが、現実世界で素性を隠しながら生活しています。キャラクターたちは自らをフェイブルズと称しています。
チャプター2「長く、厳しい秋」
【シーン1】
ウッドランドビルの地下の一室で、かつての戦いで捕らえた木製人形の一人が尋問されている。尋問をおこなうのはビグビーとシンデレラ、そして次のセキュリティ担当であるビースト。尋問にかけられている木製人形は、戦いが終わった時と同様に、頭部だけの姿である。
ビグビー「洗いざらい話してくれたら、ほかの仲間が待つ部屋へもどしてやる。叫ぶのも駄々をこねるのも、好きにしろ。だがお前の運命はお前次第だ。全部話してくれれば、独りぼっちもすぐに終わるさ」
木製人形「わかったよ。で、前回はどこまで話したっけ?」
シンデレラ「ゲートについてよ」
木製人形「ああ、ゲートな」
木製人形は、ホームランドでのことを語る。彼によれば、魔王は現世と通じるゲートを早急に閉鎖するよう命じたらしい。強力な魔力によって支配される自らの帝国が、銃火器や近代兵器、テクノロジーによって脅かされることを恐れているのだという。
【シーン2】
新たな副市長であるビューティーが、行政オフィスに入ってくる。部屋には、赤ん坊たちを寝かしつけたばかりのスノウがいた。六つ子たちは浮かび上がってしまわないように、ひもでベビーサークルにくくりつけられている。
スノウ「一度に2人しかお乳をやれないでしょう。残りの子たちは、餌を待ちきれないひな鳥みたいに騒ぐもんだから大変よ」
ビューティー「でも、あなたにとっていい影響があるみたいね。今のあなた、すごく元気そうに見えるんだもの。セックスのほうもいい感じ?」
スノウ「え…ええ……。そうね、再開すべきかも……。月末にはファームに移動しなきゃいけないし。その前に、あなたに教えておくべきこともあるの。バフキンとブルーボーイは解雇しちゃダメ。彼らの仕事ぶりはプライスレス。何がどこにあるか把握してるし、その日にやらなきゃいけないタスクも知ってる」
とはいえ、自分の仕事は責任をもって自分でやらなければいけない。新市長のプリンスは、コール老王よりも実践を好むタイプだろうから……。スノウはビューティーにそう伝える。
【シーン3】
ビルの屋上にあるペントハウスでは、コール老王が荷物をまとめていた。
コール老王「手伝ってくれて感謝する」
プリンス「就任式の前日までには引っ越してくれるとありがたいですね。ここで式のアフターパーティーをするので」
プリンスはホブズに、もっと大きく豪華なプールを建造するよう注文する。失意のまま、肩を落としてかつての自宅から出ていくコール老王。
【シーン4】
スウィンハート医師は、ブルーボーイの自宅に問診に来ていた。彼はブルーボーイの指を見て、完全に治ったこととかつてのようにトランペットを演奏できるだろうと伝える。そのとき、コール老王が部屋を訪ねてくる。老王は、次の部屋が見つかるまでブルーボーイの部屋に居候することにしたようだ。ブルーボーイは、望むだけ部屋を使ってくれて構わないと老王に告げる。
【シーン5】
木製人形への尋問は終わった。尋問で得た情報は厳重に保管するよう、ビグビーはシンデレラに命じる。その後、ビグビーとビーストはシンデレラと別行動に移る。
ビースト「で、なんでシンデレラがこの仕事を?」
ビグビー「彼女は諜報員の一人だ。警備主任を引き継ぐなら知っておけ」
警備主任の仕事は、フェイブルタウンの治安維持を請け負うことだけではなく、非公式な諜報員らの統括も兼ねている。そしてこの仕事を引き継ぐには、ボスである市長や副市長にさえも機密を保たなければいけない。ビグビーはビーストをビルの地下深くへと案内しながら、「フェイブルタウンの未来がどうなるかは、お前の能力にかかっている」とビーストに伝える。
【シーン6】
行政オフィスで寝ているバフキンのもとに、ブルーボーイがやってくる。
ブルーボーイ「新しいルームメイトがやって来たから、自分の部屋でトランペットの練習ができなくてね。ここを使いたいんだ。バックルームで眠っていいからさ」
バフキンは快諾し、枕をもって部屋から出ていく。その姿を見送りながら、ブルーボーイは彼に別れの言葉を告げた。
【シーン7】
ビル地下深くまでやってきたビグビーとビースト。扉を開けると、そこには一匹のガチョウがテレビを見ながら座っていた。
ビグビー「彼女がグドラン、金の卵を産むガチョウだ」
グドラン「どうもビグビー。こんにちは、ビーストさん」
ビースト「なんてこった。ホームランド侵攻のとき、魔王軍に殺されたんじゃ?」
グドラン「ビグビーと私の作り話なの、それ」
ビグビーがグドランが座っている麦わらの台の下を探ると、そこから金の卵が見つかる。これこそが、非公式の諜報活動を継続するための資金になるのだ。「この黄金を、足のつかない現金に変えてくれる男も紹介してやる。俺はしばらくしたらタウンから出ていくが、お前は面倒な仕事に首を突っ込んだってわけだ」。ビグビーは金の卵をビーストに投げながら、そう告げる。
【シーン8】
ビグビーからビーストへ、スノウからビューティーへ、それぞれ仕事の引き継ぎが終わった。ビグビーとスノウは、2人で公園の池のほとりを歩いている。
