Lady Killer #8

※『Lady Killer』は殺し屋兼主婦のジョシー(ジョセフィン)を主人公にしたアメリカンコミックスです。周囲に殺し屋の顔を隠しながら、良き妻・良き母として毎日の生活を送るジョシーの姿が描かれます。

【前回からの続き。ステンホルムとペックをおびき寄せるため、ジョシーはひと気のない建物の中に移動してきた。ジョシーは両手にナイフを取り、ペックとその部下たちと対峙する】

ペック「銃は使うな。誰かに気づかれるかもしれん」

【ジョシーに飛びかかるペックの部下たち。ジョシーは巧みなナイフさばきで一人ずつ血祭りに上げていく。またたくまに3人の刺殺体ができあがった】

ペック「おいおい、ジョシー。せっかくそいつらを連れてきてやったのに、こんなふうに俺に恥をかかせるなんてな」

【そのとき、拳銃をかまえたルビーがジョシーのうしろから現れる。ルビーはペックに狙いをつけたままジョシーに話しかける】

ルビー「やったわね。あなたはアーヴィングのところへ行って」

ジョシー「それは想定外の行為よ」

ルビー「私とペックの間には因縁があるの」

ジョシー「計画通りにしなさい、ルビー」

ルビー「あなたの意見は聞いてない」

ジョシー「いいわ、でも素早くやりなさい。気を付けて」

【その場にルビーを残して去るジョシー。その足で、ステンホルムがいる部屋までやって来た】

ステンホルム「誰が来るか待っていたが……きみとはね。少々失望したと言わざるを得んな。これだから、この種の仕事は権限委任すべきだと言うんだ」

ジョシー「私を殺す命令、取り下げてもらうわ」

ステンホルム「きみがどう望むかなんて、私には関係ない。きみがこうしてこの場所にいられるのは、誰のおかげか忘れたようだな。きみのような女は、我々のビジネスについて何もわかっちゃいない。立ち去って、おままごとでもしたらどうかね?」

ジョシー「こうして丁重に頼んでいるのよ。命令を取り下げなさい」

【ステンホルム、吸っていた葉巻をかたわらに置いて言う】

ステンホルム「本当にそんな二重生活を望んでいるのか? お前のような女が?」

ジョシー「私が選んだ道だわ」

ステンホルム「それは間違いだ。お前に選択肢などない。俺のために働くだけだ!」

【そう言うと、ステンホルムはルビーの首を片手で絞め上げた。もう片方の手で、ナイフを持つジョシーの手を押さえつける。しかし、ジョシーはなんとか手を伸ばし、ステンホルムが置いた葉巻につかんだ。そしてその火を彼の眼に押し付ける。そのままステンホルムを壁に押し付け、ナイフを振りかざす】

アーヴィング「ジョシー、やめろ! ルビーが危ない!」

【そのときやって来たのはアーヴィングだった】

ジョシー「出て行って、アーヴィング! こいつは殺さなきゃ気が済まない!」

アーヴィング「行くんだ、ルビーを助けに。そのあとからでも、このゴミ野郎を始末する時間はある」

ジョシー「わかったわ。ボス、どこにも行かないでもらうわよ。すぐに戻る」

【ジョシーはナイフをステンホルムの手に突き刺し、壁に釘付けにした。その場を走り去るジョシー。アーヴィングは腕まくりしてステンホルムに話しかける】

アーヴィング「貴様はここにいるんだ。どうした? 俺のことがわかるか、ステンホルムよ?」

ステンホルム「ラ、ラインハルト!?」

ラインハルト「ビンゴ」

ステンホルム「やめ……やめろ! 待て、やめろおぉぉぉ!」

【ルビーとペックのもとに戻ってきたジョシー。背後からペックを羽交い絞めにするが、そのまま背負い投げされる。ペックはルビーを殴り、蹴り倒す】

ペック「いきなり出てきやがって、俺の言い分を聞く気はないのか? 俺にも抗議させろよ。うるさくて集中できないったらないぜ……」

【ペックはその場にあった大きな金属製のオブジェを持ち上げる。そして、倒れるルビーの頭部めがけて振り下ろした】

ジョシー「ルビー!」

ペック「これで五分五分だな、ジョシー。俺たちの間には、お互いに過ごしてきた過去があるよな。俺は、きみをここから連れ出す。そしたら子供たちと一緒におとなしくしてろよ、組織のごたごたが収まるまでな」

【ジョシーは落ちていた拳銃を拾い、ペックに狙いをつける。ペックはそれを意に介せず、ジョシーに詰めより、銃を持つ手を押さえつける】

ペック「そのあとは知ってるよな。俺はきみの家にまっすぐ行って、きみの愛する家族をひとりずつ殺してやる。お前も……」

ジョシー「させるか!」

【ジョシーはペックの手を振りほどき、彼の頭部を撃ち抜いた。と、そのとき義母の声が響き渡る】

義母「なんてこと、ジョセフィン! いったい……!?」

ジョシー「お義母さん? ここで何を?」

義母「あの男について来たのよ……なんてことでしょう、あいつがやったの? あの男のことは、戦時中から知っていたわ。危険な男……」

【義母はどうやらラインハルト(アーヴィング)のことを昔から知っているらしい。戸惑いながらジョシーに話す】

ジョシー「お義母さん、そのことはあとで話しましょう。今はここから出なくては。もうすぐ人が来ます。ここにはいられない。着替えを隠しています。急げばここを片付けてから、この場から逃げられる」

