DEAD SPACE

新たな資源を求めて人類が宇宙へ進出するようになった遠い未来。

惑星採掘艦「USGイシムラ」で起きたトラブル調査のため、

技術者の主人公らを乗せた宇宙船が同艦へと向かうことになる。

しかし艦内で彼らを待ち受けていたのは、殺害されたイシムラの乗組員たちと、

執拗に襲い掛かってくる醜悪な化け物の群れだった……。

というのが、本作『DEAD SPACE』のあらすじです。

ジャンルは、アドベンチャー要素の強いサード・パーソン・シューター(TPS)。

複数の武器を駆使していわゆる「背後霊視点」で異形の敵と戦いつつ、

ときにはパズル的要素も含んだ仕掛けをクリアして

USGイシムラから脱出するというのが最終目的。

まあひと言でいうと宇宙版『バイオ』みたいな感じなんですが、

既存タイトルと明確に違うのは、その圧倒的な“死に要素”。

敵のクリーチャーたちひとつとっても、

不用意に死体に近づくと実は全然死んでなかったり、

逃げられたと思ったらエアダクト経由で背後から襲いかかってきたりします。

「なんか壁に変な肉塊が……」と思って近づくと首ちょんぱされるし、

倒した敵に別のクリーチャーが寄生して、より狂暴な敵に変化したりする。

さっき通ったときは何もなかったのに、帰り道で襲撃されたり、

壁をぶち破るほどの巨大触手に捕食されたりなんてことも日常茶飯事です。

ちなみにこのクリーチャーたち、

腹部や頭部に弾丸を撃ち込んでもあまりダメージはありません。

頭をふっ飛ばしても普通に殺しにかかってくるので、

きちんと両手足を狙い撃って“破壊”することが大事(これが恐い)。

そのほか、宇宙空間での酸欠死、重力コントロール室での圧縮死、

壊れた自動ドアに巻き込まれて分断死。隕石群に巻き込まれて爆裂死、etc...

とにかくもうゲーム機が殺意の波動に目覚めたんじゃねーかと思うレベル。

超兄貴』(田丸浩史の)での「必死と書いて必ず死なす!」。

もちろんホラーな演出&雰囲気づくりも満点。

特にサウンドまわりが秀逸で、ダクトを走り回る「ガサガサ…」という音、

何かのヒソヒソ声、クリーチャーたちの奇怪な声、

神経を逆なでするような効果音、イシムラ乗組員たちの鬼気迫るボイスログなどが

外耳から蝸牛経由で脳みそを引っかき回す。イヤホンは必須です。

そんなんだから、恐いです。めちゃくちゃ恐いです。胃がキュッてなる。

あんまり恐いんで初回はケーキ食いながらプレイしてました。

(美味いスイーツは恐怖を和らげるのだ。ホントだよ)

でもそれでもプレイしたくなるのは、ゲームとして不愉快な設計がほぼゼロで、

理不尽なストレスなく作られているから。

エイミングのレスポンスは良好だし、

いろんな武器(ホントは工具だけど)を使い分けて強敵を倒す快感もある。

ボタンひとつで目的地を指示してくれるロケーター機能もあり、

行く先に迷うことなく進められるのもグッド。

体力メーターを自キャラのデザインの一部とすることでゲーム的画面表示を回避し、

より深くプレイに没頭させるといった細かな仕事も光る。

つまるとこと、本作は“すごく恐いサバイバル・ホラー”であるだけでなく、

実はとてもユーザーフレンドリーな1本でもある、と。

プレイヤーのストレスを極力排除し、快適なゲームシステムを構築した上で、

命がすり減るほどの恐怖を突きつける。まさに職人技ですね。

残念なのは、あんまりグロいいんで国内版が未発売なところ。レーティング的に。

ただ北米版、アジア版ともに国内のXbox360本体で動くので

プレイそのものには問題なし。PS3版はわからん。

全編英語ですが、クリア目的だけなら英語がわかんなくてもOKだし、

ネットの攻略wikiには有志によるストーリー翻訳も掲載されています。

このストーリーがまた結構狂っていて恐いのでご一読を。

ただ恐いだけじゃない、しっかりとゲームとして完成された貴重な一作。

なお続編も出てますが未プレイ。買ってみようか知らん。

(今回のエントリは同人誌に寄稿した原稿を下敷きにしています)