スノウ「私とあの子たちは明日、ファームへ行くのよ。あなたはどこへ行くの?」
ビグビー「わからん。だがここにはいられない」
スノウ「フェイブルタウンには、まだあなたが必要でしょう」
ビグビー「俺は数世紀のあいだ、この街に尽くしてきた。だが困ったことに、自分の子供たちが向かう場所は、俺がいてはいけない場所だ。自分の仕事はもう十分以上にやった。次はほかのやつが担当する番だ」
獣人にしか見えない六つ子を育てるには、ファームへ行くしかない。スノウはそう決めた。しかし「悪いオオカミ」であるビグビーは、動物型フェイブルズの住むファームへ行くことはタウンの法律で禁じられている。
スノウ「もう会えないの?」
ビグビー「そんなことはない。スノウ、俺は子供たちにできるだけ近寄らないつもりだ。だがいつまでそれを守れるかはわからない。遅かれ早かれ、いつか君と子供たちに会いに来るだろう。そのときが来たら、どんな力でも、どんな魔法でも、地球上のどんな生き物でも俺を止めることはできないだろう」
スノウ「私たちが創り上げてきたすべてを、捨てていくつもりなの?」
ビグビー「俺たちが創ったのはな、スノウ、あの子たちだけだ。その子供たちを、君はファームへ連れて行こうとしている」
スノウ「じゃあどうすればいいの?」
ビグビー「簡単なことだ。ファームへ行くのはやめて、俺と一緒に来い。この世界には、まだ誰にも見つかっていない森がある。そこであの子たちを育てればいい。フェイブルズにも現世人にも邪魔されずにな」
スノウはビグビーの胸に顔をうずめてしばしすすり泣いた。
スノウ「ああ…私にはできない、ビグビー。フェイブルタウンのみんなを裏切ることも、森で暮らすことも」
ビグビー「そうだろう、スノウ。君がかつていじわるな王妃から受けた仕打ちを考えれば当然のことだ。君はまだお城のお姫様という幻想の中で嘆いている。俺の居場所は、犬小屋しかない」
ビグビーはそう言い残し、スノウに背を向けて立ち去った。
翌朝、スノウは荷物をまとめて、六つ子らとバンに乗り込んだ。運転手はフライキャッチャーだ。新市長プリンスやコール老王、ビースト、シンデレラ、ジャックらに見守られ、タウンを去っていった。ビグビーは、その様子を離れた場所から見つめていた。スノウと自らの子らの乗ったバンが遠ざかっていく中、彼はタクシーに乗り込み、どこへともなく走らせる。
【シーン9】
スノウとビグビーはタウンから去った。ビューティーが行政オフィスを、ビーストが警備主任を担当することになる。ビューティーは、オフィスがようやく自分一人のものになることを喜ぶが、そこへ新市長のプリンスもやって来た。すでに彼自身のデスクも行政オフィスに運び込まれている。
プリンス「これからはもっとダイレクトに市政にたずさわろうかと思ってね。で、ブルーボーイとあのお猿さんはどこだ? 最初の激励演説をやろうじゃないか」
ビューティー「知らない。そういえばしばらく見かけてないんだけど」
ビースト「早くも前途多難だな」
【シーン10】
その日の終わりごろ、スノウたちはファームへと到着した。ファームは歓迎ムード一色で、ローズ・レッドのほかキツネのレイナード、熊の夫婦、三匹の子豚らが出迎えてくれる。姪っ子・甥っ子らの顔を見るために、ローズがバンの後部ドアを開くと、2人の赤ん坊が浮遊能力でどんどんと空へ浮かび上がっていく。
スノウ「どうしよう!」
ローズ「心配しないで。あの子らを捕まえるのよ!」
数羽の鳥たちが浮かび上がった赤ん坊をキャッチした。スノウは喜びながら鳥たちに感謝の言葉を伝える。
【シーン11】
荷物を運び入れて、子供たちを寝かしつけたスノウ。ローズは彼女に、ビグビーとはどうなったかと質問する。
ローズ「ロマンティックな別れをした?」
スノウ「全然。昨日はケンカ別れしたし、今朝は話もしなかった。誰にも見つからない場所に行くと言っていた」
ローズ「よかった」
スノウ「どういうこと?」
ローズ「すねてるのよ、ビグビーは。あなたたちのことを気にかけてる証拠だわ。誰が見ても当たり前のことでしょうけど」
ローズはスノウをじっと見つめて言葉を続ける。
ロース「あなたたち2人は見えない鎖でつながっている。どれだけケンカしても、どれだけ離れていても関係ない。初めて会ったときからそうだったのよ」
スノウはそれでもビグビーが去ったことを嘆くが、きっと彼は戻ってくると、ローズはそうスノウに言い聞かせた。
【シーン12】
同日深夜、プリンスのペントハウス。女たちと寝ているプリンスのもとに、ホブズがやってくる。彼はプリンスを起こし、バフキンが行政オフィスのバックルームに隠れていたことと、ブルーボーイがいなくなったことを告げる。
プリンス「どうやって? ゲートは閉じているんだろ?」
ホブズ「どうやら何かを持ち去っていったようです。姿隠しのマント、ヴォーパル・ソード、それとピノキオの体。ほかにも盗まれたものがないかチェック中です」
【シーン13】
同じころ、スノウは誰かが呼ぶ声に目を覚ます。目を開くと、例によって首だけになったコリンがいた。また夢の中なのだ。
コリン「君が呼んだんだよ、スノウ。何か気になることがあるんだね」
スノウ「コリン、最悪のときは終わったのよね? これから事態はよくなる?」