義母「え、ええ……でもラインハルトとあなたは一体……? あなたは何者なの?」

ジョシー「あとで話します。知りたいことも、知りたくないことも、質問すべきことも何もかも……」

【あとにはペックとルビー、そしてラインハルトに切り刻まれたステンホルムの死体が残されていた】

エピローグ

【青い制服を着たセールスレディが、ジョシーの家のドアを叩く】

ジョシー「はい、何か?」

セールスレディ「こんにちは、モリスと申します」

ジョシー「こんにちは、シュラーよ」

セールスレディ「シュラーさん、最後にお化粧なさったのはいつですか?」

【即座にドアを閉めるジョシー。部屋に戻ると、ジーンが話しかけてくる】

ジーン「誰だったんだい?」

ジョシー「エイボン化粧品のセールスレディよ」

ジーン「へえ、今の女性に人気なんだろ。きみもああいうのやってみたらどうだい?」

ジョシー「ああいうのって?」

ジーン「えーと、つまり自分で商売のやり方を考えて、自分自身で稼ぐってことさ。やりがいと自信にもなるじゃないか」

ジョシー「そうね、あなた、悪くない考えだわ。自分自身で働く……素晴らしいアイデアよ」

【微笑むジョシーの顔でEND。なぜジョシーの義母がラインハルトのことを知っていたのか、ラインハルトとステンホルムらの間に何があったのか、そしてジョシーはどうなるのか……などは続刊(予定)で語られるっぽいです】 

Lady Killer

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Lady Killer #7

※『Lady Killer』は殺し屋兼主婦のジョシー(ジョセフィン)を主人公にしたアメリカンコミックスです。周囲に殺し屋の顔を隠しながら、良き妻・良き母として毎日の生活を送るジョシーの姿が描かれます。

【モノクロ画面に映るアニメーション映像。博覧会の解説をしている】

ナレーション「みんな見に来て、シアトル・ワールドフェア! 21世紀へようこそ。科学パビリオンでは火星へのロケット旅行へ行こう! 巨大コロシアムで信じられないほど素晴らしい都市を目にしましょう! 幸せに満ちた人々といっしょに、心踊る冒険の人生を!」

【博覧会の案内をするコンパニオン嬢たちが、その映像を見ている。リーダーらしきコンパニオンが、アルバイトのコンパニオンに言う】

コンパニオン「わかりましたか、皆さん。自分の配置につきましたら、とにかく笑顔を忘れないように。来られているゲストの方々に、世界に1つだけの忘れられない体験を提供しましょう。それから、科学パビリオンでは特に注意を払って、ミスなどしないように。ケネディ大統領のオープニングスピーチがフロリダ中に生中継されますからね」

【バイトのコンパニオン嬢の中に、ジョシーとルビーが混じっている】

ルビー「アーヴィングはもう位置についている。ペックとステンホルムは壇上にいるから、やつらの気を引いて」
※アーヴィングは前回のラストに登場した協力者の男性。

ジョシー「それは難しくないはず。あなたのところに連れて行くわ」

ルビー「気を付けて」

【それぞれの持ち場へと移動するコンパニオンたち。ジョシーは、スピーチがおこなわれているパビリオンの聴衆の中に紛れ込んだ】

スピーチの声「この手のフェアのオープニングは、宇宙時代の博覧と一緒に始まるものですね。文字通り、われわれは新たな海原に手が届いています。まだ見ぬ星にも、1万年前から届いていたラジオ波にも、このフェアの始まりにも」

【スピーチが行われている壇上には、ステンホルムとペックも列席している。その後ろには複数名のボディーガードが並んでいる。ジョシーはわざと壇上のペックに視線を送る】

スピーチの声「そのラジオ波は北の空のカシオペア座から届いています。この光の発している星が、平和で幸福な星であることを望みます……といっても、ここに届くまで1万年かかっているのですが。私は、このラジオ波がこのフェアを成功へと導くと確信しています。このシアトル・ワールドフェアは、さらなる科学的発展への扉を開くでしょう。信号を送るこの電鍵は、非常に重要な意味があるものです」

【ペックは、聴衆に混じるジョシーの姿に気が付き、ステンホルムに耳打ちする】

「今日までに、この電鍵は7代の大統領に使用されてきました。宇宙に信号を送ることが、シアトル・ワールドフェアの開催を成功させるだけでなく、全人類の平和と理解に満ちた新時代への扉を開いてくれるでしょう」

