日本一のマンガを探せ!―20世紀最強のコミックガイド
マンガが趣味です、と、人に言うと、
まー、十中八九「どんなの読んでるの?」と聞かれますわな。
それはいいんですが、そこで実際に自分が読んでる「○○とか××とか…」と応えて、
「知らない」だの「えー、わかんない」だの言われるのはまだいいほうで、
「それ、売れてないんじゃない」だの「読んでるの君しかいないよ」だの言われた日には、
「てめっ! 諸星大二郎先生がマニアックだと!? 無名だと!?
大二郎先生はな、あの有名なCOMでデビューしたんだよ!
それをマイナーだと! マニアックだと! 無名だと! いい加減にせえよ!」
と、まくしたてたい気持ちになりますよね。ならない? てめっ!
ま、戯言はともかく。
別に衒学趣味をひけらかすつもりは毛頭ありませんが、
自分の好きなマンガやお気に入りのマンガや本棚にあるフェイバリットなマンガが、
世間一般のそれとはどうもあまりかぶらないようだぞ、という現実に気づいたのは、
だいたい中学生~高校生の頃でせうか。
その原因となったのが、今回紹介する1冊です。
『日本一のマンガを探せ! 20世紀最強のコミックガイド』。版元は宝島社。
同社のムック本のレーベルである、別冊宝島シリーズのマンガガイドブックです。
ベッタカって定期的にマンガガイド本を出してるんだけど、
本作は歴代の別冊宝島マンガガイドの中でも、間違いなく最高の1冊。
いや、ひょっとしたら、世に出たすべてのマンガガイドの中でも最高の1冊かも。
理由は以下の通り。
【1】圧倒的な紹介作品数
「特定のマンガが好きなんじゃない。“マンガ”が好きなんだーーーー!!」
そんな人たちがマンガガイドブックに求めるのは、
作品紹介の質ではなく、自分の趣味とあっているかどうかでもないのです。
ただ、数。紹介されているマンガの数が多ければ多いほどグッド。
確かに“ハズレ”を引く可能性もあるけど、
どうせ“当たり”を引くまで読み続け、買い続けるので、別に痛くもかゆくもない。
その点、このガイドブックは圧倒的です。紹介作品数は、なんと2000作品。
これだけのマンガが紹介されていれば、仮に半分が趣味に合わなかったとしても、
残り1000作品は当たりだということになる。
いやー、このガイドをつくった人は“分かってる”人だよ。
玉石混交の中から“玉”を見つけ出すの最もシンプルな方法は、
審美眼を養うことでも、数を絞ることでもない。ただ手当たり次第にブチ当たることです。
【2】ジャンル分けが絶妙
言葉の定義合戦をする気はないけど、やはりギャグとコメディーって違うわけよ。
また、同じく恋愛と性愛も違うし、SFとミステリーも違う。
本ガイドでは、12のテーマに分けて漫画家とその作品を紹介しています。
表紙にも12テーマがすべて掲載されてるので、ここに引用しますと……
ね? 読みたくなったでしょ?
実際、この12テーマってかなり上手い分け方だと思う。
2000作品も紹介されてると、
さすがに「どのマンガから手を付ければいいのか」と路頭に迷いがちですが、
上記のジャンルでピーンときたものから探していけばいいのです。
【3】情報量が多い
2000作品もあれば、確かに1作品あたりの紹介文は少なくなります。
が、一番小さい扱いであっても、作品タイトルや作者名、キャッチコピーはもちろん、
各種出版データ(版元、掲載誌、連載開始年など)と表紙画像は掲載されている。
作者紹介で70~80文字、作品紹介で150~170文字が確保されてるし、
「泣ける!」、「アイデアが秀逸」、「コメディ度高し」などのアイコンで
作品が持つテイストを補足してくれている。
特に表紙を掲載してあるのはありがたい。
ある程度だけども絵柄が分かるし、実際に買う際にも見つけやすくなる。
(ま、いくつかの作品で誤植、誤データや抜けもありますが、それも数える程度)
情報量が多い分、文字はほとんど辞典と見紛うようなQ数。
ゴマ粒大のテキストは読んでて目に優しくないですが、そこはグッとガマン。
【4】出版1997年という時代
このガイド、「20世紀最強の~」という書名が示す通り、発行は1997年6月です。
今から16年も前のガイドブックなので、
2000年代以降に活躍する“未来の人気漫画家”も何人か取り上げられており、
「97年当時、こんな風に読まれていたのか」と、資料的価値も高い。
無論、70年代~90年代の名作や有名漫画家もほぼ網羅されてます。
手塚治虫や藤子F、石ノ森といった大御所は大枠で紹介されているので、
代表作の作品紹介を手っ取り早く知るのにも最適。
巻末にタイトル索引と漫画家索引があるのもありがたいです。
* * *
とまあこんな感じ。
その他にも、細かな小コラムも40本以上あって読み応えあり。
マンガを買う気がなくても、ペラペラ読んでるだけでマンガの知識が身につきます。
実際、俺のマンガ知識の3割くらいはこのガイドのおかげかもしれん。
読んだことないマンガの表紙も分かったりするから。
ちなみに執筆者はマンガ好きのライターやフリー編集者、マンガ研究家など。
AV監督として有名になる前の二村ヒトシと、
なお、Amazonだと中古で1円から買えます。
『このマンガがすごい!』やマンガ大賞の受賞作だけじゃ満足できない人や、
過去の名作も含めて面白いマンガを探している人なら必携の1冊。おススメ。