コリン「ああ……スノウ。私にそう言うことができたら、どんなにいいだろう。そう言えたなら…」(続く)
Fables Vol. 5: The Mean Seasons (Fables (Graphic Novels))
- 作者: Bill Willingham
- 出版社/メーカー: Vertigo
- 発売日: 2011/11/21
- メディア: Kindle版
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Fables vol.5 "The Mean Seasons" (あらすじ翻訳1)
※『Fables』は、おとぎ話を題材にしたアメコミです。悪の勢力によって、おとぎ話の世界「ホームランド」から追放されたさまざまなキャラクターたちが、現実世界で素性を隠しながら生活しています。キャラクターたちは自らをフェイブルズと称しています。
チャプター1「残酷な夏」
【シーン1】
産気づいたスノウのもとに、駆け付けるビグビー。その顔に、普段の冷静な様子はうかがえない。手術室の前には、ブルーボーイ、コール老王、プリンス・チャーミングが待機している。
ビグビー「何か進展は?」
ブルーボーイ「何も。昨日から陣痛が続いているよ」
ビグビー「なら帰っていいぞ。投票してこい」
ブルー「今朝もう行ったよ」
新たな市長選について、現職のコール老王は、その結果がどうなるか、気が気ではない。一方、プリンスは落ち着き払ってふるまっている。
【シーン2】
フェイブルタウンではすでに投票が始まっていた。人々はウッドタウンビル内に設けられた投票所で列をなしている。どちらに投票するかと問うシンデレラに対し、フライキャッチャーは「スノウ・ホワイトって書いた」と答える。
【シーン3】
スノウの出産が近づいている。スノウに強くいきむよう、スウィンハート医師が呼びかけると、ついに1人の女の子が誕生した。
スウィンハート「見なさい、スノウ。健康で完全に普通の女の子だ」
スノウ「普通ですって? しっぽが見えないの?」
スウィンハート「しっぽじゃない。へその緒だ。いま切るよ」
スノウ「ああ、よかった。気絶しそうよ。この子を抱いてもいいかしら」
しかしスウィンハートはスノウの申し出を否定する。スノウの腹はふくれたままだ。どうやら三つ子かそれ以上のようだと言う。
【シーン4】
動物形態のフェイブルズが住まうファームでも、同じように投票がおこなわれていた。どうやら動物たちは前足をスタンプ代わりにして、どちらに投票するかの意思表示とするようだ。
【シーン5】
スノウの出産はまだ続いており、すでに数十時間が経過していた。
スウィンハート「これが本当に最後の子だ」
スノウ「さっきも最後って言ったじゃない! もう出てこないでって言って!」
スウィンハート「もうあと少しだ」
スノウ「もう勘弁してよ! なんでもあげるから!」
手術室の外では、ビグビーがじりじりしながら待っている。両手はオオカミのそれになっており、長時間続く出産に彼の気も立っているようだ。ビグビーは、スノウの体力が限界近くであると感じ取っている。
【シーン6】
市長選は投票の集計に入った。ウッドランドビルの前で、コール老王とフライキャッチャー、プリンスとホブズがそれぞれ話している。
コール老王「フライ。結果が出た段階で、すぐに再集計させてくれ。私が言うより、君が要求したほうがいいだろう。それとこっそりプリンスの陣営をうかがって、私がいつまでペントハウスにいられるか、様子をうかがってきてくれ」
フライ「俺がやるんですか? 荷が重いですよ、それは」
一方、プリンスは余裕だ。
プリンス「結果が判明したら、すぐにダンスホールで祝賀会の手配をしてくれ。それと、コール老王になるべく早急にペントハウスから退去するよう言伝を。ああ、それとスノウに出産祝いのバラを60本届けてくれ」
ホブズ「大変よろしいかと」
ビルの敷地内では、トラスティー・ジョンがさめざめと涙を流している。フライが聞けば、先の木製人形たちの襲撃によって、長年手入れしていた庭園がメチャクチャになってしまったという。フライはそれを慰める。
【シーン7】
集計の結果、フェイブルタウンの新市長はプリンス・チャーミングに決まった。ビル内のダンスホールでは祝賀会が開かれ、プリンスは早くも美女たちとダンスを楽しんでいる。しかしジャックは沈んだ表情だ。カイが話しかける。
カイ「お前にとってはうれしい結果かな、ジャック? 新体制下のほうが、新しい悪だくみも成功しそうじゃないか」
ジャック「そう思うか? 俺が思うに、この街はひどい場所になるぜ。俺たちは長い間うまくやってきたが、これももう終わり。最後。終了だ」
浮かれて踊っているプリンスや、新しい警備主任を約束されたビーストらを尻目に、ジャックはそう答える。
カイ「かもな。だがローマ帝国だって、崩壊するまで500年かかった。まだしばらくはいい日もあるだろうさ」
ジャック「俺にとってはそうでもないだろうな。俺はもう行くよ」
【シーン8】
そのころ、ビグビーは、自分とスノウとの間に生まれた6人の子らを眺めていた。何人かは、狼男のようにグレーやこげ茶の体毛におおわれている。