【ペックとボディーガードらが、あわただしく席を立つ。それを見たジョシーも、人込みをかき分けて走り出す】

ジョシー「お祭りの始まりね」

【と、その瞬間、声がかかる。見れば夫のジーンと双子の娘、義母だった】

ジョシー「ジーン!? ここで何を……」

ジーン「驚かそうと思ってね。子供たちに、ママが一生懸命働いているところも見せたかったし」

双子たち「ママ! パパがカートに乗っていいって!」

ジョシー「ああ、素晴らしいわ、あなた。でも……」

ジーン「わかってる、忙しいんだよね。そんなきみを誇らしく思うよ。女性が働くのはいいことさ、気持ちに張りが出る。引き留めてはおけないな。また数時間後にね」

ジョシー「ええ、それじゃ」

【急いでその場と立ち去るジョシー。そのあとを、ペックらが駆け抜ける。一方、ジョシーの義母は、来場客の人込みの中に、初老の男の顔を見つける】

ジーン「おい、危ないぞ!」

義母「まあ! あの男だわ!」

【義母の視線の先にいたのはアーヴィングだった。次回へ続く】 

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Lady Killer #6

※『Lady Killer』は殺し屋兼主婦のジョシー(ジョセフィン)を主人公にしたアメリカンコミックスです。周囲に殺し屋の顔を隠しながら、良き妻・良き母として毎日の生活を送るジョシーの姿が描かれます。