ビグビー「この子たちを見てみろ、スノウ。六つ子だ。ほとんど人間そのもののだし、健康そのものだ」
スノウ「完璧に人間に見えるのは、1人だけね」
現世で暮らすには、完全に人間に見えなければいけない。明らかに獣人のように見える子らは、ファームで育て、暮らすしかない。スノウはそうビグビーに伝える。
【シーン9】
プリンス当選の祝賀会はまだ続いている。プリンスは、選挙公約に掲げた「動物型フェイブルたちの変身自由化」について、魔女たちに話しかける。
プリンス「変身魔法の価格について、一度みなさんと話し合う必要がありますね。呪文はいつごろから準備できますか?」
フラウ「できないね」
プリンス「なんですって?」
フラウ「馬鹿な王子様だね。私たち魔術師は、確かに市の要望に応えてきたけど、かなえてやれるくらいのレベルに要望をカットしてきたからだよ。もう私たちの魔力は限界ギリギリなんだ。これ以上、変身魔法を使うことはできない。現世人たちの大量生産品とは違うんだよ」
フラウはプリンスに対し、選挙公約を立てる前に相談しなかったことを指摘する。プリンスは青ざめた顔で会場を後にする。
【シーン10】
選挙に敗れたコール老王は、ペントハウスで一人頭を抱えている。
コール老王「私が何をしたって言うんだ?」
【シーン11】ウッドランドビルの地下の一室。壁にはりつけにされたバーバヤガーが、フラウに対して口汚い呪詛を投げかけている。フラウは聞く耳を持たない。
バーバヤガー「この手足が自由になったら、フェイブルタウンを破壊しつくしてやる。この現世の地球も丸ごと塩漬けにしてやる」
フラウ「なるほど、やればいいさ。だがその前に、話をさっきの議題に戻していいかね。魔王とはいったい誰だ?」
【シーン12】
フェイブルタウンでの戦いを探るジャーナリストのケビン・ソーン。彼は何かが起きていることを察知しているが、事件の核心をつかめずにいる。しかし独自調査のために、日記をつけることにした。
【シーン13】
ビグビーとスノウの六つ子を見るために、ブルーボーイやフライキャッチャー、コール老王、シンデレラ、ブライア・ローズ(眠れる森の美女)などがやって来た。新生児室のガラス越しに、赤ん坊らを眺めている。
ブライア「名前は決めたの?」
ビグビー「いくつか。だがスノウに却下された」
スノウ「あの赤毛の子は、ブロッサムって名前にしようかと思う。体毛がローズ・レッドみたいだし」
コール老王「コールってのはいい名前じゃないか?」
フライ「アンブローズとか」
ブルーボーイ「アンブローズなんて名前聞いたことないよ」
フライ「俺の本名だよ」
突然、赤ん坊の一人が保育器の中で立ち上がろうとした。驚くスノウ、ビグビーらの前で、六つ子の体が少しずつ保育器から浮き上がっていく。そのまま赤ん坊らは完全に宙に浮いてしまった。(続く)
Fables Vol. 5: The Mean Seasons (Fables (Graphic Novels))
- 作者: Bill Willingham
- 出版社/メーカー: Vertigo
- 発売日: 2011/11/21
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にっき
約2か月ぶりの更新。
・仕事が土日まで食い込むことが多々あって、しばらくこのブログ、放置していました。いやー、めんどくさいことこの上なかった。とりあえずは少し落ち着いたので、またブログも更新していこうと思います。できるだけ。
・更新空けていた期間中、何かあったっけ?
・熊本の地震。ツレの父方の実家が熊本で、おじさん・おばさん・いとこなどが現地で被災されており、なかなか大変だったそう。ケガや大きな被害はなかったとのことだけども、自分としても結構心配だった。
・そういう、わがことのように不安になる気持ちは、東北の震災ではあまり感じなくて。結局、こうした事件や災害のニュースを身近に感じるかどうかってのは、自分と”地続き”であるかどうかの問題なんだな、と思い知った。
・Batman v Superman 観たんだけど、ほんとにスゴくて・本気度が伝わってきて、かついろいろ憶測を呼びそうなシーンや設定もあって、とにかく好きだった。
・ぶっちゃけマイナスポイントがないわけじゃない。というか普通にアメコミファン以外は置いてけぼりだし、バットマンの行動規範は細かいところで伝わりにくいし、意図が分かりにくいシーンもある。なので、満点ではない。
・でも、いわゆる「減点方式で点数つけたら75点くらいだけど、加点方式なら100万点」という作品。好きな人、楽しめる人はメチャクチャ楽しめると思う。その層が日本にどれくらいいるかは知らん。
・ザック・スナイダー監督、本気でジャスティスリーグやるつもりだな。パンドーラーの箱を開けた感がある。いいよ、いけるとこまで行ってくれ。
・あとこの世界線でのバットマンは過去に何があったんだ。いくらなんでもパラノイアすぎるぞ。悪党に両親でも殺されたか(その通り)。
・とりあえずダイアナさんのテーマだ(ちゃららら~♪
・ゲームは相変わらずFallOut4です。日本でも無事にDLCが発売されて、喜ばしい限り。5月中には第3弾「Far Harbor」出るかな?