【前回からの続き。エディスへの電話を終えたジョシーに、ジーンが話しかける】

ジーン「帰って来ていたのかい? 車は?」

ジョシー「昨日の晩、言わなかった? カーショップに持っていったのよ。子供たちをバレエ教室に連れていくのに、あなたのトラックを借りたいんだけど」

ジーン「クラッチ入れるとき気を付けてくれよな?」

ジョシー「わかってる」

【双子を連れてジーンの軽トラックに乗るジョシー。そこへジーンが声をかける】

ジーン「ジョシー! ヘイ、ジョシー!」

ジョシー「何?」

ジーン「エディスが『あの車が動き出した』ってさ。何のことだい?」

ジョシー「何でもないのよ。彼女、なんにでも鼻をつっこむから」

ジーン「ああ、オーケー。じゃあ2人とも楽しんできて」

双子たち「行ってきます、パパ」

【トラックを急発進させるジョシー】

ジーン「ああもう、クラッチに気を付けてって言ったのに……」

双子たち「やったー、速い速い!」

【車内では双子たちが騒いでいる。猛スピードで走るジョシーの前に、ペックのスポーツカーが姿を見せた。そのあとをついて行くジョシー】

双子たち「去年のバーベキューのときのパパより速いね! でもこれパパには内緒ね。私たちだけの秘密にしとこう!」

双子たち「ママー、ここどこ?」

ジョシー「アイスクリーム食べたい人?」

【ペックは一軒の中華料理店へ入っていった。ジョシーらも店に入り、ペックに気づかれないよう、近くの席に座る】

中国人のウェイトレス「失礼ですが、ミスター。何か御用ですか? ここではかなり香辛料をきかせた中華料理しか提供していませんが」

ペック「遅れたのは謝るよ、サービス価格はまだ終わってないだろ?」

中国人のウェイトレス「先に連絡してよ。そしたらアンタに嫌味を言わなくて済むんだけど

ペック「おいおい、ルビー。仲良く遊ぼうぜ」

ルビー「もうこれ以上、アンタとは付き合わない」

ペック「俺にもきみにも、他に選択肢はないんだよ。俺はきみの借金を払ってやりたいだけだぞ」

ルビー「アンタ、本当にクソ野郎ね!」

【ルビーと呼ばれたウェイトレスとペックの会話を盗み聞きするジョシー】

双子「ママ、あの人、うんこって言った!」

ジョシー「シーッ! ジェーン、静かに」

中年のウェイトレス「ご注文は?」

ジョシー「アイスクリーム、3つ」

中年のウェイトレス「アイスクリームはないんだよ、すまないね。フォーチュンクッキーならあるんだけど」

ジョシー「いいわ、ならそれ1つとコーラ3つ」

中年のウェイトレス「ふん、アメリカ人か……」

【立ち去り際に愚痴る中年のウェイトレス。ジョシーは子供の前に置かれたお茶の湯呑みをわざとこぼす】

ジョシー「なんてことするの。ごめんなさい、私の娘が…」

双子の1人「私やってないよ!」

【テーブルを拭きに来たのはルビーだった。ジョシーは、テーブルのかげで彼女の脇腹にお箸を突き当て、ささやく】

ジョシー「静かに。あなたのことは知ってるわ。話したいことがある。今夜遅く、コルマン船着き場で待っていて」

【ジョシーはそのまま店を後にする】

ジョシー「行くわよ、2人とも。バレエの時間だわ。クッキーはあとからにしましょう」

【場面転換。真夜中、船着き場にジョシーがやって来る】

ルビー「ここよ。何の用なの?」

ジョシー「ジョシーよ。来てくれてありがとう。昼間はごめんなさい、ただ……」

【ルビーは聞く耳を持たず、いきなりジョシーの腹にひざ蹴りを食らわせる】

ルビー「何をしてほしいのかわからないけど……正体をしゃべってもらうわよ」

【うしろからジョシーを羽交い絞めにするルビー】

ジョシー「グッ! 私もあなたと同じエージェントよ。ステンホルムのもとで働いてきたけど、あいつは私を殺そうとしてる」

ルビー「それがどうしたっていうの?」

ジョシー「あなたがペックと話しているのを聞いたわ。組織から抜けたいんでしょう!? でもやつらはそれを許さない。私を助けなければ、次はあなたの番よ」

【ジョシーはルビーに肘鉄を食らわせ、腕を取って彼女を投げ飛ばす。そのまま彼女の腕を取り、関節を固めた】

ジョシー「あなたを傷つけたくない。決断しなさい」

ルビー「なら、その前に腕を離しさいよ」

ジョシー「いいわ。さあ、どうなの? あいつらを殺るの?」

ルビー「なんでもやってやるわよ。でも2つ、ハッキリさせておく。あなたからの命令は受けない。それとペックを殺すことになったら、あたしが殺すわ」

ジョシー「了解」

ルビー「それと、やつらを殺るなら助けがいるわね」

【場面転換。時間貸しで部屋を提供していると思しきアパート。管理人の老人男性が、苦労しながら階段を上っている。そのうしろにはカップルの男女がいる】

年老いた男「すまんな、お若いの。あちこち悪くなっていてな。どうか手伝ってくれんかね?」

若い男性「べつにいいさ、おやじさん」

【老人の手を取って、階段を上るのを手伝ってやる男性客】

年老いた男性「ありがとうよ。若いころは、2段飛ばしで何の問題もなく階段を上っていたもんだがなあ」

男性客「はいはい。で、そんときゃパン一斤が1ペニーだったんだろ」

女性客「時間がないのよ、ピーター。旦那は6時に帰ってくるんだってば」

男性客「大人しくしてろよ。時間通りには家に戻してやるよ。本当にこの部屋でいいのか、おやじさんよ」

【老人の案内のもと、男女は貸し部屋に入ってきた。しかし老人男性はふところからサイレンサー付きの拳銃を取り出す】

年老いた男性「ああ、間違いなくこの部屋だよ」

男性客「なん……!?」

【ためらうことなく発砲し、男女を殺害する老人男性。そのとき、部屋のトイレのドアがあき、中からルビーとジョシーが姿を現した】

ルビー「ハイ、アーヴィング。ちょっと時間ある?」 

Lady Killer

Lady Killer

 

 

2015年の漫画、映画、ゲームなど振り返り

社長のみなさーん、年末ですよー。年末振り返り企画として、今年の漫画・映画・ゲームなどから特に良かったものをザックリ紹介。 

映画『ジョン・ウィック』 

2015年新作映画は『チャッピー』『キングスマン』などを観ましたが、この作品が一番面白かった。かつ、一番自分の趣味にマッチしてた。殺し屋がキレて全員ぶち殺すという単純明快なストーリーなのに、アクションのカッコよさ、シリアスかつ殺伐とした雰囲気、セリフの応酬のセンス、映像&演出の上手さで、作品全体の満足度を底上げしてる。あとまあ純粋に燃えるよね、引退した凄腕の殺し屋が復讐のために立ち上がって、かつての仲間の協力も得ながら巨大組織と対決するというプロットは。本名ジョン・ウィック、あだ名はブギーマン、またはバーバ・ヤガーってカッコよすぎか。続編も計画中らしいし、期待できる。

映画『マッドマックス 怒りのデスロード』 

いい・悪いの価値観を超える作品がしばしば誕生しますが、2015年は『マッドマックス 怒りのデスロード』がそれでしょうな。最初から最後までハイスピード・ノンストップ・フルスロットルで、映画と言うか「体験」だった(っていうのは誰しも言ってるけど)。『ジョン・ウィック』と同じくらいストーリーはシンプルで、説明・解説も最小限。主役のセリフだって数えるくらいしかないのに、ビックリするくらい面白いっていうんだからワケがわからない。

ただひとつ言えることは、細部にいたるまで作り込みへの情熱度がハンパない。あらゆる小道具やちょっとしたセリフ、キャラの衣装や背景の映像が、マッドマックスの世界とキャラクターたちの心理を雄弁に物語っている。映画でしかできないこと、映画にしかできないことに、制作陣が真正面から本気で取り組んで・しかも成功させたという快作。

漫画『あもくん』(諸星大二郎) 

あもくん (幽COMICS)

あもくん (幽COMICS)

 

みんな大好き諸星先生の現時点での最新作。角川から出てた幽COMICSのまとめ。父親である「私」と息子の「あもくん」、その周囲で起きる異質な出来事を描いた連作短編。ちょっとした違和感からゾッとするようなオチに導いていく諸星テイストは健在。いくつかユーモア風味の作品もありますが、基本的には現実と恐怖のはざまに落ち込んでいくような、足元のおぼつかない雰囲気を味わえます。結構むかしの作品の所収だけど、単行本化は今年初なのでやっぱり外せないよね。 

漫画『ゴールデンカムイ』(野田サトル) 

ゴールデンカムイ 1 (ヤングジャンプコミックス)

ゴールデンカムイ 1 (ヤングジャンプコミックス)

 