・Fablesの翻訳ですが、これどうしようかな。作者のBill Willinghamに許可を申請しようか迷い中。でも連絡手段がツイッタしかないし、断られたら完全にダメってことだしな。できればちゃんと許可得たいんだけど、俺の英語力で果たしてI'm on your side.ということを伝えられるかどうか。やるか。
・とりあえず5巻までは読んでいて、ビグビーがかわいそうなことになっています。あとフェイブルタウンの総選挙もあったりで波乱含み。
・こないだの更新で少し書いたけど、Amazonプライム会員登録した。海外アニメの『アバター』を観るために。6話くらいまでみたけど、世界観はしっかりしているし、ストーリーもちゃんと骨組みがあるし、作画も安定しているしでなかなか見ごたえがあります。続きも観ましょう。
・好きなキャラクターはサカ。馬鹿だけどいいやつ。
・結石は入院して衝撃波で砕きまして、破片はたぶん全部出た。砂みたいなのが出るのよ、強烈な残尿感をともないながら。これがきつかった。
・G.W.は大阪旅行に行ったり、新しい洗濯機を買ったりして過ぎていきました。
・大阪ではUSJを楽しんだほか、天王寺~新世界~飛田新地などを散策。新世界と飛田新地はなかなか神秘的だった。安い酒の匂いがする(ほめ言葉)。
・2~3キロほど肥えたので、体重を管理する必要がある。
・今さらだけど、再び『アイシールド21』を買い集めて読んでいる。やっぱりヒル魔がナンバーワン! ヒルまもも最高じゃぞい。
・冬が終わって、ようやく過ごしやすい季節がやって来た。冬なんか4年に一度くらいでいいと思うんですけど、みなさんはどうでしょうか。
とりあえず以上。
名言の宝庫としての漫画『シュトヘル』
伊藤悠による漫画『シュトヘル』。モンゴル国によって滅ぼされつつある西夏文字を救うために旅を続ける少年・ユルールと、モンゴル国への復讐に生きる女戦士・シュトヘル、そんな2人を取り巻く無数の人々と思惑とが苛烈に交錯する壮大な歴史ロマンです。スピリッツで絶賛連載中、現在12巻まで刊行。
さてこの作品、第1巻から示唆に富むセリフや熱く胸を焦がすセリフが炸裂しまくっており、さながら名言の宝庫状態。なので、特に好きなセリフをピックアップしまくってみました。ただそんだけです、ハイ。
「文字は生き物みたいだ。記した人の思い 願いを伝えようとする。その人が死んでも 文字は、託された 願いを抱きしめているようで…生き物みたいだ。焼かれると、つらい」ユルール
「ここに生きていたことを誰かに伝えたいと、そう思うのがおれだけじゃなかったから、文字は生きてきたのじゃないか… 殺されるのは怖いよ。…本当に怖い。だけど文字が殺されていくのは、もっと怖い。」ユルール
「生涯をかけた仕事は命そのものになる。命をかけるべきものになる」グルシャン
「命をかけるべきものがあるという言葉は病だ。この病が跋扈する度に大勢が死ぬ。この病の者は目の前の人間を見ない。人間を道具とし恥じることもなく同胞・眷族を顧みない」ハラバル
「おまえはさあ やさしいからさあ、そういうのがいちばんいいよ。いつまでもやさしいのをやめられないやつが、あきらめられないやつが多分、―――未来を、つなぐんだよ」スドー
「お前は子供だ。卑怯も、──裏切りも許す。…ただ 恥だけは知っておけ」ハラバル
「あれは、物差しなしの生き物だ。美しいと思いませんか」アルファルド
「誰もがそれぞれ物書くようになると、それぞれの経験、感じ方、考え方をそれぞれが知る。それでまたそれぞれ物書いて、そういうのが広がってって、広がってくと最後は──国とかって一部の、えらい人だけのもんじゃなくなるんだ、多分」スドー
「いかなる王の世にあるか、の偶然のみが人の幸、不幸を決めるなんて。これこそが、無念じゃないか。おれはくやしい。何千年とそれが続いているから、それだから従うというのは」ユルール
「文字は多分──人と人が扶(たす)け合うしくみを作ることもできる。どんな王の世でも、王の不在でも、いつ現れるかもわからない”すぐれた王”の、来るのかもわからない救いを待つまでもなく──人々自身が人を救う。いつでも」ユルール
「ああしたい こうしたい、食いたい飲みたい 寝たい欲が、いわば楽しみを求める心が世を決めている」ナラン
「欲が満たされるのは一部の人だ。そこに楽しみがかたよるために苦しむ人もいる。満たされた一部がそれを見ずして世を決めれば、取り残された太部分の心は乱を求める」ユルール
「小僧は間違いなく、あんたの宝なんだろう。食うので手一杯、生きるので手一杯になって、そういう宝を捨てちまったら、俺たちはその辺にただ生えて、牛馬の小便ひっかけられてる草と変わりねえ」烏木
「誰かに出会え。…出会いが生きなおさせる」シュトヘル
ナラン「弱者の目線ばかり持つな。敗者の側からは いかにあがいても、文字を持って民が民を救うとかいうおまえの夢は、千年かなうまい」
ユルール「目前でかなう夢だから、見ると思うか」
「誰もが自分の出来事と心を記したなら。それを集められるだけ集めれば…そのかたまりは誰のものでもなく、何色にもならない。その出来事と心のかたまりで、時代というものさえ読めるようになるかもしれない。文字で記すのは――出来事と心なんだ…」ユルール
「考えることを捨てたら子供と一緒だ。きみも、おれもだ。何も提示せずに殺したり壊したりするだけなら、やっていることはきみの憎む相手と同じだ。殺すとか壊すじゃなくて、伝えるとかつなぐとか、そういう生き方だってあるはずだ」ユルール
「今日を生きる者のためでなければ、死屍を越えては往けないのだ」ハラバル
「勝者の筆の記したものは常に、敗者からすれば偽りに満ちている。いつ誰が筆を得ようと。ひとつに限られた勝者の筆を取り合うかぎり、記されていくのは常に誰かにとっての偽りだ。だからこそ筆を、どこまでも増やすんだ。数も、種類も」ユルール
「きどって死ねた方がえらいのか。犬に食われ間抜けに死んだなら、その男の生きてきた年月も間抜けというわけか! 無惨に死んだなら生きた年月も、無惨か。どう死のうが生が先だ。食って寝てそこにいた。いつも生が死の先を走る。死に方は生き方を汚せない」シュトヘル
やっぱりユルールのセリフが多めだな。この少年はブレない上にバカ正直なので強いです。もっともっとあるんですが、これ以上書くと引用の範囲を超えてしまいそうなので、こんなところにしときます。多すぎて書ききれないというのものある。ひとつでもピンとくるセリフがあれば、ぜひ単行本を買って読んでください。面白さ保障しますよ、いやホント。
にっき
最後にブログで近況報告したのいつだっけ? ツイッタがあるからいいんだけど。
・で、挙式したんだけど。自分で言うのもなんだけど、なかなかいい式だった。適度に盛り上がって、適度に厳粛で。人数もちょうどいいくらい。やはり地元スタイルでやるのがいいな。いちいち気を使わんでよい。
・ずーっと式までの間、土日・祝日はずっと事前準備してたわけだけど、これがまあ疲れる疲れる。出欠確認したりプログラム組んだり、余興やスピーチのお願いしたり、席次表を作ったり、招待状送ったり……。もうやるのはええわ。
・ああいうのって「こういう風にしようね」って合意を得るまではいいんだけど、それだけで決めた気になってるのが一番よくない。「何を・どうするのか、必要なもの・ことは何か」みたいな細かい部分まではギリギリまで決めてなかったりするからな。決めた気になってるだけってのが多い。やりたいことがあったら、もうきっちり時間とって細部まで決めないと意味ないのだよね。
・ま、さっきも言った通り、よい式ではあった。参列者の皆様に感謝と幸運を。
・仕事は忙しい。忙しいと言うか面倒くさい。余計な仕事ばかりが増えていく。久しぶりに土日に仕事を持ち帰ったりしている。別にいいんだけど。
・こないだ映画『オデッセイ』観ましたが、なかなか良かった。いささか駆け足感があったのが気になるけど、演出もよし、演技もよし、映像も秀逸、サントラも豪華と見ごたえがある。観れば元気になる映画。
・ワトニー君に恋人も妻もいないというのが良いよね。愛だのなんだの言う前に、とにかく目の前の困難を見据え、現状を少しでも改善しようとする……。その人間の姿は、普遍的な希望そのものだと思う。原題の『火星の人』というのもカッコいい。
・クソ寒い冬が終わったと思ったら、今後は花粉ですよ。今年はなんか目にくるな。常に涙目でしょぼしょぼする。涙が出過ぎでまぶたのところがヒリヒリする。
・スギをジェノサイド。
・相変わらずFallout 4やってる。プレイから3か月が経とうというのに、相変わらず楽しい楽しい。一応メインストーリーはクリアした、ミニットメンルートで。いつものごとく、ラストは割と淡白。まあ気持ち気持ち。
・まだコンパニオン全員を仲間にしていないのよね。ケイト、ハンコック、ストロング、キュリーが残っている。一人ずつ仲間にして、一人ずつ好感度マックスまで上げていくスタイルなので、ちょっとずつだわ。
・今後のDLCだけど、日本語版はどうなるのかね。ベセスダから発表はされたけど、日本語版のことは公式でも触れられていないぞ。先行して見つかった新実績が日本語化されてるから大丈夫だとは思うけどさ。
・全然話変わるけど、海外アニメの『アバター』、日本語版がAmazonプライムで観られるんだよ。ちょっと気になる。
・でもDVDとして手元に置きたいという気持ちもある。
・それにしても海外アニメの日本語版、目にする機会が増えたな。気のせいか?