ツイッタのフォロワーさんがおススメしているので読んでみたら、近年まれに見る・なんとも形容しがたい異色作だった。舞台は開拓時代の北海道(蝦夷)。退役軍人&アイヌ少女とが、独立国家建設を狙う軍師団や死んでいなかった土方歳三らを相手に金塊争奪戦を繰り広げる、というのがストーリー。……なんだけど、実態は北海道の珍味を食いつくすジビエ料理漫画、かつアイヌ関連のトリビア紹介漫画としての描写のほうがインパクトあって、一種異様な面白さを醸し出している。スケールのデカい物語と、半径5メートルくらいの身近な話題が同居している感じ。

ヒロインの顔は時おり不細工になるし、実在人物をモデルにした奇怪なキャラが何の前触れもなく出てくるのも珍味のような味わいがある。ただ面白いだけではない、謎な作品。ぜひこのテイストを忘れずに突き進んでほしい。

漫画『衛府の七忍』山口貴由 

『エグゾスカル零』を終えた若先生の最新作。天下泰平を推し進める徳川幕府と、その支配に虐げられるさまざまな「まつろわぬものたち」の復讐を描いた、死山血河の怨霊忍法残酷絵巻です。時代考証も現実味も笑って吹き飛ばすようなありえない描写が満載で、外連味のあふれる戦闘シーンと発想の狂った必殺技が満載。羽毛なみに命が軽い世界観で、すぐ殺す・すぐ死ぬ・すぐ内臓が出るんだけど、根っこのところがどこかテンションおかしいいので、とにかく愉快痛快に読めるのが良いですね。『覚悟のススメ』や『蛮勇引力』、『エグゾスカル零』と同じ名前の登場人物も出てくるので、山口貴由ファンであればあるほど楽しめます。

OVAジャスティス・リーグ:ゴッド&モンスター』 

ジャスティス・リーグ:ゴッド&モンスター [Blu-ray]

ジャスティス・リーグ:ゴッド&モンスター [Blu-ray]

 

ブルース・ティム先生のプロデュースによるジャスティス・リーグOVA。リブートというか、ほとんどエルスワールドもので、スーパーマンはゾッド将軍の息子、バットマンはカーク・ラングストロム博士(マンバット)、ワンダーウーマンはオリオンの恋人ベッカという改変っぷりが見どころの一作です。正史とは全然違っててかなりバイオレンスだし人もガンガン死ぬ(そのシーンもがっつり描写する)。っていうか、この3人だって悪人とあれば命を奪うこともためらわない。

そんな3人が直面するのは、高名な科学者たちの連続殺人事件。武力だけでは太刀打ちできない強大な敵と陰謀、そして自分自身の苦悩に直面した我らがビッグスリーは、果たしてこの危機をどう乗り越えるのか……? 作画は相変わらずの高クオリティーだし、ブルース・ティム絵の素晴らしさも健在なので、人を殺すヒーローに抵抗がない人は必見。本編とは関係ないけど、解説映像でブルース・ティムが「NEW52は期待したほどユニバースに変化をもたらさなかった」みたいなこと言ってて笑った。

ゲーム『ウィッチャー3 ワイルドハント』 

ポーランド発、CD Projekt RED謹製のアクションRPG。自分はPS4版でやりました。ウィッチャーシリーズ今までやったことなかったんだけど、トレーラー見て「ええやん!」と思ったのね。で、買ってやってみたらこれがエライ面白くてびっくりした。主人公は特殊な能力を持つモンスターハンターのゲラルト。行方不明の恋人イェネファーと養女のシリを追ううち、世界の存続を脅かす強大な敵と対峙するはめに……というのがおおまかな物語です。

とにかくストーリーと世界観、キャラクターが見事にマッチしていて、どっぷり浸かれます。シリーズ初心者でもゼロから楽しめるよう、ところどころで重要なキーワードは説明してくれる(質問できる)のがよかったんだと思う。ゲラルトはいわゆる「しゃべる主人公」なんだけど、こういうユーザーフレンドリーさがあったので、しっかり感情移入できた。『ラスト・オブ・アス』以来といってもいい。小道具の作り込み、軽妙かつユーモアあふれるセリフの応酬、ハッピーエンドや単なるお使いに終始しないサブクエストの数々など、本当の意味で何度も楽しめる一作。

戦闘がやや単調なのと、インベントリ周りのUIの煩雑さがちょっとだけマイナスだけど、全体の完成度は非常に高いです。最後のDLC『血塗られた美酒』が2016年に発売予定なのでこちらも期待。あとスパイクチュンソフトによる日本語版ローカライズのクオリティーにも拍手。ほとんど洋ゲーと意識せずに楽しめます。ゼニマックスアジアも見習えよな。

ゲーム『FallOut 4』 

で、今年最後に買ったゲーム。『FallOut 3』からは8年、『FallOut: New Vegas』から5年を経て登場したシリーズ最新作です。核戦争後のボストンを舞台に、200年の冷凍睡眠から目覚めた主人公が、奪われた息子を探して放浪しまくるオープンワールドRPG。もちろんシリーズの特徴といえる自由度は変わらずで、メインストーリーを追うもよし、各地のロケーションで強力な武器を探しまくるのもよし、サブクエストしながら仲間とのロマンスを育むのもよしです。

おまけに今回はこれまで単なる無駄アイテムだったJUNK品を使って、武器改造と拠点開発までできる。拠点開発の自由度がかなり高くて、巨大アパートの建築、ライトボックスを使った看板設置、販売店や医療スペースの設置、自動タレットやトラップを使ったモンスター対策設備設置までできる。もちろんやらなくてもいいんだけど、荒廃したボストンを少しでも復興できるとなれば、やってしまうんだよなあ。主人公にフルボイスがついたことで完全なロールプレイはやりにくくなったけど、その分、演出やコンパニオンキャラとのやり取りが濃密になったのは前向きに評価したい。

あと、プレイしてすごく思うのが「もはや戦後ではない」ってこと。FallOut 3やNVでは、まだ核戦争の爪痕が色濃く残っていたけど、今作には「過去を振り返るのはやめて、いま・この世界で生きていこう」という雰囲気がそこかしこに感じられる。過去作では見られなかった青い空と、拠点開発というプレイングが、まさにその象徴じゃないかしら。バグや日本語版ローカライズの微妙さなどでマイナス点もあるし、不親切な面も見え隠れするけど、それを吹き飛ばすほどの魅力があるのは間違いない。あれこれDLCも出るだろうし、2016年の半年は遊べそう。

 

と、いう感じの1年間でした。今年も楽しい漫画、映画、ゲームをありがとうございました。制作者さんたちに感謝&ラヴ。来年も面白いものに出会えますように。それでは皆さま、よいお年を。

Lady Killer #5

※『Lady Killer』は殺し屋兼主婦のジョシー(ジョセフィン)を主人公にしたアメリカンコミックスです。周囲に殺し屋の顔を隠しながら、良き妻・良き母として毎日の生活を送るジョシーの姿が描かれます。

【前回からの続き。車の外には、銃を突きつけるペックが立っている】

ペック「逃げる気か、ジョシー。わかってるだろ?」

ジョシー「わかってる?」

ペック「ああ。だが話をつけることもできる。あそこへ戻ってあのガキを殺せ。俺の言うとおりにすりゃうまくいく」

ジョシー「そうかもね。それか、あんたの銃を奪ってその頭を撃つか」

ペック「そりゃ無理だな。お前は銃の威力を知ってる。だからこうなってるんだろ」

ジョシー「ステンホルムのところに戻って泣きつくんだね。イカレ野郎!」

【ジョシーは座席に座ったままの体勢でペックのあごを蹴り上げる。そのままペックに背を向け、車のダッシュボードに手を伸ばしてナイフを取ろうとするが】

ペック「こんなことしたくなかったぜ。まあ今はもう楽しんでるよ!」

【ペックの撃った銃弾は、ジョシーのハイヒールをかすめる。驚いて動きを止めるジョシー。ペックは車に乗り込み、再びジョシーに銃を向ける】

ペック「いいアイデアだ。車の中で殺すほうが都合がいい。恋人同士の痴話ゲンカに見えるだろうな。若い女のほうがちょっかいを出しちまって、どうにもならない状況に陥ったわけだ」