・今月は入院があります。石を砕いてくるんですよ。別に入院はいいんだけど、それに合わせたスケジューリングで仕事しないといけないってのが面倒だ。前倒し前倒しでやらんと、退院と同時に忙しさで死ぬ。
・はー、貯金しねーとな。毎月の振込額を増やすか。
以上。
才能もない、努力もできないんだから
そりゃもう、工夫するしかないだろ。
もっかい言う。越えられない才能の差を超えるためには、努力しても埋められない穴を埋めるためには、工夫するしかないのだ。頭の良さで勝負するってことではないよ。できるやり方、どうにかするやり方、自分にあったやり方を見つけるために、ある知恵も・ない知恵もしぼれってことです。使えるものは全部使え。
具体的には ①人や道具を頼れ
特に何もせずとも、決まった時間に目が覚める人がいます。これは才能。決まった時間に起きる生活を繰り返して、自然とその時間に起きられるようになった人もいます。これは努力。
で、工夫する人は、目覚まし時計をかける、しかも必ず起きるように2~3個セットする。別に目覚まし時計じゃなくて、誰かにモーニングコールを頼んでもいい。朝起きるのは変わらず苦手なままでも、とにかくまず目は覚めるだろ。これと同じように、「できないことはできない」んだから、何かほかの力を拝借しろ。
今の時代、スマホやPCの力を借りるのが一番身近だ。別に専門的なソフトじゃなくていい。スケジューラー、タスクシート、音声メモなど、簡単なアプリでも適宜使いこなせば仕事のやり残しやアイデアの記録忘れがなくなる。特にスケジューラーは活用すべき。脳のメモリ節約につながる。
具体的には ②時間を管理しろ
時間があればあるほど、工夫できる余地が生まれる。時間をただ過ぎるに任せるのはNG。意識してコントロールできるようにする。細かな具体的方法は以下。
- 各作業や工程に自分がどれほどの時間をかけているのか、把握する(大事)。
- 5分でも3分でも、空いた時間にやれる仕事を見つけておく。ちょっとした掃除でも、頭の中で次の予定を組むのでもいい。
- キツキツ、ギリギリの予定は組まない。余裕を持って・最悪の事態を想定して計画を組む。そのためにも前倒しで進める意識が必要。
- 「いつまでに終わらせるか」じゃなくて「いつから始めて、現実にいつ終わるか」を意識する。実際にやってみてその時間内に終わらなければ、あらためて上記1の見直しをしろ。
今のところ時間だけは万人に同じだけ与えられている。時間があれば才能の差もひっくりかえせるかもしれん。
具体的には ③適した環境を作り、そこに身を置け
例えばダイエット。
運動する必要があるんだけど、スポーツクラブには入るな。どうせ三日坊主で辞めるんだから。それよりまず電車の定期券を捨てろ。次に自転車を買え。そしてチャリで会社に行け。ソファーもイスも座布団も捨てろ。エアロバイクを買ってそれに腰掛けろ。食費は1か月分、全部まとめてプロテインやオートミールなどを買え。買い食いが心配なやつは、余計な小銭を持つな。体重計は玄関か洗面台の前に置け。体重データをスマホに転送してくれるやつだと、なおいいかもな。
まあこれは極端な例だけど、とにかく、成し遂げたい何かをなすのに最適な環境というものがある。それを構築しろ。「いやがおうでも努力せざるを得ない環境」や「自然とそれができる環境」を目指せ。
具体的には ④勝てる土俵を見つけ、そこで勝負しろ
一番むずかしいかもね。例えば……
- 美麗なイラストでは神絵師に勝てないから、あえて政府広報に使われるような素朴な絵柄のイラストを強みにする。
- 人を感動されるような文章のセンスはないけど、とにかく締め切りだけは必ず守ったうえで納品して、しかもギャラも良心的。
- 営業スキルはいたって普通だけど、ビジネスレベルでの英語の読み書き・スピーキングができる。
みたいな話。「競うな 持ち味を生かせッッ!」のひと言で済む。
でも競いたがるんだよね、みんな。そういう場合、競うことが目的化しちゃっていることがほとんどなので、最終的にどうありたいのかを自覚することが大事。「いや、どうしても競いたい」ってんならそれはそれでいいけど。
おわりに
「才能がないな」と気づいたら努力しろ。「努力できないな」「努力するのが面倒だな」と一瞬でも思ったのなら、その瞬間から自分は凡人だと自覚しろ。凡人だと自覚したら、工夫しろ。やればできるなどと思うな。やった努力はだいたい実るけど、明日の自分が努力する確証はどこにもない。未来の自分を当てにするな。
凡人が「天才」や「努力の鬼」に打ち克つには、工夫するしかない。工夫することは、怠惰な人間が生き残るすべである。
Lady Killer #8
※『Lady Killer』は殺し屋兼主婦のジョシー(ジョセフィン)を主人公にしたアメリカンコミックスです。周囲に殺し屋の顔を隠しながら、良き妻・良き母として毎日の生活を送るジョシーの姿が描かれます。
【前回からの続き。ステンホルムとペックをおびき寄せるため、ジョシーはひと気のない建物の中に移動してきた。ジョシーは両手にナイフを取り、ペックとその部下たちと対峙する】
ペック「銃は使うな。誰かに気づかれるかもしれん」
【ジョシーに飛びかかるペックの部下たち。ジョシーは巧みなナイフさばきで一人ずつ血祭りに上げていく。またたくまに3人の刺殺体ができあがった】
ペック「おいおい、ジョシー。せっかくそいつらを連れてきてやったのに、こんなふうに俺に恥をかかせるなんてな」
【そのとき、拳銃をかまえたルビーがジョシーのうしろから現れる。ルビーはペックに狙いをつけたままジョシーに話しかける】
ルビー「やったわね。あなたはアーヴィングのところへ行って」
ジョシー「それは想定外の行為よ」
ルビー「私とペックの間には因縁があるの」
ジョシー「計画通りにしなさい、ルビー」
ルビー「あなたの意見は聞いてない」
ジョシー「いいわ、でも素早くやりなさい。気を付けて」
【その場にルビーを残して去るジョシー。その足で、ステンホルムがいる部屋までやって来た】
ステンホルム「誰が来るか待っていたが……きみとはね。少々失望したと言わざるを得んな。これだから、この種の仕事は権限委任すべきだと言うんだ」
ジョシー「私を殺す命令、取り下げてもらうわ」
ステンホルム「きみがどう望むかなんて、私には関係ない。きみがこうしてこの場所にいられるのは、誰のおかげか忘れたようだな。きみのような女は、我々のビジネスについて何もわかっちゃいない。立ち去って、おままごとでもしたらどうかね?」
ジョシー「こうして丁重に頼んでいるのよ。命令を取り下げなさい」
【ステンホルム、吸っていた葉巻をかたわらに置いて言う】
ステンホルム「本当にそんな二重生活を望んでいるのか? お前のような女が?」
ジョシー「私が選んだ道だわ」
ステンホルム「それは間違いだ。お前に選択肢などない。俺のために働くだけだ!」
【そう言うと、ステンホルムはルビーの首を片手で絞め上げた。もう片方の手で、ナイフを持つジョシーの手を押さえつける。しかし、ジョシーはなんとか手を伸ばし、ステンホルムが置いた葉巻につかんだ。そしてその火を彼の眼に押し付ける。そのままステンホルムを壁に押し付け、ナイフを振りかざす】
アーヴィング「ジョシー、やめろ! ルビーが危ない!」
【そのときやって来たのはアーヴィングだった】
ジョシー「出て行って、アーヴィング! こいつは殺さなきゃ気が済まない!」
アーヴィング「行くんだ、ルビーを助けに。そのあとからでも、このゴミ野郎を始末する時間はある」
ジョシー「わかったわ。ボス、どこにも行かないでもらうわよ。すぐに戻る」
【ジョシーはナイフをステンホルムの手に突き刺し、壁に釘付けにした。その場を走り去るジョシー。アーヴィングは腕まくりしてステンホルムに話しかける】
アーヴィング「貴様はここにいるんだ。どうした? 俺のことがわかるか、ステンホルムよ?」
ステンホルム「ラ、ラインハルト!?」
ラインハルト「ビンゴ」
ステンホルム「やめ……やめろ! 待て、やめろおぉぉぉ!」
【ルビーとペックのもとに戻ってきたジョシー。背後からペックを羽交い絞めにするが、そのまま背負い投げされる。ペックはルビーを殴り、蹴り倒す】
ペック「いきなり出てきやがって、俺の言い分を聞く気はないのか? 俺にも抗議させろよ。うるさくて集中できないったらないぜ……」
【ペックはその場にあった大きな金属製のオブジェを持ち上げる。そして、倒れるルビーの頭部めがけて振り下ろした】
ジョシー「ルビー!」
ペック「これで五分五分だな、ジョシー。俺たちの間には、お互いに過ごしてきた過去があるよな。俺は、きみをここから連れ出す。そしたら子供たちと一緒におとなしくしてろよ、組織のごたごたが収まるまでな」
【ジョシーは落ちていた拳銃を拾い、ペックに狙いをつける。ペックはそれを意に介せず、ジョシーに詰めより、銃を持つ手を押さえつける】
ペック「そのあとは知ってるよな。俺はきみの家にまっすぐ行って、きみの愛する家族をひとりずつ殺してやる。お前も……」
ジョシー「させるか!」
【ジョシーはペックの手を振りほどき、彼の頭部を撃ち抜いた。と、そのとき義母の声が響き渡る】
義母「なんてこと、ジョセフィン! いったい……!?」
ジョシー「お義母さん? ここで何を?」
義母「あの男について来たのよ……なんてことでしょう、あいつがやったの? あの男のことは、戦時中から知っていたわ。危険な男……」
【義母はどうやらラインハルト(アーヴィング)のことを昔から知っているらしい。戸惑いながらジョシーに話す】
ジョシー「お義母さん、そのことはあとで話しましょう。今はここから出なくては。もうすぐ人が来ます。ここにはいられない。着替えを隠しています。急げばここを片付けてから、この場から逃げられる」
義母「え、ええ……でもラインハルトとあなたは一体……? あなたは何者なの?」
ジョシー「あとで話します。知りたいことも、知りたくないことも、質問すべきことも何もかも……」
【あとにはペックとルビー、そしてラインハルトに切り刻まれたステンホルムの死体が残されていた】
エピローグ
【青い制服を着たセールスレディが、ジョシーの家のドアを叩く】
ジョシー「はい、何か?」
セールスレディ「こんにちは、モリスと申します」
ジョシー「こんにちは、シュラーよ」
セールスレディ「シュラーさん、最後にお化粧なさったのはいつですか?」
【即座にドアを閉めるジョシー。部屋に戻ると、ジーンが話しかけてくる】
ジーン「誰だったんだい?」
ジョシー「エイボン化粧品のセールスレディよ」
ジーン「へえ、今の女性に人気なんだろ。きみもああいうのやってみたらどうだい?」
ジョシー「ああいうのって?」
ジーン「えーと、つまり自分で商売のやり方を考えて、自分自身で稼ぐってことさ。やりがいと自信にもなるじゃないか」
ジョシー「そうね、あなた、悪くない考えだわ。自分自身で働く……素晴らしいアイデアよ」
【微笑むジョシーの顔でEND。なぜジョシーの義母がラインハルトのことを知っていたのか、ラインハルトとステンホルムらの間に何があったのか、そしてジョシーはどうなるのか……などは続刊(予定)で語られるっぽいです】