【と、そのときペックの後頭部にショットガンが付きつけられる】

通りがかりの老人「銃を下ろして、車から出るんじゃ!」

ペック「落ち着けよ、おっさん。過剰反応するな」

【両手を挙げるペック。その手からジョシーが銃を奪い取る】

老人「大丈夫かね、お嬢さん」

ジョシー「そんな変人、知らないわ。私のあとをつけてきたと思ったら、いきなり襲ってきたのよ!」

【ジョシーはそう言いながらペックのスポーツカーに乗りこむ】

老人「どこへ……?」

ジョシー「そいつを押さえておいて。警察を呼んでくるわ!」

老人「ちょっと待ってくれ。わしはそんなつもりじゃ……」

ペック「待てジョシー、俺の車だぞ! クソッタレ!」

【そのまま走り去るジョシー。老人はあっけに取られてそれを見送る。その隙に老人のショットガンを奪い取るペック】

老人「あんたらイカれてるのか、わしは……」

【老人の言葉を聞きもせず、ペックは彼の頭を撃ち抜いた】

ペック「俺の車を持っていきやがって!」

【場面転換。ジョシーは、どこぞのマンションの前にペックのスポーツカーを駐車させる。車内にあった自身に関するファイルを手にして自宅へ戻り、電話をかける】

電話を取った中年女性「はい、サンプソン・レジデンスです」

ジョシー「エディス? 坂の下の1205番地に住んでるジョシー・シュラーだけど」

エディス「あら、こんにちはジョシー。どうしたの、急に?」

ジョシー「正しい人に電話していると願うわ。あなたが周囲に目を光らせているおかげで、近所のみんなが安心しているのよ」

エディス「まあまあ、何か見たのかしら?」

ジョシー「実は、イエスよ。怪しい車が学校の遊び場の前に停まってるの。あなたの家の窓から見えるはずよ」

エディス「見えるわ! 小さなスポーツカーね? 変質者か何かかしら。遅かれ早かれ、何か起きそうね。ここじゃ誰も望んでないことばかり……」

【どうやらジョシーは、このエディスのマンションの前にペックの車を停めたようだ】

ジョシー「結論を急がないで。あなたのこと信頼してるわ。だから何かよくないことが起きないように見張っててくれると思うけど……」

エディス「そりゃ絶対にね! 私に電話したのは正解よ。いつだったか、子どもたちがマリファナ吸ってるのを見かけたって話はしたかしら……」

【そこまで話をすると、ジョシーは電話を切る】

エディス「ふーむ」

【怪訝な顔で電話を見るエディス。次回へ続く】 

Lady Killer

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Lady Killer #4

※『Lady Killer』は殺し屋兼主婦のジョシー(ジョセフィン)を主人公にしたアメリカンコミックスです。周囲に殺し屋の顔を隠しながら、良き妻・良き母として毎日の生活を送るジョシーの姿が描かれます。

【前回からの続き。ステンホルムが、ジョシーの今後の処遇についてペックに話している】

ステンホルム「ジョシーのように、市井の人間として長く生活してきたエージェントは、結局のところトラブルの元になる」

【ステンホルムが調べたというジョシーのファイルには、彼女の過去の写真が貼られている。それを見る限り、ジョシーは幼少期から殺しの仕事をしていたようだ】

ペック「彼女が厄介者になると心配しているんですか? 彼女に限ってそれはないですよ。ジョシーは私が抱える最高の女性エージェントのひとりです。その忠誠心には疑いがない。それに、言うまでもなく私のコントロール下にあります」

ステンホルム「それは疑っておらん。だがリスクはリスクだ。彼女が現在の任務を終えたら、存在を消さねばならん……私はそう考えている。それこそが話し合いたいことだ。彼女を片付ける責任は、きみにあるようだがな」

ペック「お言葉を返すようですが、私にはどうしようもありませんよ。それより、彼女をクビにしてキッチンへ送り返せばいいじゃないですか。子育て主婦をさせればいい」

ステンホルム「あんなタイプの女に育てられるより、孤児になったほうがましだろうが」

ペック「あんなタイプって、どんなタイプですか、ボス?」

ステンホルム「一時の感情に惑わされるなよ、ペック。この仕事は人を変えてしまうんだ。結婚して子持ちになるような女性は、結局この仕事では不利なんだよ」

ペック「……では、もうすでに決まったことなんですね」

ステンホルム「まったくその通りだ。もしきみには荷が重いというのなら、すぐに別の人材をきみのポジションに置くこともできるがな。デイビッドなんかどうだ?」

ペック「……わかりました」

【伏し目がちに承諾するペック】

ステンホルム「この件に関して、これ以上の話し合いは無用だ」

【ファイルを持って退室するペックだったが、ステンホルムの女性秘書を見るなり、笑顔になって声をかける】

ペック「お待たせ」

【場面転換。ジョシーはステンホルムから与えられた仕事に取り掛かっていた。暗殺対象の、少年の家を訪れている】

少年「はい、どなた?」

ジョシー「こんにちは。私はサラ。先日、忘れ物しちゃったのよ。中に入ってもいいかしら?」

少年「えーっと、うん。いいよ」

【家の中に入りこむジョシー】

ジョシー「お鍋を取りに来たのよ、料理するのに必要なの。あなたのお母さん、いつでも取りに来ていいって言うから」

少年「ママがそう言ったの?」

ジョシー「そうよ」

少年「いつ?」

ジョシー「昨日よ、電話でね。他に聞きたいことは?」

少年「あんたがママと話したはずないよ」

ジョシー「話したわよ。こんなことでうそはつかないわ」

少年「あんたはうそつきだ。ママと話したことがあるわけない。ママは死んだんだもの。ママもパパも、ある男に殺されたんだ。おじさんが『お前も危ない』って言ってた。あんたは僕を殺しに来たんだ。そうだろ?」

【後ろ手に包丁を隠し持つジョシー。一瞬見つめ合ったのち、少年は2階へと駆け上がる。ジョシーもそれを追う。少年は自室へと駆け込み、ベッドの下に潜り込んだ。ジョシーも少年の部屋に入るが、壁に立てかけられた家族写真を手に取り、そこに写された少年とその両親の姿を見つめる】

ジョシー「あの子はもうここにはいない。逃げられた。たぶん安全な隣の家に駆けこんでしまっただろう。少なくとも、私ならそうする。

【ベッドの下で、ジョシーの独り言を聞く少年】

ジョシー「おじさんが帰ってくるまでそこに隠れていて、帰ってきたら襲われたことを話そう。だっておじさんは警察官だから。おじさんならどこか安全な場所を見つけてくれるだろう。誰も僕を傷つけない、あんぜんな場所で暮らそう」

【ジョシーは包丁を棚に置いて、部屋から出て行く】

ジョシー「ママとパパのこと、ごめんなさいね。それじゃ」

【少年の家から出て、車に戻ったジョシー】

ジョシー「クソッ!」

【涙に目を浮かべ、ハンドルを強く叩く。そのとき、ペックの車が背後に停まった。ジョシーは車を急発進させる。ペックもそれを見て、ジョシーのあとを追う。しばしのカーチェイスののち、ペックの車に接触されて、ジョシーの車はスピンして止まった】

ペック「どこへ行くんだ?」

【スピンした際に頭部をぶつけたジョシー。顔を上げると、そこには拳銃を突きつけるペックが立っていた。次回へ続く】 

Lady Killer

Lady Killer

 

 

Lady Killer #3

※『Lady Killer』は殺し屋兼主婦のジョシー(ジョセフィン)を主人公にしたアメリカンコミックスです。周囲に殺し屋の顔を隠しながら、良き妻・良き母として毎日の生活を送るジョシーの姿が描かれます。

【自宅の地下にあるダンス室で、ジーンの誕生パーティーがおこなわれている。近所の若い夫婦たちがあつまり、思い思いに飲み、談笑している】

パーティー客たち「昔とは違うんだよ、ボブ……」「彼ったら貧乏で……」「酔ってないわよ、そっちがおかしいんじゃない?」「マティーニは誰が飲むんだ?」「この世で公平なのは現金だけだよ」「どこ触ってるのよ、奥さんが見てるわよ!」

【ジョシーは招待客たちの世話をしている】

パーティー客たち「誕生日おめでとう、ジーン」「ダサいって言ってるわけじゃないわよ。ただその黄色のドレス、似合ってないんじゃない?」「楽しいパーティーだな、ジョシー。このアンブロシアも最高だ」「レシピ、教えてあげるわよ」

ジョシー「大丈夫? ほら、もうやめておいたほうがいいわ」

【飲み過ぎで悪そうな女性から、酒を取り上げようとするジョシー】

女友達「ジーンが、もっとチェリーを持ってきてって。マンハッタンを作るって」

ジョシー「分かったわ。ルースを見ててくれる?」

【ジョシーは、酔っぱらった女性を他の人に任せ、上の階へと向かう。その途中、世h貸ししている双子に声をかける】

ジョシー「子どもは、もう寝る時間よ。言うこと聞きなさい」

子どもたち「おやすみなさい、ママ」

ジョシー「おやすみ。いい夢を見るのよ」

【明かりをつけてキッチンに入ると、中にはジーンの母がいた】

ジョシー「お義母さん、驚かせないでください。起こしてしまいました? 音楽がうるさすぎますか? 音を小さくするようジーンに言っておきますから」

義母「あんたのせいで眠れなかったね。あんたが言うような理由じゃないけど」

ジョシー「そうですか?」

義母「昨日はずいぶん長い間、外出してたじゃないか、私に子どもを押し付けて。何をしてたか知ってるんだよ!」

ジョシー「何をおっしゃりたいのか、わかりませんわ」

義母「あんたはホスピスで働いてるんじゃない。あの男と一緒にいたんだろ。いつもあの男の車が近くを走ってる。私が何も知らないと思ってるだろうけど、いつかジーンに自分がどんな女と結婚したから、分からせるよ」

【ドイツ語を交えながらジョシーに詰め寄る義母】

ジョシー「何かの間違いですよ、お義母さん。男なんていません。勘違いしているのでは。起こしてしまったことは謝ります。疲れて感情的になってるんでしょう、お休みになったほうがいいです。パーティーは静かにさせますわ」

【そこへ、先ほどの女友達がやって来る】

女友達「ジョシー? ルースが気分悪そう。コーヒーもらえないかしら」

ジョシー「ええ、いいわよ。チェリーを取ったらすぐ行くわ。おやすみなさい、お義母さん」

【チェリーの瓶詰めをつかんで出て行くジョシー。場面転換。ステンホルムのオフィスの前で、ペックが秘書らしき女性をナンパしている】

ペック「ドリス・デイに似てるって言われたことない? 似てるよ! きみのほうが彼女よりかわいくて、もうちょっと小悪魔っぽいけど」
ドリス・デイは1940年代~50年代に活躍した女優。

【と、そのとき背後からステンホルムがやってくる】

ステンホルム「ミーティングの予定だったと思うが、ペックくん?」

ペック「そうだった」

【ステンホルムは、ペックを自分のオフィスへ招き入れる】

ステンホルム「今度来るときは、スタッフにちょっかい出すのをひかえてもらえるとありがたいんだがな」

ペック「彼女のほうから色目を使ってきたんですよ。そのことを話し合うために呼び出したわけじゃないでしょう」

【ステンホルムの机にあるリンゴを勝手に食べようとするペック。ステンホルムはリンゴを取り上げ、代わりにファイルを渡す】

ステンホルム「知っての通り、私はミス・シュラーに関する直近の問題を調べた、個人的にな」

ペック「別段、驚くことでもないですね」

【キティ・キャット・クラブでの様子を撮影した写真を見ながら、ペックは応える】

ステンホルム「言葉に気を付けろよ、ペック。彼女の将来のポテンシャルをどう評価するか、これは慎重さが求められるんだ。結果として、私は心配している。ジョシーのような女は、将来的には我々にとって危険な存在なのだ」 

Lady Killer

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